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函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

「漁師見習30」船頭さん形無し

2009年07月21日 11時49分39秒 | えいこう語る
朝5時ごろ、2トントラックに昆布を満載し、沖から戻ってくる。
昆布干しは、天日に干すときは一秒でも早く作業をし、乾かしたほうがいい。
天日干しが一番うま味が出るそうだ。また、乾燥機を動かす、燃料代の節約にもなるからだ。
雨の日は、これもまた1秒でも早く竿につるす。干す時間が手間取れば、乾燥時間が夜にずれ込むからだ。
とにかく朝の2~3時間の作業は、いかに効率的に作業するかにかかっている。作業手順の、一工程が終わりそうになる間際に、次の作業の指示が飛ぶ。ちょいと一服などという暇はない。
私が思うに、この作業がスムーズに出来れば、もし北に拉致されて、重労働を強いられても、仕事ぶりを買われ、いいポジションにつけるのではないかと、そんなことをふと思ったりしている。
というわけで、船頭さんは作業が単純になり、効率が下がらないよう、絶えず手順に変化を与えているようだ。
その船頭さん、トラックに積む方法をいつもと変えて積んできた。
昆布は枚数にすれば、1台のトラックで1,200枚程度だ。長さが4メートルから6メートルもある。整然と重なっていれば、するすると引っ張れる。ところが昨日はそうはいかなかった。最後の最後まで力を入れ引っ張ったので、指が疲れてしまった。身体も痛い。
おとなしい奥さんが、ついに角を出した。
「あんたいつも自分だけがいいと思い、作業手順を変えるけど、みんなに迷惑になっているというのを、まったく考えていないはね。こんなに引っ張り難けりゃ、指が曲がってしなうじゃないの。私、明日は休みますからね。ねえ、かわぐちさんからも注意してやってくれない。まったく馬鹿なんだから」
目の前にいる、いつもは男らしい船頭さんは、母親に叱られた小学生のように、やけに小さく見えた。
その夜も、しこたま船頭さんは叱られたらしい。
今朝船頭さんが、今日は積み方変えたからと照れて言う。奥さんは今日はやりやすいはねと、笑顔だ。
仕事に懸ける情熱が熱いゆえ、壮絶な夫婦バトルが在っても、仕事はますます効率を増すのである。