夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

「ル・アーブルの靴みがき」その1

2012-08-03 23:00:05 | 映画
フランス北西部の港町、ル・アーブルが舞台。主人公のマルセル・マルクスという老人男性(写真左)は、ル・アーブル駅前を中心に、靴みがきをして生計を立てている。妻はアルレッティ。美人で慎ましく気立てのよい女性で、近所の人からは、マルセルには「もったいない、いい女房だ」と言われている。この妻と、犬のライカと一緒に、貧しいけれども幸せな毎日を送っている。

そのころ、ル・アーブルの港で、コンテナのうちの一つから赤子の泣き声がするのを巡回中の警備員が発見し、通報した。調べによると、このコンテナは、アフリカのガボン共和国からロンドンに行くはずの荷物が、なぜかこの港に2日間もとどまっていたらしい。ル・アーブル署のモネ警視たちが駆けつけ、コンテナの扉を開けると、ガボンからの密航者たち(複数の家族のようだ)が10人ほど潜んでいた。しかし、警察が全員を取り押さえる前に、一人の少年(写真右)が脱走してしまう。

翌日。いつものように、駅前で靴みがきをしていたマルセルは、客が手にしている新聞で、密航者の少年が脱走したという写真付きの記事を目にする。昼になって、マルセルは波止場で弁当を食べようとして、新聞で見た逃亡中の少年が隠れているのを見つける。
「ロンドンはどこ?」
「ここは、ノルマンディーのル・アーブルだ」
さぞかしお腹をすかせているだろうと、食べ物をやろうとすると、警察が少年の捜索に現れたので、マルセルはパンと水、お金をその場に置いて去る。

マルセルが家に帰ると、妻の様子がおかしい。腹部の痛みを訴える妻を急いで病院に連れて行くが、医師は検査の結果は明日の午後に伝えるから、妻のほうは今夜は入院し、マルセルはまた来てくれと言われる。

帰宅すると、なんと犬小屋で逃亡少年がライカと一緒に寝ている。金を返しに来たのだという。マルセルは少年を家でかくまうことにし、近所の知り合いにも助けを頼む。しかし、少年が家に入るところを見ていた何者かが、警察に匿名の通報をしていた。

一方、妻のアルレッティは、病院で医師からレントゲンを見せられながら、病状の説明を受けていた。「奇跡を待つほかない」状態で、回復は万に一つの見込みもないという。医師が、義務だからマルセルにも告知しなくてはならないというのを押しとどめ、アルレッティは、「夫は大きな子供なの、だから先生、黙っていて」と頼む。