▼昼食時間になったので家に戻ると、妻が玄関に出てきて「安倍さんが銃撃され、心配停止状態だ」と告げた。
▼安倍政権は憲法改正に向けまっしぐらの長期政権だった。時代は戦争前夜の空気に似ているということを多くの国民は実感していた。
▼妻の甲高い声を聞いても、私の心は動揺しなかった。こんなこともありそうな時代の空気だと、感じていたからだ。
▼次に思ったことは、参議院選挙中なので政局がどのような動きを見せるかだ。「元総理の弔い合戦」的流れで、「テロとの戦い」という、米国にまねた政治の流れを、作り出すのではないかという危惧だ。
▼そして、私は3人の政治評論を聞きたいと思った。保坂正康・森達也・青木理だ。翌日の北海道新聞に、その3氏のコメントが載っていた。
▼3氏はいずれも私と同じく安倍政治に批判的な人物だ。できれば安倍政治肯定派の3人も登場させてほしかった。こんな時は公平を保つのが、新聞の真の姿勢だからだ。
▼犯人は元海上自衛隊員だという。昔でいえば海軍だ。犯人は自衛隊をやめて久しいが、ウクライナ戦争での尖閣問題やロシア艦隊の極東での動きが活発になっている。
▼海上自衛隊の警備は相当危険性を増している。現場の隊員の心労は想像を超えるに違いない。この襲撃事件で、自衛隊員の「憲法改正」についての考えも調査してほしいものだ。
▼妻から「心肺停止」という言葉を聞き、私は安倍晋三が自民党での勢力を高めていることに、大きな危機感を持っていたので、直感的に【心配停止】という文字が浮かんだ。
▼安倍晋三の死で、少しは「憲法改正」の流れが停滞し、私の「心配は停止される」のではないかという、一緒の安堵感だ。
▼人の死に対し不埒な考えだが、そのような心配を与えていたのが安倍晋三だからだ。だがそんな一瞬のひらめきも、杞憂に終わるだろう。
▼私の心の中にも、プーチン暗殺を期待する心がある。そんな市民の素朴な感情に、今回の安倍晋三殺害は、世界の大きな火種となって行くのではないだろうか。
▼北朝鮮や中国の独裁国家、さらに銃社会の米国の大統領にも危険性が及ぶのではないだろうか。極東の小さな島国の元首相暗殺事件が、世界を混乱させることがないよう、日本国民は憲法や、政治への関心を一層高めなければならないと思う。
▼私にとって安倍晋三とはいったいどんな存在だったのかを考えた。彼が長期政権を担ったおかげで、私の本棚には憲法や日本近代史の本が、大幅に増えた。
▼私が嫌いな安倍晋三という政治家は、私に憲法を学ばせてくれた恩師ではないかと、ふと思った。
▼政治家として【憲法改正】の信念を貫いた安倍晋三。自らが誘導したとされる「令和」という元号を、これから国民がどう解釈し、平和で安全な時代を作り上げていくかは、日本国民の民主主義の学びにかかっているのではないかと思う。
▼私の中のアベシンゾウは、鬼籍に入って安倍晋三になった。憲法解釈が不安定な人格に思えたのでカタカナ名を使用したが、今や憲法改正の旗頭としての存在ではなくなったからだ。
▼とはいうものの、鬼籍に入ってから、それをやたら持ち上げる政治風潮が恐ろしい。これは妄想だが、憲法改正論者の中には、安倍晋三のお骨を靖国神社に分骨させるなどということを考えていやしないかと心配になる。
▼私の【心配停止】は、どうやらこれからも止みそうにもないようだ。