ここ久しく空を眺めなかった。昨日の豆台風が東海上に去った今日の空は素晴らしかった。全く暫く振りで大空を眺めた。
会社の屋上に仰向けに寝ころんで空を仰いだ。僕の視界がすべて青い秋の天になった。巻積雲のウロコがもの凄いスピードで頭上にさしかかる。もの凄いといっても、スピードが手にとる程ではなくて、高度1万数千メートルのウロコ雲と地球表面に過ぎない僕の目との距離である。
天の雲が岩礁にぶち当たる大海の潮のように、あの海の青から生じて、その青の中に散り撒かれる白い泡のように、その巻積雲は僕の視界を被っていく。天が静止して僕が動いているような錯覚。
秋の日差しは、まだまだ暑く僕の額からも背中からも汗が噴き出る。その時遠い爆音とともに小さな機影が視界の中に入ってきた。嗚呼、まさに大海の怒濤の中をさまよう小魚のごとく、双発の銀色の機体は小さく霞んでいく。なんという高さ、そして初めて、比べて分かるその大きさ。
その巻積雲はいつのまにか視界の片隅に行ってしまった。形を変えて絶えず蠢き生まれては消えていく超高々度の氷の集団。秋の午後の日差しに輝き、輝き至るところの、この白い輝き。
青い空と、白い輝き、
久し振りの大空でした、
久し振りの雲との出会いでした。(1971.9.27記)
会社の屋上に仰向けに寝ころんで空を仰いだ。僕の視界がすべて青い秋の天になった。巻積雲のウロコがもの凄いスピードで頭上にさしかかる。もの凄いといっても、スピードが手にとる程ではなくて、高度1万数千メートルのウロコ雲と地球表面に過ぎない僕の目との距離である。
天の雲が岩礁にぶち当たる大海の潮のように、あの海の青から生じて、その青の中に散り撒かれる白い泡のように、その巻積雲は僕の視界を被っていく。天が静止して僕が動いているような錯覚。
秋の日差しは、まだまだ暑く僕の額からも背中からも汗が噴き出る。その時遠い爆音とともに小さな機影が視界の中に入ってきた。嗚呼、まさに大海の怒濤の中をさまよう小魚のごとく、双発の銀色の機体は小さく霞んでいく。なんという高さ、そして初めて、比べて分かるその大きさ。
その巻積雲はいつのまにか視界の片隅に行ってしまった。形を変えて絶えず蠢き生まれては消えていく超高々度の氷の集団。秋の午後の日差しに輝き、輝き至るところの、この白い輝き。
青い空と、白い輝き、
久し振りの大空でした、
久し振りの雲との出会いでした。(1971.9.27記)