プロメテウスの政治経済コラム

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安倍首相辞任と財界戦略   問われる民主党の出方

2007-09-18 19:22:33 | 政治経済

日本では、保守二大政党制が完全に確立しているわけではない。日本共産党の不破哲三前議長は、党創立85周年記念講演会で「二大政党」作戦にも歴史があるとして、支配階級と国民との矛盾の深まりにとともに、民主党の出方・役割も違っていることを解明した(「しんぶん赤旗」8月12日)。
93年の「非自民」対決のときには
、総選挙直前に、小沢一郎氏が率いる一派──後に「新生党」と名乗る──が自民党をぬけだし、日本共産党以外の野党と「非自民」連合を組んで、国民に「自民か非自民か」の選択を迫った。このとき、「非自民」の押し出しは、「自民党政治の枠内での政権交代だからご安心ください」、「担い手さえ代われば政治は変わります」ということで、政策に違いがないということを平気で打ち出すという段階であった。
次が4年前、「自民党をぶっこわす」といった小泉政権の誕生から二年半たって、多くの国民の目にもその中身の正体がわかり始めたとき、自分たちの声を聞くもうひとつの保守政党をどうしてもつくる必要があるという財界の危機感を反映して2003年の「二大政党」押し出し選挙となった。総選挙直前に民主党と自由党が合併して、新しい民主党がにわかに生まれ、財界団体がスポンサーになって、自民党か民主党かの対決を「政権選択選挙」として押し出すというキャンペーンが大々的におこなわれた。このときは、さすがに93年のときのように「自民党政治を継承する」とは言えなかった。ただ、対決の内容については、自民党も民主党も、「消費税増税」「憲法改定」を共通の政治目標としてはっきり打ち出し、この二つの仕事をやるのにどちらが実行力があるかを争う、こういう内容の「二大政党」づくりの段階に移った。
そして、今回のいわば「首相選択」選挙である
。支配階級と国民との矛盾の深まりによって、自民党政治の基盤の衰退傾向がいよいよ明りょうになるもとで、民主党の側でも、四年前のように同じ政策目標を掲げて実行力を競い合うというやり方は通用しなくなって、対決型の選挙戦に出た。これは、自民党政治と国民のあいだの亀裂や矛盾が、それだけ深くなったことの表れである。民主党はこうして、自民・公明政権への国民の批判の大きな受け皿になることには成功したが、政策的な対抗軸は最後まで示せないままであった。

参院選で、民主党は、「反自公」を掲げたが、自公政治に代わる政治の中身を打ち出せたわけではない。大企業中心主義、「日米同盟」絶対論、歴史をゆがめる逆流を党内に抱え込んでいるなどの問題点を自民党と共有したままである。民主党の政治路線が財界の要求に応えるかたちで、自民党に引きずり込まれるのか、より国民世論を反映し、共産党と歩調を合わせたものとなるかは、国民の運動の高まりと監視次第で、今後大きく変わる可能性がある。財界側は、すでに民主党の政策を聞くための御手洗会長と小沢代表との意見交換会の開催へ動いているとの情報もある。経団連が企業献金の指標にするため毎年秋口に発表している自民と民主に対する政策評価の作業も進んでいる財界の立場は「経済界がもとめる政策の実現には、自民・民主両党に政策を競わせ、その評価に応じて政治献金を配分する方が、自民党単独支配の政権よりも効果的」ということだ。

民主党は、「反自公」を掲げた「対決戦術」と、その基本路線との矛盾が、今後、国民的に問われ、試されることになるであろう。


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