福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

感情労働者の燃え尽き

2007-06-14 07:08:09 | 日記・エッセイ・コラム

飛行機の非常口座席は苦手です。なぜかと言えば、客室乗務員の方と向かい合わせになり、極度に緊張してしまい、落ち着かないからです。

今週火曜日の午後、札幌から羽田に向かう飛行機では、運悪く非常口座席になってしまいました。さてさて、どうしましょう。こういう時は、新聞を広げて読み続けるのが一番の解決策。朝日新聞の朝刊を借りて読み始める。

さてと、今日のテレビ番組は?と、いつもの習慣でテレビ欄から眺め始める。待てよ、良い歳した中年オヤジがテレビ欄を嬉しそうに眺めている姿を客室乗務員に見られるのは、ちょっと恥ずかしいよなあ。理性的に新聞をひっくり返して、1面を眺める。そして、『天声人語』を読み始める。

その中で、『感情労働』と言う聞き慣れない言葉が目にとまりました。肉体労働と頭脳労働に並ぶ労働のことで、感情労働者の代表例の一つは客室乗務員。乗客の理不尽や不条理な要求に対しても、不快感を客に見せず常に笑顔で接する。自分の感情をぐっとこらえて労働することを『感情労働』と呼ぶのだそうです。

それでは、研究者の世界はどうかと言えば、野外調査や実験が肉体労働で論文書きなどが頭脳労働と言ったところでしょうか。大学の研究者であるところの教員も肉体労働と頭脳労働と合わせた労働が100パーセントであれば、とっても幸せであるに違いありません。ところが、そうもいかないのが現代社会。年々、『感情労働』の割合が増加していると痛切に感じております。それは、大学教員がまぎれもなくサービス業であるからです。お客様第一のサービス精神が必要とされます。

一方で、大学教員は組織の一員。組織運営と言う観点から言えば、構成員の中から自然発生的に『感情労働教員』が生まれます。不条理で身勝手なことを感情的に要求する相手方に対して、『感情労働教員』は「チョームカツク~」と思ったとしても笑顔で「コーヒーにお砂糖とミルクをお使いになりますか?」と対応しなくてはなりません。『感情労働教員』には強い精神力が必要なのですが、負荷がかかりすぎるとサンドバックが破れてしまいます。こうして『感情労働教員の燃え尽き症候群』に至った場合、組織や構成員はどのように解決したら良いのでしょう?これは、深刻な問題です。ストレスが加速的にかかるような状況では、その防止策が肝要だと思います。

0706113昨晩の羽田から札幌への機内で、そんなことを考えていたら、新千歳空港に着陸。機内を出る際、客室乗務員の方が笑顔で「またのご搭乗、心よりお待ちしております」と私の目を見ながら感情労働してくれました。その瞬間、眉間のしわが緩みました。


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1 コメント

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・・・なんかイイ話ですね。なかなかブログでも思... (否定論者)
2007-10-13 10:45:10
・・・なんかイイ話ですね。なかなかブログでも思ったことをそのまま書いていいのか難しい時代ですし。

まずは、感情労働という概念を広く共有しないことには、仕事上の相手のことも考えられないでしょう。
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