山のあれこれ

山の楽しみのあれこれを紹介していきたいと思います。

初めての不時露営(3) (山で…その6)

2009-06-28 | 山想
…前進、目標は向かいの送電線の掛かる尾根

前方に続く幾重に続いた緑の山肌のヒダのひとつに降りてみることにした。落葉松の植林とスズタケの間をほぼ45度近い傾斜でスズタケの束に頼りながら降りていった。

すると、スズタケの根元からチロチロと小流れが湧きだしていた。スズタケの壁を押し開いてみると足元に幅30cmほどのの流れとなって下っている。今朝の冷え込みで霜で真っ白になった葉からパラパラと降り注ぎ、身体を濡らす。

ぐしゃりと鈍い感触で地の底に足が届いた。覗き込むとスズタケと灌木の壁と天井で覆われたトンネル状の空間だった。まもなく左手からも同じような流れが合わさる。

コンパスを見直して意を決して対岸のスズタケの壁の傾斜に突っ込むことにした。かけ声を掛けながら真っ直ぐに唯、頭上に突入していく。かき分けながらしばらく格闘。スズタケの暗がりに光りが見えてまもなく足元の傾斜が弛み、刈り払われた笹原の尾根に出た。雑木林を抜けると送電鉄塔(No.225)の脚元に飛び出した。

1973.11.3~4 西上州・南牧村観能より十石峠   

十石峠に掛かる送電線と地図に記載の無かった1446mに掛かる送電線とを見間違えて、1446m鞍部を目前にして日没時間切れ。雨具はポンチョ、ビニルの風呂敷と固形アルコールにアルミ製の猫茶碗、コーヒーを持っていた所から何処に泊まるつもりだったのか。寒かったけど晴れていて幸い。山日記には記入なし。

観能から三段の滝、ククリ岩、尾根続きに南下して1446m鞍部の送電塔(No.225)、十石峠(R299)より佐久側へ、馬返、本郷→羽黒下へ。 
                         (1973.11記)

 30年も前の秋の山旅の思い出。藪こぎと初めての不時露営。
                          
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初めての不時露営(2) (山で…その6)

2009-06-27 | 山想
…独りの朝

*山陰の向こうの空が、とうに紅をさしているのに、このイライラの時間。向かいの尾根が邪魔して、太陽の輝きを見せてはくれない。

*「きっと、小鳥達のさえずりを聞いて目が覚める」そんな思いは裏切られた。何故って、僕の声が彼らを起こしたようだった。

*夜の長さより夜明けの長さ

*昨夜の僕の寝床を見渡す。風よけの折れ傘、真四角なビニール風呂敷。ポンチョのシーツの上にはカラマツの落ち葉が散り撒かれていた。

*背後の山腹から暗闇がどんどんと引き剥がされていく。落葉松とスズタケの黄色と緑のコントラスト、朝の斜光はすでに朱色の世界を脱皮していた。

*あと残りの数100ccの水を使って熱いコーヒーを沸かそうとしたら、昨夜の残りがアルミボールの食器の底でシャーペットになっていた。

*ひとりでに身体がガチガチと震えてきてどうにも止まらない。独り大声張り上げて歌う、ようやく収まる。
(1973.11記)
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初めての不時露営(1)   (山で…その6)

2009-06-26 | 山想
…独りの長い夜のために

*一服の煙草が欲しくなった時間*一杯の酒(ウィスキー)が欲しかった*日暮れのギリギリまで寝床作りをやって、ギリギリまで食事の時間を延ばした*食後の一杯の熱いコーヒーをスプーンですくいギリギリまで時間を保つ。

*美しいというより、唯、いかにも冷たそうな星の瞬き

*静かで、遠くで風の音がして、それが、山裾をぐるっと回り込んできて、しばらくして、周りの枯れ木を鳴らして、とうとう、僕の寝床に吹き込んでくる。

*またたくまに日が暮れて闇が来た。しかし、真っ暗闇という表現は正しくない。木々が、星が、山々がうっすらと見えるのだ。こんなに月が明るいのだから。

*星空、冷たい夜気、ポンチョの内側に吐く息の水滴が、冷たく頬を濡らす。

*恐ろしいとか、寂しいとか、一体何を考えていた? ただ、寒いと思って縮こまっていた。

*不時露営、まさに相応しい言葉だ。ビバークという言葉の隅にチョッピリ描いていたロマンチックの片鱗もありゃしない。
                          (1973.11記)
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まず、名前を知ること   (山で…その5 より)

2009-06-24 | 山想
…名前を知ることが愛することの始まり…
またまた、キザな言葉を並べてしまった。これは雪の上に描かれた冬の小獣達の生活を書いた作家の文章だ。

そう、なにごとも名前を知ることから興味を持ち始めます。それはたしかに愛の始まりです。ミヤマキンポウゲ、ハクサンコザクラ、イワカガミ、、、道端に咲く名もない可愛らしい花達…。しかしこれでは、可愛らしいどころか哀れというしかない。先ず人間がいて、人が勝手に作り出した文明、文化のなかにあるのだから、名もないなんて失礼だし、単に自分が無知なだけだ。

層積雲、積雲、ひつじ雲、わた雲、ほれ、あのシュウクリームのような雲は、それぞれに名前があって、これだけでも愛着が湧いてくるからやはりそうなのだろう。愛すれば愛するほど、生き方、動向、性質…が知りたい。

愛すれば愛するほど、自分にとって不可解な点が少しでもあってはいけない。自分にとってそれは、自分と同じものでなければならなくなってしまう。どうしてもそんな気分になってくる。

こっばずかしい言い方をすると…名前を知ることが愛することの始まり…ということになるのか。
その、とっかかりは「まず、名前を知ること」。                                                                                 (1973.9.3記)

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妙高山(2)

2009-06-21 | 山行
6/21(日)笹ヶ峰キャンプ場の駐車場で朝を迎える。テント地を叩く雨音で目覚める。Lの話しでは、キャンプ場は開かれていて有名な高原のキャンプ場ライフを満喫できるというふれこみだったのに、いつもと変わらないスタイル。昨日の梅雨の晴れ間の一日は実にラッキーということになる。

12時間歩いた身体の疲れとたっぷり頂いたお酒の酔い残りで足元の浸水も気にならず、再び眠りに落ちる。雨音がやや静かになったのとカッコウの独唱が入れ替わる。ようやく、男達は重い腰を上げテントを撤収して売店の軒先に移動することに。Lはすでに、朝食の準備をしていた。

軽トラがやって来た。森林の監視員パトロール中とかの表示がしてある。小柄で笑顔のオジサン二人が降りて来られた。何でもここ、笹ヶ峰付近の「夢見平遊歩道を守る会」とのこと。地図と小冊子をいただく。ネマガリのこと、花のこと、四季の素晴らしさの説明に次はカミサンと来るかなと心を動かされる。

満腹の腹を抱えてお二人に教わった妙高温泉にて昨日の汚れを落とし、妙高山麓直売センター「とまと」で、山菜土産を買い込み1000円高速道で帰京した。

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