夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

「ル・アーブルの靴みがき」その3

2012-08-05 08:29:21 | 映画


「リトル・ボブ」の復帰チャリティー・コンサートは大盛況。ボブはその愛称の通り、とても小柄なのだが、なかなか渋く骨太な声で、ノリのよいステージを披露してくれる(写真)。このライブシーンはすごくかっこいいので、ここだけでも一見の価値あり。

このコンサートの日は、実は先日アルレッティが、「2週間経ったら来てもいいわ。あの黄色の服を持って」と言った日に当たっていた。マルセルはイドリッサに黄色の服を包みに入れて渡し、「明日は必ず行くから」との伝言をことづけて、病院に行かせる。

翌朝、3千ユーロが工面できたので、マルセルがこれからイドリッサを逃がしてやろうとしているとき、モネ警視が自宅にやって来る。警視は少年の気配を感じつつ、なぜかそれ以上に踏み込んでこようとはしない。警視が出ていった後、近所の通りには警察が何人も見張りを立てており、マルセルと懇意のパン屋・八百屋にまで令状を持った警官がやって来て、家宅捜索を始める。だが、それと入れ違いで、八百屋から配達のリヤカーが出発しており、野菜の箱の下にイドリッサが隠れていた。リヤカーは途中から、マルセルの靴みがき仲間、チャングが交代して港まで運んでくれ、波止場で無事、イドリッサをトロール漁船に乗せることができた。これで安心、と思いきや、漁船が出航する前にパトカーがやって来て、警官が追いついてしまう。

しかし、ここでモネ警視が、イドリッサがかくまわれている魚槽の蓋にどっかりと座り込み、漁船内を捜索しようとする警官たちに「何もなかった」と言う。警官が、「命令ですから」となおも少年を捜そうとすると、「私の階級に逆らうのかね?」

海へ出る漁船を見送った後、マルセルはモネを誘って、彼らの仲間のたまり場となっている酒場、カルバドスへ。マルセルは、「今まで、君を誤解していたよ」とモネに感謝する。

その後、マルセルは妻に会いに病院へ行くと、ベッドはすでに布団が片付けられており、イドリッサにことづけた、黄色の服の入った包みだけが上に置いてあった。マルセルは悪い予感に襲われ、担当の医師の部屋に急ぐ。



医師の部屋に入ると、「奇跡としか言いようがない」と言われる。
振り返ると、妻があの黄色の服を着て、笑顔で立っている。「完全に治ったの」。

正直、ここまで唐突なハッピーエンドはいかがなものか、とあきれたが、考えてみれば、フランス映画にはストーリー展開が稚拙なものがよくある気がする。2年前に見た、「あの夏の子供たち」も、よくわからないうちにいきなりラストシーンになり、「ケ・セラ・セラ」の歌が流れ出して、なんだこのとってつけたようなエンディングは、と興ざめに感じたことがあった。

登場人物がお年寄りばかりなこともあり、華やかさみたいなものには欠けるが、淡々とした味わいの、しかし、難民問題のようなことについても考えさせる、いい映画だったと思う。