▼女優の杉葉子さんが90歳で亡くなった。杉さんといえば、1949年(昭和24年)映画「青い山脈」で、主役の寺沢新子役を演じた。
▼168cmの長身、都会的で知的で上品な美貌で、軍国主義が崩壊し民主主義が花開いた戦後の、当時の揺れ動く若者たちの心境を見事に演じた。日本映画史上最も心に残る名作の一つだ。
▼軽快で明るいメロディ―の主題歌「青い山脈」は、戦後の焼け跡に響き渡り、日本復興に一陣の風をふかした、応援歌だったに違いない。
▼戦前の「軍歌」、戦後の「青い山脈」。「歌の力」というものが、戦争と平和という相反する環境の中でも、見事に発揮されている事に、あらためて驚きを感じる。
▼『国旗・国歌問題』があるが、戦争というものに、旗や歌までも参加させられる【国家総動員】というものの恐ろしさを「青い山脈」の歌は、私たちの心にひそかに訴えていやしないだろうか。
▼人間は環境に左右される。【戦争と平和】は、人の心の裡に共存する。映画「青い山脈」とその主題歌は、二度と戦争を起こしてはならないということを伝えているように感じた。
▼セピア色というより、まるで焼け跡から発見されたような煤けた感じの、新潮文庫「青い山脈」が本棚の片隅にあった。
▼戦争が終わり、民主主義という新しい考えに胸を躍らせる、当時の人々の考え方や行動が生き生きと描かれていた。「憲法改正」を目指そうとする、現在の我が国の姿に照らし合わせると、大きな警鐘を鳴らされるような気持ちで、読み終えてしまった。
▼戦争という大きな犠牲を経て「民主主義」を授かった。それから70数年、私たちは「民主主義」を真に理解しているのだろうか。民主主義が当たり前すぎて、その価値をないがしろにしていやしないだろうか。そんな問いと共に。
▼日常に起きる出来事を通し「民主主義とは何か」ということを、地域住民が一体となり追求していくという内容は、実に新鮮に感じる。時代が変わろうが、読者を感動させる筆力に魅了させられる。
▼巻末の解説は、おそらく英文学者で慶大教授だった平松幹夫氏だと思うが【「青い山脈」が単なる風俗小説以上に、昭和の戦後典型的な作品の一つとして、永く記憶され広く読まれ得る作品であることは、今さら保証することでもない事実であろう】と記している。
▼♪若く明るい歌声に 雪崩も消える花も咲く。「民主主義」の価値、そして「日本国憲法」意義を、あらためて私に問いかけてきた、珠玉の作品である。
▼読後、そんな感動を味合った私だが、実は杉葉子さんのフアンなので、ちょっぴり変わったエピソードがあるので、紹介したい。
▼函館市内の材木屋さんの看板に【杉板子】とある。それを私は「すぎいたこ」と読んでいる。「板子=いたご」というのは、磯舟に敷く床材のことだ。看板を正確に訳せば「杉材の板子があります」という意味だ。
▼私はこの看板を見るたびに「杉葉子」さんを思い出すので「杉いた子」と読んでしまう。もしかして、この木材屋の社長も、杉葉子さんのフアンだっのではないかと、勝手に考えているが、確認したことはない。
▼そう言えば、函館市内の町会長で、老舗和菓子屋の社長の18番が「青い山脈」だ。私より年上だが、東京の大学を出ていて、若い頃は女性にもてた感じがする?。もしかして、先生役の島崎雪子役の、原節子のフアンだったのかもしれない。
▼そう言えば,社長も若い頃は相当女性にもてた感じがするハンサムだ。医者役だった池部良に似ていると言われていたのかもしれないので「青い山脈」は、自分のテーマ曲だと思っているかもしれない。
▼次の会議であった時、その会長に「青い山脈」について尋ねようと思う。函館市内の社長つながりで、もしかして「杉板子」の、私の疑問も解決するかもしれない。
▼なんだかウキウキしてきた。♪若く明るい歌声に 雪崩も消える花も咲く。・・・思わず鼻歌も出てきた。・・・本日も我が田舎、快晴なり。