福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

関係修復学特論

2007-04-05 22:47:55 | 学問

人と良好でかつ前向きな関係を構築することは時間がかかるし、エネルギーも要する。しかし、その関係を崩すことはいとも簡単なこと。時として、罪の意識薄く、思わず吐いた一言で相手を大きく傷つけることもある。特に、権力を持った立場からの弱い立場への発言は、十分に注意を要する。

いったん崩壊したり、疑心暗鬼を生んだ人間関係を修復するにはどうしたらよいのだろう? また、修復法のコツというものはあるのだろうか?

もし、大学や大学院の講義で、「関係修復学」に関するものがあれば、高いお金を払ってでも良いから、受講してみたい。おまけに、単位がもらえるなら、転職の時に役立つかもしれない。

北海道大学には、そうした希望のある方に、聴講生制度や科目等履修生制度がある。それでは、目的とする講義はあるのだろうか? 全学シラバス検索システムを使って、「関係修復学」で検索をかけてみたが、0ヒットであった。そこで、キーワード検索で「人間関係」と入力すると、『看護過程論』、『臨床心理学』、『人間関係看護技術』が出てきた。興味深い講義内容のようだが、目的からは遠い。

半ば諦めかけたところで、手もとにある環境科学院のシラバスをぱらぱら眺めていたら、あるではないか、『関係修復学特論』が。どんな内容か、チェックしたら、やはり違っていた。『関係修復学特論』ではなく、『環境修復学特論』であった。

環境科学院の前進の地球環境科学研究院と低温科学研究所は、共同で21世紀COEプログラム『生態地球圏システム激変の予測と回避』を実施した(この3月で終了)。そのテーマの一つが、「環境修復」である。いったん崩れた環境を修復するのは困難である。その方策と技術を創出しようというのが、プロジェクトの狙いであった。さてさて、どんな成果が得られたのだろうか?

ということで、北海道大学出版会から『環境修復の科学と技術』(北海道大学大学01_7302_4003_21院環境科学院編)が刊行される運びとなった。私は、湾岸戦争後のクウェート 原油汚染を例にとって、汚染原油の微生物学的浄化と微生物群集モニタリングに関する項を執筆。生協書店や図書館で、この本を見つけたら、手に取って、パラ パラとページをめくってみて下さい。

環境修復も難しいが、人間関係修復はもっと難しいかもしれない。いずれの場合も、時が解決してくれることもあるが、目まぐるしく走り続けている今の社会では、やはり、何らかの解決策や手だてが必要だと思うのだが。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿