プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

緊迫度増すミャンマー情勢  軍政への批判は当然だがブッシュ流介入にも警戒

2007-09-27 18:44:42 | 政治経済
ミャンマーの僧侶を中心とした反軍事政権デモは日増しに規模が拡大し、26日には軍政治安部隊が僧侶や市民、学生などのデモ参加者に対する武力弾圧に乗り出し、ついに僧侶が死亡という事態になった。非暴力のデモに武力弾圧を加えた軍政への内外からの批判が強まることは当然である。
デモの発端は、8月15日にガソリンなど燃料費が大幅に値上げされ、国民生活を圧迫したこと。燃料費値上げにともなって物価も上昇し、先月19日から値上げに抗議するデモが頻発。自宅軟禁中の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが率いる国民民主連盟(NLD)メンバーの拘束も相次いだ。5日には中部パコックで燃料費値上げに抗議する僧侶のデモに兵士が威嚇発砲し、拘束の際に僧侶に暴行、負傷させる事件が発生。僧侶たちは同事件に憤慨、軍政に謝罪を要求し、謝罪期限が過ぎた18日から数千人規模のデモを各地で開始した。デモは各都市に広がり、学生や一般市民を巻き込んで24日、25日には最大都市ヤンゴンで十万人規模にまで膨れ上がった。デモの要求は、当初の謝罪要求、燃料費値下げだけでなく、「スー・チーさん解放」「民主化を」が加わり、軍政打倒の声もあがっているという(「しんぶん赤旗」9月27日)。

ミャンマーでは1988年に学生デモと民主化運動が高まり、大規模なゼネストが発生。これに対し国軍が同年9月にクーデターで全権を掌握し、抗議デモの学生、市民に発砲して推定千人以上を射殺した。軍政は総選挙実施・民政移管を公約したが、90年5月の総選挙でNLDが80%以上の議席を得て圧勝すると、「新憲法制定が政権移譲の前提」として選挙結果の受け入れを拒否し、今日に至っている。軍政は選挙前の89年から断続的にNLD書記長のスー・チーさんを自宅軟禁し、現在も2003年5月以来の軟禁が続いる。スー・チーさんの軟禁と身柄拘束は通算11年を超えている。ミャンマーの国民は、軍政が総選挙結果を拒否し、民政移管の約束をほごにしていることに強い不満をもっていた。そこに経済の遅滞や生活環境の悪化、市民、活動家の相次ぐ逮捕・弾圧などで軍政への不満がさらに高まったのだ(「しんぶん赤旗」同上)。
ミャンマーでは、仏教は国民の精神的支えである。俗世に関与しない僧侶が立ち上がったのは、そこまで市民生活が追いつめられているからだろう(「朝日」9月27日)。NLDは26日、「軍政は僧侶をたたくという歴史上取り返しのつかない不法行為を行った」との声明を出した(「しんぶん赤旗」同上)。


26日の国連安保理緊急会合では、米欧を中心としたミャンマー軍政への批判の高まりを受けて、ミャンマーと政治、経済的に関係が深い中国を含め、安保理として状況を憂慮、国際社会が一致して軍政に自制を促す形となった。しかし、今回の声明は、中国などの主張を受け入れて表現を弱め、最も軽い位置付けとされる「報道陣向け声明」よりもさらに下に位置付けられた(「中日新聞」年9月27日 11時24分)。
世界では、人権状況などを理由に一部の国を名指しで非難するブッシュ大統領の単独行動主義への警戒・反発は強い。にもかかわらず、ブッシュ大統領は25日の国連総会の演説で国連の任務は「専制政治と暴力から人々を解放」することだと述べ、現在も「独裁者のもとで苦しんでいる人々のために、文明諸国は立ち上がる責任がある」などと主張した。ブッシュ流「自由の伝道師」による「自由と民主主義」の押し付けでは、国際社会をまとめることも、説得することもできないということだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。