プロメテウスの政治経済コラム

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改憲促進へ税金6億円  改憲反対の国民運動を緩めることはできない

2007-09-23 18:48:02 | 政治経済

参院選での与党の歴史的敗北の根本には自公政治の基本路線の破たんがある。「構造改革」によって切り捨てられた地方の農業・地場産業層や都市貧困層が安倍・自公政権にノーを突きつけた。さらに、教育基本法改悪、改憲手続き法強行に現れた安倍政権の改憲・タカ派路線に対する国民の警戒心が表明されたこの大敗で、明文改憲のスケジュールに大きな狂いが生じたことは、間違いない。衆参の三分の二の賛成を得るためには、民主党の協力が不可欠である。ところが、今回民主党は、改憲問題では逃げたが、テロ対策特別措置法の延長反対、イラクの自衛隊撤兵など反軍事大国の路線を打ち出して躍進した共同通信の調査によると、今回当選した民主党議員の68・5%が九条改憲に反対である。選挙の雰囲気を象徴する数字であり、先の通常国会で安倍政権が改憲手続き法の採決を強行したことも考えれば、民主党としても、おいそれと明文改憲の協議に乗れない状況である。憲法審査会の設置についても、いまだに審査会の人数も決まっていない(渡辺 治「自民大敗で変化する改憲をめぐる情勢」「しんぶん赤旗」9月11日)。

しかし、改憲派は決してあきらめていない。総務省は、来年度予算案に新規項目として「国民投票制度の周知及び執行体制の確立に必要な経費」六億三千万円を要求した。内訳は、新聞全面広告に四億円(全国紙五紙、ブロック紙三紙、地方紙四十二紙の計五十紙に三回にわたって掲載する)、雑誌広告に七千万円、インターネットホームページ作成・運営五千万円などである。改憲手続き法は自民・公明の与党が、憲法九条改悪を狙って強行成立させたものだが、国民投票法部分の施行は三年後。同法成立(5月)に際しては、参院憲法調査特別委員会で「18項目」にものぼる付帯決議がつけられ、(1)投票年齢を18歳以上とするための法令整備(2)最低投票率の是非の検討(3)在外投票の保障問題(4)公務員・教員の地位利用にかんする基準の検討(5)有料広告規制の検討など、法案の根幹にかかわる問題が検討課題に残ったままである。これらの問題の検討も始まらないうちに、巨額な費用を使って法律の広報活動ばかりを先行させるやり方を私たちは許すわけにはいかない(「しんぶん赤旗」9月23日)。

この秋、アメリカ追随の自衛隊の海外派兵、後方支援が大きな争点になることは、間違いない。今回の参院選でテロ特措法の延長、自衛隊のイラク派兵、米軍再編特措法に反対した民主党は、国連の給油活動に対す「謝意」決議があっても今のところ、あくまでテロ特措法の延長に反対だとしている。これにたいし、自民党は新法を衆院で再議決してでも自衛隊の海外派兵、後方支援を継続する構えである。テロ特措法の延長問題は、日本のこれ以上の軍事大国化に歯止めをかけ、改憲策動を後退させる第一歩となるかどうかにかかわるだけに、財界、アメリカも必死で民主党に圧力をかけることが予想される。新法が国会の審議なしにどんどん自衛隊を海外に派兵できる恒久派兵法的なものとなり、民主党が論議に引きずり込まれる可能性もないとはいえない。
この秋は民主党にとって正念場である。財界、アメリカの圧力に屈して第二保守党としての「自覚」に立ち戻るか、国民の側をむき続けるかどうかの正念場である。それを決めるのは、国民の声がどれだけ民主党を監視し、制約するかである。そういう意味でこの秋のテロ特措法延長に反対し、インド洋、イラクから自衛隊を撤兵させる、改憲と軍事大国化に反対する国民運動もまた正念場を迎える(渡辺 治 同上)。


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