京料理 道楽のブログ

道楽の新着情報や、日常のちょっとした一言を書き込んでいきます。

【水無月の茶事・後】

2016-06-05 | Weblog
懐石に続いて、初炭。

灰は遠山に作り、香木は上質な白檀。炭斗は唐物、灰器は了全、火箸は浄益、羽箒は梟、鐶は釜と合わせ踊り桐の象篏、香合は時代の彫漆 芭蕉に蛙の意匠で、堆朱・堆黒・堆黄・堆緑などが用いられてます。

主菓子は、飛来一閑の縁高に、道楽謹製の「苔錆」という鶯粉をまぶした黒糖餅です。

御菓子をお召し上がりなったら、お腰掛けに中立していただき、席中を改めていきます。

掛物を巻き上げて、花を入れます。竹板をUの字に曲げた時代掛花に、白・青・赤紫の三種の沢紫陽花を入れ、茶筅でたっぷりと露を打ちます。ころどころ虫食い葉などもあって、趣深い床となりました。

水指は湖東焼、茶碗は朝鮮唐津、小袱紗は龍村織物の天正歌留多、茶銘は喜雲、茶入は章洲窯呉須手(スワトゥウェア)、茶杓は瑞巌宗碩「雲静日月」、仕服は時代印度更紗です。建水は砂張の餌畚、蓋置は切り立ての青竹を用いました。

後炭の風炉中は、ええ具合に炭がおこって、風情たっぷりでした。水次薬鑵は彫金 西王母(桃)。

莨盆は一閑の行李蓋、火入は三代大樋の飴釉。干菓子は季節の落雁や干錦玉など八種を盛合せて、涼やかに時代蓋物大徳寺弁当箱に入れました。

薄茶碗は、安南絞り手寿茶碗。近藤悠三の箱書で素敵な仕服に入れてあります。
替には古信楽の平茶碗。

棗は、時代螺鈿高蒔絵平棗です。伊勢物語第九段の故事を意匠化した八つ橋に杜若、内側全面に流水紋蒔絵が施された見事な棗です。長いこと輪島に修理に出してたもんが帰ってきました。

とてもお喜びいただき、幸せな時を主客共に過ごせましたことに、心より感謝致しております。

【水無月の茶事・前】

2016-06-05 | Weblog
先達て、道楽 瑞相庵にて水無月の茶事がございました。

待合の掛物には、奥谷秋石の初夏の涼しげな軸。汲出は番浦史郎の伊賀焼にしました。本席には、元伯宗旦の夏山狂言。釜は時代桐紋尾垂釜。
懐石はまず、お向に魯山人の青織部長四方向附。淡路の活あこうです。針に打ったオクラと茗荷を添えてすり山葵です。この魯山人の器は小山冨士夫の箱書です。汁は袱紗仕立てで、翡翠茂木茄子と新小芋に落とし芥子。飯は蒸らし過程の一文字飯。四つ椀は時代輪島塗。
銀器の燗鍋に福井県の九頭龍というお酒。燗上がりで美味しい大吟醸です。そして飯器を持ち出して汁替。

煮物は時代輪島塗宝相華蒔絵煮物椀に、牡丹鱧 新蓴菜 ふり柚子。宝相華とは唐代によく用いられた意匠で、蓮華・石榴・牡丹・パルメットなどを組み合わせた空想上の花文。日本では奈良時代によく使われ、正倉院宝物の文様にも多くみられます。

燗鍋を預け、焼物は琵琶湖の天然活鮎に甘藷栂尾煮。鉢は須田菁華の倣仁清扇面鉢。

強肴は魯山人の赤絵兜鉢。この鉢は魯山人の共箱ですけど、矢口永寿との合作で永寿印もみられます。氈瓜を炊いたんに新生姜をすりおろして留めました。

次に預鉢として、大車海老・アボカド・水前寺海苔の黄身酢和え。清風与平の青磁鉢を用いて、和えたてを清々しく盛りました。

飯器に、じゅうぶんに蒸らされたご飯をつけます。

小吸物は地の紫蘇の花。ごく淡く僅に昆布と梅の風味をつけました。繪替游唐子蒔絵小吸物椀。

燗鍋と共に八寸を持ち出します。秋田杉木地筋目八寸盆に、海のもんは、日高の鱒に一休寺納豆を古酒でのばして挟んだもん、山のもんは紫小蕪をうちの糀に漬けたもんです。略千鳥としました。

湯斗と香の物。香の物は、沢庵・西瓜奈良漬・胡瓜浅漬を黒唐津の足付鉢に盛りました。

お箸を落とす音を聞き、折敷を引きに出て、懐石を終えました。

器・料理とも大変お喜びいただき、誠に光栄に思います。