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気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

A Dangerous Man by Robert Crais

2020-01-05 16:02:04 | 読書感想

自称世界一の私立探偵と名乗るElvis Coleの相棒Joe Pikeは銀行から出てきて車に乗り込もうとした時、顔見知りの銀行員の女性Isabel Rolandが車で拉致されようとしている瞬間を目撃、彼女を助け、拉致しようとした2人組を警察に引き渡す。自分の身に起きたことに立ち直れず、ショックを受けて、怯え、戸惑うIsabel にPikeは自分の電話番号を教える。

3日後、Pike は留守電にIsabel から「大至急、話したいことがある」という切迫したメッセージがあることに気づき電話するが、彼女は電話に出ず留守電メッセージにつながる。翌朝、彼は刑事の訪問を受ける。刑事は、Isabel を誘拐しようとした2人が、昨日、釈放されるがその日の夜に銃殺されたと告げて、彼のアリバイを尋ねる。彼はIsabelの電話は彼らの釈放に怯えたためだと推測する。彼は彼女が電話に応答しないことに不安を抱き、彼女の家に向かい、彼女が行方不明になっていることを知る。

近所に住む親友のCarlyによると、行方不明にになる前、彼女はパニックになりながら自分を誘拐しようとした2人組がまた自分を誘拐しようとしているとCarly にメールを送っていた。Pikeは彼を訪ねてきた刑事にIsabelの失踪について連絡するが、刑事は2人の釈放を知らされたIsabel が自発的に家を去ったと考えていて、誘拐事件と捉えていなかった。しかし、Carly は親友の自分にIsabelから何の連絡もないのは絶対におかしいと言い、Isabel は2人組に誘拐されたと主張し、Isabel が彼女にメールで送ってきた家の前を通る2人組が乗った車の写真を見せる。

Pikeは、写真の2人は、以前彼女を誘拐しようとした2人組とは彼らが殺された時間、場所から考えて、別人であることに気づく。以前、誘拐されかけた時、Isabel は誘拐しようとした男から「俺たちはお前の秘密を知っている」と言われ、自分には秘密などないと思っている彼女は戸惑っていた。誘拐に失敗した男達を処刑する冷酷さ、すぐに代わりの2人を用意する周到さ。Pike はIsabel の誘拐の背後に大規模な犯罪組織の存在を意識する。Pike は、彼らの言うIsabel の秘密が何であるかを探り、彼女の救出に全力をあげることを決意し、Coleに助力を要請する。

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PikeとColeの固い友情は良いな。どちらかが助けが欲しいと求めると一瞬の躊躇もなく快諾して駆けつける。そして自分が知った情報はすぐに相方に知らせる。1人だと一歩、一歩しか進まない捜査も2人で情報を共有することによって3歩進む感じで、Isabel を誘拐しようとしている犯人側の意図が明らかになっていく過程が止まることなく進み、どんどん先を読みたくなリ読むペースを早めた。終盤のクライマックスは2人が死ぬことはないだろうと思いながらもどきどきする展開で面白かった。

用意周到に準備して、危ないと思うと一歩引いて、次の手段を考える沈着冷静なHicksのキャラ、窓口に月1回ぐらいの割で訪れるPike にほのかな恋心を抱くIsabelのキャラも魅力的だった。特に、Isabelと親友のCarlyの無事を喜び合うキャッキャッした会話は微笑ましくて楽しい。そして、襲われてパニックに陥っているIsabel を落ち着かせようと考えるが、その言葉が思い浮かばないPikeは彼らしくて良い。


E-book(Kindle版)★★★★☆ 336ページ 2019年7月出版



Down the River Unto the Sea by Walter Mosley

2019-12-01 09:55:03 | 読書感想

2019年 MWA BEST NOVEL受賞作

Little Exeterという大物麻薬密輸業者の張り込みをしていたNYPDの刑事Joe Kingは通信司令Gladstone Palmerからベンツを盗んだと訴えられているNathalie Malcomという女性を逮捕するよう命令され、彼女の自宅に向かう。彼は、ベンツは今住んでいる家と同じように愛人である男から提供されたもので盗んでいないという彼女の話を信じ、訴えは何かの間違いだと考え、彼は誘われるままに彼女と男女の関係になる。翌日、自宅にいた彼は彼女をレイプした容疑で逮捕される。彼女のレイプされたという訴えの他に隠しカメラで撮られたレイプを裏付けるビデオもあり彼は彼女に嵌められたことを知る。

刑務所に収監された彼には地獄のような日々が続く。警官だった男が入ってきたことは瞬く間に囚人たちに知れわたり、毎日彼は彼等からの襲撃に神経をすり減らす。彼はいつか、攻撃した相手を殺して、生涯、刑務所で過ごすことを覚悟する。しかし収監されてから90日後、突然、彼は告訴が取り下げられたと言って釈放される。

10数年後、探偵になった彼にレイプされたと告発した女性から手紙が届く。手紙の中で彼女は、大量の麻薬を所持していた罪を見逃してもらう代わりに彼を誘惑してレイプされたと訴えるようAdams Cortezという警官から強要されたと告げる。彼女は、彼を冤罪にしたことを悔やんでいて、真実を告発する用意があると告げていた。

彼がその手紙への対応を考えている時、無罪を勝ち取ることで有名な刑事弁護士Stuart Braunの法律事務所でインターンをしているWilla Portmanと名乗る女性がやってくる。彼女は二人の警官を射殺したとして逮捕されたFree ManことLeonard Comptonの無罪を証明し彼を釈放してほしいと依頼する。彼女は彼の弁護を引き受けたBraunの指示で資料の調査を担当していた。3年前、新聞記者であったManは、2人の警官を殺した罪で裁判で死刑を宣告されていた。死刑判決後、彼の弁護士となったBraunは事件を精査し、提出された証拠は状況的証拠に過ぎないと断言し、彼の行為は正当防衛で無罪だと主張し、上訴が認められていた。 しかし、2週間前、Braunは突然、Manの話していることはすべて嘘だと言い、彼を見捨てる(well him down the river)ことを決断する。彼女は、Manはホームレスの子供たちを売春や麻薬取引などの犯罪組織に売り渡している悪徳警官Eugene ValenceAnton Prattから子供たちを守る組織を作ったため、彼らに命を狙われていたと話し、2人の警官を殺したのは正当防衛であると断言し、二人の不正を告発できる証人を見つけたと告げる。しかし、その証人Johanna MuddがBraunに会いに行くと出かけた後、行方不明になっていることも話す。彼の元刑事としての直感はManが無罪であることを告げていた。彼は、Manが無実の罪で拘留されていることに、同じように冤罪で拘留されていた自分の気持ちを重ね合わせて、彼の事件を調査することを決める。そして、自分の冤罪も晴らす決心し、Nathalie Malcomに電話する。

できるなら、彼の冤罪の問題を警察組合が取り上げ、また刑事に復職できるのではと期待しながら。

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久しぶりにハードボイルド小説を読んだという感じ。刑事時代に罠に嵌められて職を追放され、刑事という職に未練を残しながら探偵となった男の生き様が骨太に描かれていく。グイグイと読ませてくれるが、敵味方を問わず読み飛ばしたくなるような暴力的な場面が多くあること、逮捕に向かった女性といきなり肉体関係を持ってしまう主人公は、僕の好きな探偵像とは違い引き込まれるキャラではないこと、また物語の終わり方にも不満が残り、読み終わった後の爽快感は今一だった。


E-book(Kindle版)★★★☆  322ページ 2018年2月出版 





Thin Air by Lisa Gray

2019-11-18 21:19:13 | 読書感想

NYで行方不明者の捜査を業務にしていた私立探偵Jessica Shawは2年前に最愛の父親を亡くした後、父親との楽しい思い出が残るNYにいることに耐えられず家を売り払い、コイントスで行き先を決めて全米をさすらう事務所を持たない私立探偵となる。LAに着いた彼女はMissing Personのウェブサイトで彼女が扱いたいと思う失踪人を探している時、メールの着信に気づく。匿名のメールには25年前にLAで起きた殺人事件の記事が引用されていた。記事によると、25歳のEleanor Lavelleという若い母親が殺され、3歳の娘が現場から連れ去られた事件で、犯人も娘の行方も分からないままに警察は捜査を終息させていた。記事に載っていた行方不明になっている3歳の少女、Alicia Lavelleの写真を見た彼女は、その少女が自分であることに気づき動転する。彼女は父親のTonyから母親は彼女が乳児の時、自動車事故で死んだと聞かされていた。彼女は母親に抱かれた自分の写真を大事に財布にしまっていた。記事に載った写真が間違いであると指摘してくれる両親がいない今、彼女は自ら真相を探ろうとして事件が起きたEagle Rockという町に向かう。彼女は当時の状況を知る人々を訪ねてEleanor Lavelleについて調べ始める。そして調査のため立ち寄った店のテレビで、今、地元を騒然とさせている女子大生殺害事件のニュースを見た彼女は、事件の捜査責任者の刑事Jason Pryceが父親の葬儀に参加していた男であることに気づく。殺人課の刑事がなぜ父の葬儀に出席していたのか?父とはどういう関係だったのか?彼は殺されたEleanor、また自分について何か知っているのか?彼女は直ちに捜査本部に電話してJason Pryceと連絡を取ろうとする。そんな時、25年前の殺害、誘拐事件について記事にしようと調べているという新聞記者が彼女に接触してくる。

捜査から戻ったJason Pryceは自分のデスクの上に置かれた至急と書かれたメッセージに、決して会いたくない、忘れようとしている名前を見て途方にくれる。

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ヒロインが25年前に起こった殺人事件で行方不明になっている当事者という設定は面白かった。ただアル中気味のヒロインや彼女の母親の生き様には共感できずに引いてしまう。Pryceという刑事のキャラのほうが魅力的だった。

犯人の行為に納得できない部分もあったが、彼女と一緒に暮らしていた父親と思っている男が母親を殺したのか?彼女にメールを送ったのは誰か?彼女の母親の事件を調べていると言って彼女に近づいてきた事件記者との関係はどうなるのか?Pryceが抱え込んでいる悔やみきれない過去の出来事とは何か?等々、色々な 謎が設定され徐々に明らかになっていく過程が興味深く面白く読めた。


Kindle版★★★ 281ページ 2019年7月出版 読み放題(又は¥595)





If I Die Tonight by Alison Gaylin

2019-05-12 11:46:11 | 読書感想

2019年 MWA Best Paperback Original

ニューヨーク州の北部の町Havenkill 10月19日金曜日、午前3時

80年代に流行歌手だったAmy Nathansonという女性が雨の中警察署に駆け込んでくる。彼女は乗っていた高級車がカージャックにあい、助けを求めた声に気づいた17歳の少年Liam Millerが車の前に立ち塞がり、犯行を止めようとしてひき逃げにあったと訴える。

事情聴取した署で唯一の女性警官Pearl Mazeは、彼女の証言に不信感を持つ。彼女はかなりの酒を飲んで運転していた、彼女はカージャックを止めようとして轢かれた少年の安否よりも奪われた車により関心があるように見える、もしかしたらカージャックにあったというのは彼女の狂言で彼女が誤って少年を轢いてしまったのでは?彼女の証言の信憑性を調べ始めたPearlは彼女の証言には嘘があることを発見する。

一方、ひき逃げ事件があった現場の近くに住むシングルマザーのJacqueline  Reed(Jackie )は、Wadeという17歳の息子の様子に不安がいっぱいだった。クラスメイトから悪魔崇拝主義者と揶揄されていて、友人も作らず、学校から帰ると自室に閉じこもって彼女と話をしようとしない。ひき逃げ事件があった後の彼の行動は、いっそう彼女を不安にさせていた。事件の翌日、衣類をこっそり乾燥機に入れていたり、弟に頼んで自宅から離れたゴミ捨て場に袋に入った携帯電話と思われるものを捨てさせていた。Amyがカージャック犯が着ていたと証言した服装と酷似している衣類、捨てさせた携帯電話はAmyが車と一緒に盗まれたと言った携帯電話?JackieはWadeに事件当夜、どこにいたか詰問するが彼は自宅のベランダでたばこを吸っていたと話し、外出していないと主張する。彼女は彼が雨で濡れたと思われる衣類を乾燥機に入れていたことから彼が嘘をついていることを知る。

やがてLiam Millerの死が発表され、事件は殺人事件となり州警察から刑事が派遣されてくる。そんな中、殺された少年の勇敢な行為を称える声がSNSで拡散し事件現場に設置された献花台には同級生をはじめ多くの人々が訪れ献花台は日に日に巨大なものになっていった。

そして、Jackieの不安が現実になり、容疑者としてWadeの名前が浮かび上がってくる。彼女の再三の要求にもかかわらずWadeは頑として彼が当夜何処にいたか話すことを拒否する。そんな中、彼を非難する声がSNSで拡散し、Jackieたち家族はコミュニティから孤立していく。

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SNSが炎上という言葉をよく聞くが、SNSのつぶやきによって、疑われている息子ばかりでなく家族までも周囲から孤立していく緊迫感がすごい。

思春期に入った息子への対応に悩む母親がよく描かれている、タバコを吸っているのを見て見ぬふりをしたり、プライバシー侵害と非難されるのを心配して、彼の散らかっている部屋を掃除するのをためらったり...

Pearl Mazeのキャラに魅かれた。母親を殺したことを悔い、結婚しないことを決断、一夜限りの相手をネットを通じて探す。前の警察署で母親を殺した過去を隠して勤務に就くが同僚たちに露見してこの地にやむなく異動してくる。自分はパトロール警官で事件を捜査する刑事ではないと言いながら、腑に落ちないことがあるとすぐに捜査にむかう行動力はすごい。事件は自分が解決してやるという意欲は感じず、サラッと捜査している感じが良い。この著者の別の作品、私立探偵Brenna Spectorのようにシリーズ化されないかな。

E-book(Kindle版)★★★★★ 394ページ 2018年3月出版 550円(2019年5月購入)



A Gambler's Jury by Victor Methos

2019-05-02 10:57:49 | 読書感想

2019 MWA Best Novel 候補選出作品

Danielle Rollins(Dani)は、Uta州のSalt Lake市で刑事弁護士をしている。刑事弁護士といっても、無罪だと主張している殺人罪で逮捕された容疑者を弁護するのではなく、酔っ払い運転や麻薬所持など軽微な罪で逮捕され、罪を認めている容疑者を刑務所に収監されることがないように検事や裁判官と駆け引きするのが主な私の仕事である。Uta州はアメリカでも犯罪が少ない州として知られているが私が住むこの町では年々犯罪者が増えている。おかげで私が依頼人に困ることはない。

その日、白人の夫婦Riley  and Robert Thorne夫妻が生後まもなく養子にした知的障害を持つ17歳の黒人の息子Teddyとともに仕事の依頼に来る。Teddyがドラッグ密売の容疑で現行犯逮捕されたので弁護して欲しいと。捜査当局に事件について問い合わせると、Teddyは彼の唯一の友人であるKevinの家に行き、Kevinnや一緒にいた少年2人に頼み、囮捜査官とは知らずに麻薬売人の家へ彼を連れていってもらい、売人にコカインが入ったバッグを渡したところを張り込んでいた捜査官に逮捕されたという。私は未成年の少年がドラッグ取引で捕まるのはよくあることで、しかも彼は知的障害者であることから、事件は不起訴にできる可能性が高いと考えて依頼を受ける。

しかし、担当の検事は彼が売ろうとしたコカインの量が8キロ、2000万円の価値があることを重く見て、さらに一緒にいた3人の少年がコカインは彼の物だと証言していることを挙げ、この事件を未成年者を扱う少年裁判所ではなく陪審員の評決を求める一般の法廷で裁こうとする。殺人などの重罪などでは少年でも一般裁判が開かれることがあるがドラッグ取引で未成年者の裁判が開かれるのは明らかに司法制度に違反している可能性が高い。私はその違法性を指摘するが予審判事も私の異議を却下して、事件は一般法廷で裁かれることになる。どうやら検事と判事は結託し、これを機に少年も例外なく一般法廷で裁こうと考えているようだ。私はTeddyが唯一の親友であると思っているKevinが,コカインが何であるか知らないTeddyに罪を着せたと考えていた。私は、Teddyに彼が囮捜査官に渡したというバッグは本当はKevinの物ではないかと問いただすが,彼はKevinは友達だとして答えず、Kevinが彼を利用したという確証をえることができない。私は彼から事件のことを聞き取ることはあきらめて、事件の調書や関係者からの聞き取りで裁判に臨むことにする。やがて、私はこの裁判は私たち刑事弁護士が呼称するGambler's Juryであることに気づく。

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弁護する被告は精神障害を持った少年、事件の詳細を聞き出すことができない。事件に立ち会った人々は少年が自ら行った行為であると証言していて彼女も反証を上げることができない。裁判が進むにつれてどんどん被告の少年に不利な事実が積み上げられていき、どうやっても彼の無罪を勝ち取りそうに見えない。ヒロインと同じように最後まで重苦しい雰囲気を感じながら読んでいくと…いやぁ、最後はハッピーな気分で読み終えた。

ヒロインのキャラは魅力的。体の80パーセントはアルコールで作られているように、何かというと親友が経営するバーで飲んだくれている。しかし、法廷には時間通り出廷する、酒の匂いをふりまいて検事や判事に嫌がられながらも。裁判では依頼人である被告人に無罪になるかどうか聞かれると、心では絶対無理だとわかっていても大丈夫と安心させる商売上手、内心では裁判の前にまた犯罪を犯すと確信しながら。自分の浮気が原因で離婚した夫に未練たっぷり、たびたび彼に会いに行き、再婚する女の悪口をさんざん言って再婚しないよう説得しようとするが、それでも再婚するとわかると二人が一緒にいるのを見るのに耐えないとLAへの引っ越しを考えたりしている。また子供の時の悲惨な体験から絶対ディズニーランドに行かない。

Kindle読み放題で読めますのでお勧めです、ぜひ一読を!

E-book(Kindle版)★★★★★ 328ページ 2018年2月出版 Kindle読み放題



The Good Cop by Brad Parks

2019-04-13 12:16:39 | 読書感想

2014年 PWA BEST HARDCOVER P.I. NOVEL

New JerseyのNewark 市の3月、多くの事件記者が惰眠を貪っている朝8時38分、熟睡していた市最大の新聞社Eagle-Examinerの記者Carter Rossは上司の編集者Tina Thompsonから電話で刑事の死亡を知らされて直ちに取材に向かう。この街では警察官は自分たちの安全を守ってくれるとして市民から尊敬されていた。そんな彼らの死は身内の死と同様に考えられていて、市民の関心は高かった。

他のマスコミが取材に来る前に死亡した刑事 Darius Kippsの妻から取材しようと考えたCarterは亡くなった刑事の妻を訪ねる。そこで彼女から彼の仕事への情熱、家族に対する愛情、特に最近生まれた待望の息子によせる期待と愛情などを聞き、Carterは彼の高貴な人格を記事にすることを決める。しかし、社に戻りTessに会った彼は彼女からDariusは自殺だったと話され記事には取り上げないと告げられる。警察官の殉職は新聞のトップページを数日独占する価値はあるが、自殺となると記事としての価値がないとされて。Carterは、男の子が生まれたことを喜び、一緒に野球の試合を観ることを楽しみにしていた男が自殺ということに納得できず、記者としての好奇心から、この事件をもう少し取材しようと決める。

Carterは、Dariusについての情報を得ようと知り合いの刑事に電話する、刑事はDariusの優秀さを称えるが、彼が最近、警官の不正を調査する警務課と接触していると言い、彼が裏で何か違法行為をしていた可能性を指摘する。一方、彼の妻は彼へ電話して来て、いつも夫は、自殺する人に対し扶養すべき家族を残して自殺するのは無責任であると非難しており絶対自殺などしないと主張し、その方向で記事を書くのはやめて欲しいと要求する。そしてDariusのパートナーであった刑事は、Dariusは犯罪者に対しても彼らの人権を尊重し、彼らに敬意をもって接していたと話し、彼が人間としても優秀であったことを証言する。

Carterは彼がDirty CopだったのかGood Copだったのか?どちらの主張が正しいのかさぐろうとして、裏の社会に詳しい男や警務課の刑事からDariusについての情報を得ようとする。そんな中、著名な牧師がDariusの妻の支持につき、多数の記者を集めて会見を開き、Dariusは自殺と警察が発表したのは間違いであり、彼は自殺するような男ではないと主張して、市が属するEssex群の検察庁に独自の捜査を要求したという声明を出す。それを見た上司の編集局長は取材却下から一転、彼にこの事件を取材するよう命令する。

やがてCarterはDariusの他殺の可能性についての決定的な証拠を手に入れる。そして、それを記事にした時、事態は一変する。いままで彼に協力的だった未亡人が彼との面談を拒否し、群検察も独自の捜査をしないことを決定、Dariusが自殺だったという警察の発表を容認する。それらの判断はどうしてなされたのか?Carterが精力的に取材し始めた時、彼の乗った車は何者かによって銃撃される。

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物語のテンポがゆっくりとした展開で、一気に読もうという意欲がいまいちだった。真相もCarterが見つけ出すというよりも誰かによってもたらせるという感じを抱いた。

ただ新聞記者の心構えが描かれていたのは興味深かった。例えば、被害者が黒人である時の取材時の配慮、昔は黒人の取材には黒人記者が行った、白人である自分が取材する時、黒人が白人である自分に嫌悪感を持っているかどうかを探りながら取材するなど。

また、よくある警察との不仲などはなく 捜査に必要だと思われることは市民の義務として警察に知らせる。記者としての倫理から逸脱していないように注意して記事を書く。けっして独走して記事を書くのではなく、ちゃんと編集局長などに記事について了解を得たうえで記事を書く。ミステリー小説によくある型破りな記者ではなく またいざとなると悪人相手に大太刀回りするようなスーパーマンでもなくごく普通の人間という感じのキャラクターで親近感を抱いた。そして彼に情報を提供してくれる人々のキャラの面白さ。顔にピアス、腕に入れ墨をした死体を含め死について研究している学生やどうやら盗品を売りつけようとするユダヤ人の老兄弟などなどユーモラスで楽しい。

E-book(Kindle版)★★★ 324ページ 2013年3月出版 807円(2019年3月購入)



Under Water(Duck Darley #1) by Casey Barrett

2019-03-03 12:45:28 | 読書感想

2018年 PWA BEST First PI Novel 候補

Duck Darley(Lawrence James Darley)は、少年時代、お金持ちのお坊ちゃまでオリンピック候補と言われるほど競泳の才能に秀でていた。しかし、父親が不正な経済活動をしていたことが発覚し逮捕されてから、彼の人生は一変、オリンピック選手の夢は破れ、生活が窮地に陥った彼は麻薬取引の仲介を始めるが、やがて警察に逮捕され一年以上刑務所に収監される。出所した彼は二度と刑務所に入らないことを自らに誓う。彼は前科があるため、私立探偵の免許を得ることができず、founder and consultantという肩書で探偵業を始め、かって彼もその一員だった金持ちの人々からの依頼で浮気調査や家出人の調査の仕事を行っていた。

ある9月の日、20年以上親交がなかった元水泳のチームメートでオリンピックの金メダリストCharlieの母親Margaret McKayが突然彼を訪ねて来る。彼女は18歳の娘Madelineが先週から行方不明になっているので、探して欲しいと彼に依頼する。わずか一週間で心配するのはどうかと話す彼に対して、彼女は娘とは毎日メールのやり取りをしており、レーバーデイの先週の月曜日に『ごめんなさい』というメッセージが来てからメールが来なくなった。普段、反抗的な態度をとっている彼女が『ごめんなさい』と殊勝なメッセージを送ってきたのはおかしいと主張する。

Duckは依頼を受け、母親が用意してくれたMadelineの親しくしていた人達を訪ねることから調査を開始する。しかし、それは彼が必死になって忘れようとようとしているオリンピック金メダルの最有力候補と言われていた彼の過去の苦い思い出と向き合うことを意味した。彼は酒の力を借りて、当時、彼より能力が劣っていたにもかかわらず、彼が競技を断念した結果、オリンピック水泳で金メダルを獲得した彼女の兄Charlie、今はMadelineのスィミングコーチであるが、当時、彼に将来絶対メダルが取れると保証していたコーチTeddy Marksに会いに行く。しかし、ビジネスマンとして、コーチとして成功している彼らの対応は、人生の負け犬である彼に対して冷たくそっけない態度を示し、彼は何の収穫も得られなかった。彼はパートナーのCassandra Kimball(Cass)の調査から、Madelineが失踪した直前まで、最近別れた彼女の元カレJames Fealyに頻繁にメールを送っていたことを突き止め、Fealyのアパートを訪ねる。そこで彼は残酷に切り刻まれて殺されているFealyの死体と遭遇する。警察は別れ話にカッとなったMadelineが男を殺害したと推測、マスコミは一斉に彼女を狂信的殺人者として報道する。DuckはMadelineが破滅的な人生を送ろうとしていることを立証する証拠を次々と発見するが、彼女が男を殺したとは信じなかった。警察は彼に調査を中止し、あとは警察に任せるよう要求するが、彼は未だ行方が分からない彼女の捜索を続行する。それはオリンピックを目指す華やかな水泳競技に潜む深い闇の部分、死と暴力が待ち受ける世界に彼を導いていく。

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酔いどれ探偵DuckとSM女王Cassのコンビはユニークだった。Cassがパソコンを駆使して依頼に関する情報を集め、Duckがその情報をもとに行動する。ただ、暴力的、残虐な場面が結構あるので読む人によっては不快感を抱くかもしれない。Duckは、今の自分の生き方と直面することを避けるために酔うのか、こんなに酒を飲んでいて探偵業続けられるのかと思ってしまうが、プロットは良くできていた。Duckという男、失踪した少女の部屋からドラッグを拝借したり、倫理観と云うものもなく惰性で人生を送っているようにみえるどうしようもないキャラクターだが、なぜか次の作品も読みたくなるキャラクターだった。でも次回作Against Nature、1876円の値段は読むのを躊躇させるな。PWA新人賞候補になったことが値を釣り上げた?


E-book(Kindle版)★★★ 336ページ 2017年11月出版  320円(2019年2月購入)



Lights Out Summer by Rich Zahradnik

2019-02-05 19:00:40 | 読書感想

2018 PWA BEST PI PAPERBACK ORIGINAL受賞作

Coleridge Taylor は、1975年の秋、勤めていたNew York Messenger-Telegraphが倒産した時、大手新聞社に仕事を求めたが経済が逼迫している中、彼を採用する新聞社はなかった。彼は、新聞社やラジオ局にニュースを配信するthe City News Bureauという小さな通信社の事件記者となる。1977年3月、ニューヨークは後にサムの息子と言われる男の連続殺人に騒然としていて、ニューヨークポストやタイムスがその事件を大きく取り上げていた。彼はシリアルキラーを記事にするには大新聞の取材力にかなわないと感じ、まだ、マスコミの誰もが注目していない殺人事件を記事にしようと考える。

彼は、同じ日に黒人女性が殺された事件が起きたことを知り取材を始める。殺された女性、Martha Gibsonはゴミ捨てに出たところを殺人者と遭遇、慌てて逃げようとしたところを後ろから銃で撃たれて殺されていた。彼女はアパートの6階に住んでいて犯人は彼女がゴミ捨てに出て来るのを待ち伏せていたと思われた。彼は事件は通り魔的な犯行ではなく彼女を狙った犯行の可能性が高いと推理する。誰が彼女を殺したいと思っていたのか、動機を探ろうと、同じアパートに住む妹に取材した彼は3つの可能性を得る。彼女は大学を出て就職した会社で上司のセクハラを拒否したために解雇されていた、解雇した上司が告発されることを恐れて彼女を殺した可能性。また解雇された彼女は大金持ちの白人の家でメイドをしていたが、彼女は妹にその家族には暗い秘密があるのを知ってしまったと話していた、金持ちの家族が秘密を知ってしまった彼女を殺した可能性。さらに、取材していた妹はかなりの麻薬中毒であり、殺された姉は彼女に似ていることから麻薬取引がらみで妹に間違えられて殺された可能性。

彼はどの可能性が高いか、関係者との取材を進めていく。そして彼がひとつの可能性に犯人を絞り始めた時、ニューヨークの夜は突然の暗闇に襲われる。

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77年当時のニューヨークの状態が細かく描写されていて主人公のTaylorの印象よりそのことの方が印象に残ってしまった。、市の財政破綻、白人街と黒人街に分かれている街、黒人差別、「サムの息子」と呼ばれる殺人鬼、そして停電になった時の暴動。よくミステリーでシリアルキラーの例として「切り裂きジャック」とともに取り上げられる「サムの息子」がこの時代だったのかと思ったり、おなじくニューヨークの大停電が同じ時期だと分かるなど他にも当時のエピソードが多く語られていて、読みながら当時の記憶を懐かしく思い出した。

また、事件の取材は丹念に被害者の知り合いを当たっていく、実際に新聞記者がやっている手法に見えて、作者は元新聞記者だったのではと推理したのだが?Taylorの性格はよくわからなかった。大新聞が取り上げない事件を記事にするのはマスコミに自分の取材力の優秀さを知らせるため?それとも大きな事件の陰に隠れ記事に取り上げられることなく世の中から消えていく被害者の無念の気持ちを考えてか?特ダネを取って大新聞社にステップアップしたいのか?あまり興味を惹かれないキャラクターだった。


E-book(Kindle版)★★★ 296ページ 2017年10月出版 1080円(2019年1月購入)


Her Last Day by T R Ragan

2019-01-22 18:16:36 | 読書感想

カリフォルニア州 Sacramento

Jessie Cole 34歳 私立探偵。 10年前に妹のSophieが失踪する。その一年後、彼女のように行方不明になった愛する人を探そうとしている人を助けてあげたいと思い、彼女は探偵になる。今、彼女はストーカー被害を訴えている女性の依頼を受け、ストーカー男を尾行していた件でトラブルになっていた。そんな時、彼女はBen Morrisonという事件記者から会いたいという電話を受ける。Benは10年前、自動車事故に遭いそれ以前の記憶がなかった。しかし、断片的な過去の記憶が時々蘇り、彼はその記憶が何を意味するのかわからず精神的肉体的な苦痛を受けていた。テレビでSophieの失踪事件に関するコールドケースの番組を見ていた彼はSophiの写真を見たとき彼女に会ったことがあると確信する。いつ何処であったのか思い出せないままに、彼は今もSophieを捜し続けている姉のJessieに会いたいと連絡する。

BenがSophiに会ったことがあると話していることに興味を持ち、Jessieは彼と会うことに同意する。ネットで彼の身元を調べた彼女は、彼の自動車事故と妹の失踪が同じ日だということに興味を抱く。彼女と会ったBenはこの失踪事件を記事にしたいと彼女に話し、Sophieの行方の捜索に協力を申し出る。彼女は自分たち姉妹が記事に取り上げられることが、Sophieの娘、14歳になったOliviaに与える影響について心配するが、彼女自身、母親に何が起きたのか知りたいと主張したので彼の提案を受け入れる。

数日後、BenはSophiが失踪した当日に彼女に会ったという女性を見つけたといい、Jessieに一緒に来るよう求める。飲み屋で女給をしているその女性にはJessie は今までも何回も会っていたが彼女は知らないの一点張りだった。Benは彼女の溜まっている家賃を払ってあげるかわりにSophieについて話すことに同意させていた。

女給の話によると、失踪したその夜、Sophiは店にやって来て、複数の男たちとダンスをした後店を出る。Sophieの後を二人の男がつけて行くのを目撃した女給は様子を見に外に出る。そこでは二人の男が彼女をめぐって喧嘩していた。そんな中、Sophieは持っていたボトルを割って一人の男の胸を刺す。思わぬ展開にパニックになった女給は助けを求めて店に戻り、再び格闘現場に戻ると3人とも消えていた。しかも、その場には血痕も見当たらずそのような出来事が起きた痕跡が残されていなかった。彼女は警察に通報しても彼らが事件を信じないと思い沈黙することにしたと話す。Jessie は妹がそのような暴力的な行為を行ったことにショックを受ける。しかし、今まで得られなかった手がかりを得たことに彼女を見つける希望を持つ。

そんな時、娘が行方不明になっているので探して欲しいという依頼が彼女に来る。その調査が今世間で話題のHeartless Killerと言われているシリアルキラーに彼女を導いていくことになるとは知らずに彼女はその依頼を受ける。

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誘拐ものにはつきものの緊張感が続いていて面白かった。犯人や捕らえられた人たちのキャラが良くできていた。血を見ると気絶してしまうという何とも殺人事件の探偵には似合わないJessieのキャラクターの設定も面白かった。また、Olivia、将来彼女と同じように探偵になりたいと言って、彼女の調査に興味津々、そんな彼女が探偵の片りんを見せる??ところが微笑ましい。拉致した男の狂気、彼の暴力に耐えながら、そこから脱出しようとする拉致された人たちのそれぞれの葛藤、連帯感も読みごたえがあった。


E-book(Kindle版)★★★★ 310ページ 2017年10月出版 KindleUnlimited(読み放題)



Too Far Gone by Allison Brennan

2019-01-17 18:05:21 | 読書感想

7月 アメリカテキサス州San Antonio

メキシコマフィアのマネーロンダリングを引き受けていたJesseの育ての親のCarson Spadeは、FBIとの司法取引でマフィアのマネー情報と交換にFBIに保護されていた。しかし、最近、義理の息子Jesse が実の父親であるSeanに親近感を抱き、自分から徐々に離れて行くことを懸念したCarsonは、Jesseが再び自分のことを敬愛してくれることを期待して彼とSeanとの仲を裂くようにある計画を実行する。

Seanの妻でFBI捜査官のLucy Kincaidは人質解放のための人質交渉人の研修を受けた直後、銃を持った男が客を人質にとって食堂を占拠しているとの連絡を受け交渉人の補佐として現場に向かう。男は精神錯乱を起こしていてFBIのベテラン交渉人Leo Proctorの説得も実らず、意味不明の言葉を発し続け対話にも応じないことからSWATのリーダは突入を決断し男が銃を彼らに向けた瞬間、彼を射殺する。

Lucyは事件の背景と男の動機を捜査する警察とFBIの合同捜査チームに加わる。彼がしきりにPaul Greyの名前を引き合いに出していたことから彼女はPaulについて捜査することを主張する。彼は事件前日から行方不明になっていた。

射殺された男はCharles McMahon、アルツハイマーの研究をしている博士だった。妻や子供を愛し、善良温厚な性格だった彼は数ヶ月前から人が変わったように怒りっぽくなリ、過去の出来事を思い出せない、記憶に障害を持つようになっていた。彼は彼の豹変に耐えきれなくなった妻から離婚され、そのあとすぐ会社を解雇される。Lucyは彼の豹変はどうして起きたのかに興味を持つ。彼の自宅に向かったLucyは書斎にPaul Greyの死体を発見する。しかし、Lucyは死体の周りにい血痕が少ないことから彼は他の場所で殺されてここに放置されたと推測する。記憶に障害があるCharlesは自らPaulを殺したことを忘れているのか?それとも誰かが彼に罪をなすりつけるために彼の自宅に死体を放置したのか?Lucyは彼が殺してないほうにかける。

捜査を進める彼女はCharlesの研究助手をしていた女性が失踪していることを知る。さらに、人質現場で彼が正体不明の男と何事か話しているのが目撃されていた。男はCharlesが客たちを人質を取る前に店を立ち去っていた。

Lucyは単なる精神異常者の犯行とはいえない、事件の背後に深い闇を感じ始める。

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Seanのファンが読者に多いせいか、彼とLucyのダブルキャストのようになって、章ごとに主役が入れ替わり、Lucyの活躍を期待してる身としてははぐらかされたようでまどろっこしい。プロットも最初から結果が見え見えで先へ読もうとするワクワク感があまり感じられなかった。僕がSeanに違和感を覚えるのは、Jesseの母親Madisonに対する怒り。13年間、息子を育ててくれた彼女に対する感謝、優しさがもっとあって良いと思うのだけど?

E-book(Kindle版)★★ 473ページ 2018年10月出版 994円(2018年12月購入)