プロメテウスの政治経済コラム

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自民党福田新総裁  個性の違いはあっても路線転換は不可能  解散・総選挙を!

2007-09-24 19:20:47 | 政治経済
今回辞任することになった安倍氏が、麻生氏や谷垣氏を破って自民党の新総裁に選ばれたのは、一年前の9月20日であった。安倍氏が小泉前政権から引き継いだ「構造改革」路線とは、多国籍大企業の利潤率を引き上げるために国家権力を使って日本の高コスト体質を強制的に破壊し、企業の負担を軽減し、蓄積条件の改善を強行するものであった。こうして、搾取強化のための労働法制の規制緩和、市場原理の徹底による調達コストの引き下げ、減税・補助金による国家財政の収奪強化が行われ、儲けの分配に与れる株主、経営管理者、一部の上層サラリーマンは潤ったが、一般国民には福祉の切り捨てと高負担の押し付け、貧困と格差の拡大をもたらした。多国籍大企業の主要株主は、国際金融資本であり、彼らの関心は、高利潤・高株価・高配当だけである。その国の国民の生活・運命にはまったく関心をもたない。「(構造改革で)日本経済が成長路線を歩めるようになった」(麻生太郎幹事長、15日)というように小泉・安倍流「構造改革」によって日本の多国籍大企業は収益力を飛躍的に回復した。トヨタ自動車の営業利益が二兆円を突破するなど資本金十億円以上の大企業はバブル期を超える空前の大もうけをあげている。その一方での国民の側における貧困と格差の蓄積である。大企業の国家財政の収奪を支えるために、自公連立政権の八年間は毎年のように庶民増税が繰り返され、その総額は五・四兆円に上る。他方で大企業・大資産家には毎年のように減税し、四・三兆円にも積み上がっている。庶民増税の八割が大企業・大資産家に回った計算である。税と社会保障の相次ぐ改悪は、貧困と格差是正にはほとんど機能しない。厚生労働省が発表した05年の所得再分配調査では所得格差が過去最大を更新した(「しんぶん赤旗」9月23日)。

冷戦後、唯一の超大国となったアメリカは、世界に自己の都合のよい秩序を強制するために、現在世界各地の米軍再編を進めている。「米軍再編」はアメリカ軍と同盟国軍隊との共同作戦態勢の再編という「同盟再編」と表裏一体となっている。日本の支配層は、この「同盟再編」に乗りながら「軍事大国化」を進め、アメリカを盟主とする「現代帝国主義同盟」のなかでしかるべき発言力を確保しようと狙っている。日本軍を米軍の戦争のために手足として使いたいというのは、もともと自衛隊創設以来のアメリカの年来の欲求である。そして、米日共同作戦の領域を日米安保条約の日本の施政権下の領域から極東、周辺事態、いまやインド洋、イラクまで拡大してきた。しかし、憲法9条が存在する限り、米日共同作戦にはどうしても超えられない限界がある。日本軍は集団的自衛権発動による戦闘への共同参加ができないからである日本の支配層は、このことを肩身が狭い、不自由なことだと思い、米国はまことに歯がゆい、腹立たしいことだと思っている。安倍のような過去の侵略戦争を肯定する「靖国」派でなくても、軍事大国化派にとって、憲法9条の改正が、いまや避けて通れない課題となっている所以である。

自民党が先の参院選で大敗し、居座りを図った安倍氏もついに辞任しなければならなくなった根本には、年金や「政治とカネ」の問題での政治不信にとどまらず、弱肉強食の「構造改革」路線や改憲タカ派路線と国民との矛盾が広がっていることがある。しかし、財界、アメリカという支配層の政治的代理人である福田政権が、この路線を転換することは不可能である貧困と格差で多少の手直しがあり、タカ派色が若干薄まることがあっても、国民が求める政治の転換がありえないことは確かである。主権者・国民の手で解散・総選挙を勝ち取り、新しい政治を切り開いていくほかない。それが、階級闘争の弁証法であり、歴史の進歩なのだ。

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