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イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

【シトロエンな話】拾った画像でシトロエンLN/LNA/VISA/C15/AXELまつり。

2010-01-15 | シトロエンな話。



シトロエンの話続きですみません。


ご好評いただいております、「まつり」シリーズですが、
今日はAXより前のPSA系小型車をお送りいたします...。




1970年代初頭に経営危機に陥ったシトロエンはプジョーに救済されたのですが、
その合併の「象徴」ともいえる車がLNでした。


1972年にルノー5、プジョー104が登場して、
フランスのモータリゼーションにもモダンな小型実用車の需要が確実に増えていた中で、
シトロエンは、1970年代ですでに旧態化していた2CV系(Ami、ディアーヌなど)しか
バリエーションになかったため、R5と104の好評を横目に見ているしかなったのです。


そんな中、1974年、前述の通りプジョーと合併したシトロエンは、
翌1975年、104クーペをベースにした新型車、LNを発表します。




これがベースになった104(セダン)です。
ピニンファリーナのデザインがすっきりしていてgood。
実際のLNのもとになったのは、これの2ドア版たるクーペでした。







で、これがLN。ベースの104クーペがハッチボディだったので、LN系もハッチ。



ですが、LNは急遽開発された車だったので、
エンジンこそ「シトロエンのソウル」のような2CV系フラットツインであったものの、
外観はグリルなどを除きほぼ104クーペのままで、
当時はシトロエンはこれから独自性を失ってしまうのではないか、と危惧されたそうです
(これは正直今でも言われ続けていることですが...)。



ですがLNは2CV系エンジンの持って生まれた類まれなる経済性とタフネス、
そしてプジョーの素性の良いボディ設計がかみ合って好評を博し、
1978年、エンジンを602ccから652ccへアップしたLNAに進化します。



その後、LNAは元来のベース車のエンジンだった104の水冷4気筒1.1Lも搭載され、
AXが登場したあとの1986年前後までラインナップされていました。
そういえばフランス行くとLN系ってやたら走っている印象があります...。
それだけ売れたってことですよね。





末期のLNA、11RE。BXなどのようなグレード名に萌え。



ieは2CV系のフラットツインが大好きなので、このLNA、並行輸入してでも
日本で乗りたい1台です。
この国ではレアということもありますが、
それ以上に、ブラジルで販売されていたフラット4搭載のVWゴルと同様、
近代的な箱型車体にクラシカルな空冷(しかもLN系は2気筒!)という
組み合わせに萌え萌えなのでございまして(^^;;



うーん、シンプルの極み!かっこいい!
ちなみにトップ画像はLNのダッシュです。内装もさっぱりしていて最高なのだ!




さすがにLN系のままでは自らの血脈...独自性が失われるとシトロエン自身が思ったのか、
LNのデビューから3年後、LNAのデビューの年に登場したのがVISA(ヴィザ)です。





VISAは2CV・ディアーヌの後継に属するポジションに位置するクルマで、
微妙にLN系とすみ分けてあります(VISAのほうが上。)
そのため、エンジンは2CV系のフラットツインを搭載したグレードだけでなく、
プジョー製水冷L4の1.1Lが搭載されたモデルが最初から用意されていました。



でも、VISAは、彼らがLNで内外装に手を出せなかった鬱憤を晴らすかのように、
見事なまでに「シトロエンここにあり!どうだッ!」という内外装を持って登場しました。


ご覧の通り、猫背でビッグキャビンのプロフィール、後輪のスパッツなどは
見るからにシトロエンであることを主張しています。





VISAは、1982年にフラットツイン搭載車が姿を消すのと同時に大がかりなマイチェンを行い「VISA II」となりますが、
それまでの初期型は「ブタ顔」と呼ばれるなんとも愛嬌あふれるブサ可愛いフェイス。見てこれ...かわいいなあ...(*^v^*





で、これがマイチェン後のVISA IIです。日本ではおなじみの顔?




 

大真面目にこういうデザインで、傑作車2CVの後継に位置するという
大事なポジションで売るべきクルマを出してくるシトロエン(というかフランス車)が大好きですw



内装も相当なもので、GS、CXでも使用されていたサテライトスイッチを「これでもか!」と採用、
ハザードなどのスイッチがステアリングの向こうにあるという突飛さ、ゴーグルのようなメータ、
姉貴分のGS・GSAの内装同様に、どうしてこういうデザインにしちゃうんだろう、
と極東に住む我々には頭に「?」がいっぱい浮かんでしまうほどに「キてます」よねw






ところで、シトロエンは現在WRCに参戦するなど、スポーツイメージも結構ありますが、
そのイメージ付けを最初に行ったのはよく知られて日本でも販売台数を伸ばしたBXのGTiではなく、
実はこのVISAなのが面白いです
(GSにもXシリーズなどスポーティモデルはあったのですが、
若々しいスポーツイメージを植え付けたのはこのVISAなのではないでしょうか)。


シトロエンは、ゴルフGTiの登場に端を発する「コンパクトスポーツハッチ」ブームにのって、
1982年、「VISA GT」を追加します。




GTは80馬力を発生する1.4Lツインキャブエンジンを搭載、スポイラーなどで外観を武装して
シトロエンらしからぬ一台登場!と、話題になりました。
なお、GTはVISA唯一の日本への正規輸入車でした。


ちなみに、VISAにも「GTi」が存在します。
なんと205GTiの1.6L(115ps)を搭載した「VISA GTi」がそれです。


外観は丸目4灯でとてもスポーティ...あのブタ顔VISAとはもはや別のクルマですね。
これはこれで凄くかっこいい...。






さらに、シトロエンの初物としてのVISAの顔がもうひとつあります。

シトロエンのグループBといえば「BX4TC」が真っ先に思い出されますが、
実はこれまたVISAがシトロエン最初のグループBのベース車でした。

それが、「クロノ」( Chrono )と、「ミルピスト」( Mille Pistes ) です。
エンジンはGTのツインキャブエンジンをさらにチューンして市販型では93馬力を発揮。
ミルピストに至っては駆動方式がパートタイム4WDでした。



これはクロノ。



そして。
LNAに続いてこのVISAも、後継のAXが登場したことで生産を1988年に中止。
ですが、2005年までVISAの血統を持つクルマが新車で買えました。
ピーンと来た方も多いかと思いますが、それが商用車の「C15」です。




C15は、ズバリ、ご覧の通り前ドアから後ろをフルゴネットボディ(AK/AZUっぽい)にしたVISAです。




内装はさすがにサテライトスイッチは持たないものの、時期によってはシトロエンらしい1本スポークのステアリングを持ち、
VISAっぽい「窓の下に張り付いたような」奥行きのないダッシュボードを持ちます。





これも並行輸入してでも日本で乗りたい1台ですねえ。

ちなみにエンジンは「C15E」が1.1Lガソリン、C15Dが1.9Lのディーゼル。
さすがにもし並行で入れても日本では前者しか乗れないでしょうが、それでも魅力的。
エクスプレスと同じ、小型車ベースのフルゴネットですから、
VISAで絶賛された乗り心地、直進性などを持っているのでしょうね。
こんなクルマで仕事が出来る欧州の方々がうらやましいー!



そして最後は、シトロエン アクセル(AXEL)です。

なんだこれ?な一台なのですが、これ、ルーマニアでシトロエンが製造していた「オルツイット(OLTCIT)」というメーカーのクルマなのです。
東欧の安い労働力に目を付けた一種の戦略車種でした。






基本コンポーネンツはフラットツイン、GS系のフラット4の空冷エンジンを
VISAをベースにしたシャーシに搭載。
ボディは3ドアハッチであるものの、外観はクーペ調でなかなかスタイリッシュ。
リアのスパッツ、猫背スタイルがシトロエンぽいのがステキです。


で、内装はまたまた「シトロエン設計」でないとありえない造形!
VISAよりも洗練されたこのダッシュボードを見よ!







そしてマークが面白い...「OLT(ルーマニアのオルト地方)」と「CIT(シトロエン)」の社名の通り、
オーと歯車の片方というシュールなデザインw




このアクセル、シトロエンバッジでも売られましたが、クオリティが低く
価格が低かったのに成功しなかったそうな...(とほほ




>>長文ですみません(大汗

>>ちなみに、プジョー104ベースで開発されたLNですが、
そのデビュー前にはシトロエンが独自のモデルを開発していたそうです。
それが「プロトタイプY」。
なんでも当時提携関係にあったフィアットの、127のシャーシをベースにしていたそうで。
どんなクルマだったのでしょうね、とても気になります。
結局PSAグループを形成せずとも、2CV後継車は何にせよ
独自シャーシでは出さなかったということなのですねえ。
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15 コメント

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最高です! (けんじ)
2010-01-15 09:17:07
LNやVISA系でここまで詳しいわかりやすい説明は初めて拝見しました!感激です~

以前はAX-GTにも乗っていましたが、VISAのなんともいえない表情にも惹かれるんですよねぇ~
返信する
ブタ顔 (zucho65)
2010-01-15 12:01:34
VISAはやっぱり初期型が好みで~す。

でも、LN、VISAともフランス本国にはまだ残ってるのだろうか...祈るばかりです。

「拾った画像」シリーズ、今後も期待してますね。

ところで、アクセルのダッシュ、キングジョーみたいに見えませんか?(年齢がバレる)
返信する
やっぱり初期顔 (しんパチ)
2010-01-15 14:05:33
VISAは、僕も初期顔が好きです。
バンパー下の開口部が、良い意味でお間抜け(笑)。

でも、今回一番刺さったのはアクセルですね。この素朴感、、いいな~
>キングジョー
僕も一票!
返信する
C15 (midori)
2010-01-15 17:29:29
C15。

同感です。平行輸入して欲しいです。
Visaもすきなのですが、醸し出す全体からみなぎる商用車的な印象がすばらしいと思います。だたのフルゴネットという以上に、バランスが良いんですよね。かなり秀逸なデザインではないでしょうか。
返信する
Unknown (代行ハミちゃん)
2010-01-15 19:41:48
●ORTCITのマーク

一瞬、どこかのアニメか特撮物に登場する
地球防衛軍のマークに見えてしまいました
返信する
萌え死ぬので勘弁してください(笑 (ぴより)
2010-01-16 17:44:20
嗚呼、水色のLN素敵過ぎる!!

なんともタイムリーすぎます。

C15大好きです。

ありがとうございました。
返信する
VISAは初期グリル (オクラ)
2010-01-17 00:10:20
VISA初期型のグリル一体バンパー、
ぜひ触ってみたいです。
やっぱVISAは初期フェイスがいいなぁ。
返信する
このへんのシトロエン最高です (ie)
2010-01-17 11:56:52
けんじさま>
>以前はAX-GTにも乗っていましたが
AX、いいですよねえ。あのサイズであのシート、
乗り味、シンプルさ!シトロエンの良さを凝縮していますよね。

zucho65さま>
>フランス本国にはまだ残ってるのだろうか...数年前には南仏あたりまでくだるとわらわら走っていました。
>「拾った画像」シリーズ
ありがとうございます。作っているほうも楽しいので続けたいです。
>キングジョーみたい
wwたしかに!!!

しんパチさま>
>今回一番刺さったのはアクセルです
ささりますよね。
あの当時のシトロエンが作ると東欧向けもこうなる、というその面白さ!
返信する
Unknown (ie)
2010-01-17 12:01:12
midoriさま>
>醸し出す全体からみなぎる商用車的な印象がすばらしいと思います
そうなんですよね...ベルランゴやカングーも魅力的なんですが
C15は中途半端な古さがなんともいいんですよね。

代行ハミちゃんさま>
>一瞬、どこかのアニメか特撮物に登場する
マークもしょぼくて...たまりません。
あんまり考えてない感がwww

ぴよりさま>
>なんともタイムリーすぎます。
巴里には数年行ってないンすがこのへんのクルマはまだ見られますか?
ああー、ブタVISAのほんものまた見たい!

オクラさま>
>ぜひ触ってみたいです。
へんなブロックパターンのでこぼことかあって、たまんないですねー!
返信する
ビザ欲しい~ (peugeot311)
2010-01-18 14:23:56
数年前、都内でもビザGTの売り物がありました。本当に欲しかったです。

プジョー104ZSクーペも魅力的だったりします。
返信する

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