夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

「ロボット」完全版

2012-08-17 18:09:48 | 映画
予告編だけ見ると、ものすごくナンセンスな映画に見えたし、上映時間が3時間にも及ぶというので、初めは「ないな…。」と思っていた。しかし、複数の雑誌の映画評などでも、好意的に取り上げられていたことを思い出して、今日見に行った。結果、よかった。

バシー博士が100人分の知識と能力、パワーのロボットの開発に成功し、チッティと名づける。チッティはその驚異的な能力で人々を驚かせたり、バシーの恋人・サナのピンチを救ったり、大活躍。バシーはチッティを、学会の承認を得てインド軍で役立てたいと思っている。しかし、バシーの恩師・ボラ教授は、チッティに善悪や恥や尊厳といった人間的な判断能力がないという致命的欠陥を指摘し、反対する。

そこで、バシーはチッティに人間の感情を学習させ、感情に作用するホルモンソフトも設定する。だが、人間の感情を持ったチッティは、サナに恋して夜中にその寝室に忍び込んだり、命令に背いたり、軍隊に採用してもらおうとするバシーの期待を裏切って戦争反対を唱えたりする。バシーは怒ってチッティを解体し、廃棄物処理場に捨ててしまう。

しかし、それをボラ教授が狙っていた。ボラ教授は、かねてから武器商人と接触しており、テロ用ロボットを100体納入する約束をしていたのだ。ボラ教授は研究室でチッティを再生させ、破壊プログラムを仕込んだチップを埋め込み、悪魔として蘇らせる。チッティはすぐにボラ教授の言うことを聞かなくなり、教授を殺害し、研究所で次々に自分の分身を作り出し、自由自在に合体したり形を変えたりして人々を襲い、社会を恐怖に陥れるが……といった話。

だいたいは、「ありえねー。」とか、「バカバカしー。」といった場面の連続なのだが、ときどき人間の本質についてズバッと切り込んできたり、思わずホロリとさせられたり、3時間が少しも長く感じられなかった。また、そのうちの1時間は、歌と踊りが占めているのではないかと思うくらい、話の進行とは全く関係のないところですぐに歌とダンスが始まり、えんえんと続くのだが、それがとても楽しいのだ。インド映画でこれは不可欠の要素で、映画館では、観ていて踊り出す人もいると聞いたことがあるが、本当なのだろうか?

凶暴化したチッティ(とその分身たち)が、警察や軍と戦って、次々になぎ倒す場面では、無慈悲に人々が数十人単位で死んでいくので、残酷なのが苦手な人には多分向かないと思う。また、ボラ教授によって悪魔と化したチッティの言動は、ハンパじゃなく怖いので、そこだけ見たらトラウマになるかも。でも、そのへんにさえ目をつぶれば、あとは面白かったし、登場する人数、ロケ地、セット、衣装その他を考えると、どれだけの金と労力を注ぎ込んでこの映画を作ったんだろうと思わされてしまう。とにかくすごい映画だった。