プロメテウスの政治経済コラム

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6カ国協議開幕  簡単でない「無能力化」と「完全な申告」

2007-09-28 18:01:28 | 政治経済
北朝鮮は7月に寧辺の五千キロワット黒鉛減速炉など核施設の稼働を停止し、2月13日の合意のうち「初期段階」措置を実行した。寧辺の各施設の稼動停止と封印は、1994年の米朝合意で一度実施された「実績」がある。しかし、「核施設の無能力化」と「完全な申告」は初の試みである。米国はこの見返りとして、北朝鮮に対するテロ支援国の指定を解除し、対敵通商法の適用終了、平和条約の協議を開始することを表明している。さらにブッシュ任期中の2008年に北朝鮮の核兵器と核開発計画の完全な放棄を実現させ、米朝国交正常化を実現するとの構想を明らかにしている(「しんぶん赤旗」同上)。

米首席代表のヒル国務次官補は27日の協議後、核放棄プロセスの「次の段階」措置履行に向け、北朝鮮の核施設の無能力化と核計画の申告の年内履行で北朝鮮を含む各国が合意したと明らかにした上で、28日から共同文書の作成に着手するとの見通しを示した。記者団の質問に答えたヒル次官補は「無能力化の手順のほとんどについて(各国が)合意した」と強調。協議2日目の28日は、午前中に今月訪朝した米中ロの核専門家による視察結果の報告を受けた後、「核施設の無能力化と核計画の申告に関して具体的な議論に入る」と述べた。ただ、無能力化の技術的定義に関して、北朝鮮は「短期間で再稼働できる状態」と主張。「数年間は稼働できない状態」とする各国とは大きく食い違っている。さらに、北朝鮮がテロ支援国指定解除や軽水炉の提供など見返り措置を求めてくるのは確実で、調整は難航も予想される(「西日本新聞」09月28日00時12分)。

核施設無能力化に向けた技術的問題については、9月中旬に米中ロ三カ国の核専門家チームが訪朝し、「無能力化する方法で共通認識に達した」と発表されているただ、「無能力化」によって核施設の重要な部品―たとえば制御棒が取り外された場合、それを北朝鮮国内に保管するのか、国外に搬出するのか、結果は大いに異なる。「完全な申告」についても、抽出したプルトニュウムの量やウラン濃縮計画の有無をどのように確認するかなどの難題がある(「しんぶん赤旗」同上)。
米首席代表のヒル国務次官補が、核施設の無能力化について、しきりに年内の履行を言っているということは、逆に米国は年内に実行可能な程度の「無能力化」でよいと認めていると勘ぐることもできる。となると「無能力化よりも大事なのは申告」(韓国代表団)ということにもなる。まずは、年末までのロードマップを示した合意文書が出るかどうかが焦点である。

北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の中に設けられた五つの作業部会の進捗度合いを見ると、米朝作業部会が全体の進展を引っ張っている感がある。日本は拉致問題の解決前に、米国がテロ支援国家指定から北朝鮮をはずすことに反対している。核問題の解決を中心課題とする6カ国協議の枠組みのなかで、拉致問題は第一義的には日朝関係二国間の問題に違いない。他の参加国からは「日本だけが自らの主張にこだわることは難しくなる」との声も出ている。拉致問題の解決は最重要な問題に違いないが、6カ国協議全体の進捗のなかで、どのように位置づけていくか高度の戦術判断が必要だ。他の参加国が、北朝鮮への重油(エネルギー)支援を次々と表明するなかで、何時まで日本は知らん顔を続けるのか。「孤立化」した挙句の果てに「妥協」だけを迫られるというような失態は避けたいものだ。

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