▼27日の報道ステーションのゲストは、元産業経済省職員の古賀茂明さんだ。古賀さんはいわゆる官僚だったが、国家や組織内に反する発言が多かったので、窓際に追いやられ早期退職をした方だ。冷静沈着で穏やかな物言いは、元NHK 職員の池上彰さんとともに、この頃、私たちにも政治や経済の根本的な問題を、詳しく解説してくれる一人だ。
▼ 番組途中、司会の古館さんの質問をさえぎり、自分がテレビ局側から出演を拒否されたといい始めた。「そうではなく、また事ある時には出演を依頼するつもりだ」と古館さんがあわてて制する。古賀さんは用意してきたフリップを出し、アベ総理批判を始めたのだ。
▼ CMを入れ遮る手もあったが、カメラは回り続ける。「原発輸出大国」から「自然エネルギー大国」・「武器輸出大国」から「平和大国」・「ギャンブル大国」から「文化大国」を訴えた。まさしく、古賀さんの「テレビ・ジャック」だ。古館さんは「古賀さんやめてください」と必死で制しようとするが、昨日の古賀さんは一切応じない。古舘批判まで行う始末だ。
▼ CM中に、古賀さんは退場かと思ったが、最後まで席についていた。番組終了間際、古館さんは「私の質問に古賀さんは答えず、不適切な発言をした」というのが精一杯のような感じだった。古賀さんは淡々とした雰囲気で、番組は終了した。
▼ テレビを観ていた、私の直感でこのように書いたが、この通り発言したわけではない。私が受け止めたのはこんな感じの内容だからだ。古賀さんの発言は、テレビという公平を旨とする場を私物化したといえば言えるが、報道の公平さや使命が均衡を失いがちな今日にあって、国が正しい方向に進んで欲しいという古賀さんの、殿様に直訴する侍の意地を見せたような瞬間だった。
▼ この番組は大勢が観ていただろう。私が願うのは、この直訴をマスメディアが、どう取り扱うかだ。憲法第21条が制限されそうな今日にあって、21条の意味を、徹底的にメディアで検証してもらいたいものだ。自衛隊を「わが軍」と発言したアベ総理の、21条の解釈とともに。
▼ 昨日の報道ステーションは、テレビに食い込まれそうな感じがした。これが評論家と評する人の、極めて正当な役割というような番組だった。この報道が大きな問題として取り扱われないような日本であれば、報道に携わる者の魂は、フリーズ状態だと思うのだが。
▼私も古賀さんの勇気に驚きすぎ、朝起きても頭の中が整理できないでいる。今、友達から電話があり「昨日の報道ステーションのディレクターが、局から処分を受けた」という。NHKも変だが民放も変だ。