建物を建てて危険な場所の中で、
『 谷の出口の扇状地 』 っていうのは、
建築士の試験にも出てきます。
毎日ニュース映像で見る範囲では、
今回の土砂災害の現場の殆どは、
この 『 谷の出口の扇状地 』 のようです。
平常時は、緩やかな丘になっていて
見た目に良さそうな土地に感じるし、
開発もしやすいと思うのですが、
過去の土砂災害の跡が “ 扇状地 ” なんですね。
だから、その場所は土砂崩れがおこりやすい場所なんですね。
設計事務所の立場では、
与えられた土地に建物を計画することの方が圧倒的に多くて、
土地の選択から関わることは稀ですが、
過去に経験してきたことが生かされずに、
大きな被害が出たことは残念に思います。
『 モノを創るヒト 』 は、
それを見る相手に対して、
想定した結論 ( 結末 ) に向かって、
上手く気持ちを盛り上げさせていくような、
出来れば、
途中にドラマチックな気持ちの変化が起きるような。
そんなことを意識しているように思うのですが ・ ・ ・ 。
そんな作為的なことが嫌いな創り手でも、
受け取る側に対して、
いくらかの演出が効いていないと
過程の苦しみを理解されないんじゃないかと、
どこかにそんな不安が
感じられるものだと思うのですが ・ ・ ・ 。
奥さんが図書館で借りてきた本です。
また、私がさきに横取りして読んでやりました。
幕末から明治の話で、
面白く読んだのですけど、
読んでいる最中から、
初めに書いた創り手の策略や不安を感じませんでした。
モノスゴく興奮もしないけど、
飽きてくることもない、
調度のバランスの幅の中でグラフが上下している感じ!
今までそんな風に感じたのはありませんでした。
小説に限った話ではなくてです。
「 この場は感動したことにしておかないと
解らないヒトだと思われそうなので、
そういうことにしておきましょう ・ ・ ・ 」
なぁんてことが、あります。
不本意ながら
みんなホントにこの人の話で感動できるのか?
とか、
ホントにこれが美しいと思っているのか?
という具合に。
『 桂離宮 』 は、御殿もその他の建物も庭も、
全部のバランスの中で美しいと思っています。
( いえいえ、これは本当にそう思っています。 )
が、今まで見たどの本にも書かれているように
シンプルで、無駄を削ぎ落とした美しさ。
だとは思っていませんでした。
沢山の線や面が、とても複雑に関係し合っているし、
とっても作為的だとも思っていましたが、
世間がシンプルだと言うから、この際
シンプルということにしておいた方が良いのかと ・ ・ ・ 。
この本が、スッキリさせてくれました。
ある時代に、ある方向に誘導したいと考えた人たちが、
桂離宮の評価の常識をつくったというようなことです。
世界的に有名だった
建築家のブルーノ ・ タウトを利用したりして。
シンプルか作為的かの評価も、
時代ごとに変わっていると分析しています。
桂離宮の評価だけではなくて、
“ 常識 ” は、
時代の流れや誰かの意図で変わる
ということに注意しておきたいと思います。