「こんにちわッ、テディちゃでス!
むむッ! かれんだァ~?」
「がるる!ぐるるるるがるー?」(←訳:虎です!クリスマスツリー?)
こんにちは、ネーさです。
雑貨屋さんの華やかな店頭には、クリスマスグッズや、
来年のカレンダーがずら~りと並びました。
戦争はイヤだよう、平和な年末であっておくれよう、と夢見つつ、
さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~♪
―― 猫を処方いたします。 ――
著者は石田祥(いしだ・しょう)さん、
2023年3月に発行されました。
おお、表紙イラストのニャンコちゃんが可愛いくて、
つい顔がふにゃふにゃっとニヤけてしまいますね~♫
とはいえ、猫を処方って、どういうことなんでしょう……?
「まずはァ、うけつけへェ~どうぞッ!」
「ぐるるるがるる?」(←訳:新患さんですか?)
京都市の中京(なかぎょう)区麩屋町(ふやちょう)通上ル
六角(ろっかく)通西ル富小路(とみこうじ)通下ル
蛸薬師(たこやくし)通東入ル。
よそ者にとっては究極にややこしい住所へ、
香川秀太(かがわ・しゅうた)さんは
ようやく辿り着きました。
いえ、まだこれで終わりではありません。
秀太さんの目的地は、
古くて、お世辞にもきれいとは言えない雑居ビルの、
ええと、5階にある
『中京こころのびょういん』。
「おすわりィ~くださいなッ」
「がるるぐるるるるるるるる」(←訳:今日はどうしはりましたか)
白衣のお医者さんを前に、
緊張をこらえて、秀太さんは口を開きます。
不眠や耳鳴り、食欲不振、
仕事のことを考えると胸が苦しくなるって、
説明しなくちゃ……ああ、でも、
飛び出た言葉は、
会社を辞めたいんです。
「そうでスかッ」
「ぐるるるるる」(←訳:わかりました)
ハッとした秀太さんは説明し直します。
違うんです、辞めたくないんです、
勤務を続けたい……!
するとお医者さんはおもむろに頷き、
そしてにっこりと。
猫を処方します。
「それでェしばらくゥ~」
「がるるぐるるぅる!」(←訳:様子を看ましょう!)
は? え? ねこ? 猫? 猫を処方?
と問い質すよりも先に、
キャリーケースが持ってこられて、
その中には、本当に猫が。
この状況は普通ではないと、秀太さんにも分かります。
けれど……ああ、そうか、これって
アニマルセラピーとかいうやつか、などと思ったりして、
猫ちゃんとキャリーケース(お世話用品入り)を抱え、
アパートに帰宅して。
あらためて、秀太さんは知るのです。
猫を処方――猫と暮らす。
意外にでかいな。あ、飲み水が要るよな。
キャットフードを出して、部屋も少し片づけて。
掃除するのなんて久しぶりだなあ。
こうして、猫ちゃんのおかげで
秀太さんの病状は劇的に改善、
平穏な日々を取り戻した!……と行けば、
まことに目出度かったものの。
程なく、会社をクビに?
「ほほゥ?」
「ぐるぅ?」
猫がいれば、万事解決?
こころの病も消え失せて、毎日がハッピー?
そんな希望的観測が次々と裏切られてゆく展開に、
秀太さんは、
そして私たち読み手も呆然とします。
猫とは、猫と暮らすということは、
いったい……?
「それはァ~…ふふふッ!」
「がるるるぐる!」(←訳:永遠の謎かも!)
5つの短編から成る連作《猫》ものがたりは、
もちろん、愛猫家さんに、
動物好きな活字マニアさんにおすすめですよ。
全ニャンズの幸福を祈りながら、
ぜひ、一読してみてくださいね~♪