元・副会長のCinema Days

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「ミアの事件簿:疑惑のアーティスト」

2024-03-16 06:08:16 | 映画の感想(ま行)

 (原題:MEA CULPA )2024年2月よりNetflixから配信されたサスペンス編。弁護士を主人公にした犯罪ドラマにしては、随分と雑な作りだ。もうちょっと脚本を練り上げられなかったのだろうか。とにかく御都合主義的なモチーフの連続で、途中から面倒臭くなってくる。とはいえ映像はスタイリッシュな面があり、何より主演女優のプロモーションとしての価値は十分見出せる。その意味では存在意義はあるかもしれない。

 シカゴに住む弁護士ミア・ハーパーは、恋人を殺害した容疑で起訴された芸術家ザイエア・マロイから弁護を依頼される。彼が犯人だという状況証拠は存在し、物的証拠のようなものも見つかっている。すでに世間の風潮では有罪が確定していて、マスコミは騒ぎ立てている。だが、決定的な要素が無いことに疑念を抱いたミアは、敢えて弁護を引き受けることにする。これに真っ向から反対したのが失業中の夫カルとその母親。そしてカルの兄レイは担当検事でもある。身内からの顰蹙を買いながらも、彼女は友人の私立探偵ジミーと共に事件の全貌に迫っていく。

 主人公の義母はガンを患っていて余命幾ばくも無いという設定ながら、とても重病人には見えず、まずこのあたりから胡散臭さが漂ってくる。ザイエアは刑事被告人にもかかわらず切羽詰まった様子は窺えないし、平気で創作と女遊びに明け暮れている。ジミーは大して頼りにならず、事件の真相を掴むのはミアの方なのだが、その切っ掛けがまた“偶然”の賜物だというのは実に苦しい。

 グダグダな終盤の展開を経て明かされる事の全貌に至っては、まさに脱力もの。この程度の“動機”で凶悪事件をデッチ挙げられてはたまらない。シナリオも担当したタイラー・ペリーの演出は気合いが入っていない。だが、主演のケリー・ローランドは本当にスクリーン映えする。身のこなしや、衣装のセンスも上質だ。ローランドはミュージシャンとして著名ながら、本作では一曲も歌わずに演技に専念しているのは好感が持てる。

 ザイエア役のトレバンテ・ローズをはじめ、ニック・サガルにショーン・サガル、ロンリーコ・リー、シャノン・ソーントンといった顔ぶれも絵になる。そしてコリー・バーメスターのカメラによる闇深い夜のシカゴの町並みは、クライム・サスペンスにはぴったりだ。アマンダ・ジョーンズによる音楽と既成曲の使い方も良い。
コメント
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