Retrospective...

イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

【シトロエンVISA】ヴィザのインプレ2 「内装・シート」編。

2011-05-16 | シトロエンVISA GT。




さてさて、ほぼこの日本では絶滅してしまっているVISAゆえ、
「もはや何の役にも立たないインプレッション(涙)」の第二回目は、
予告通り、その奇異な内装と、気になるシートのお話をいたしましょう。



シトロエンVISA(ヴィザ)といえば、真っ先に思い浮かぶのが、
その内装...というか、インパネ(ダッシュボード)のデザインです。




ががーん。
コイツもレクチャーなしで運転出来ないw


シトロエンといえば「エキセントリックな内装」というイメージが強く、
とくにその印象を強くするのが、1980年台の同社車種に盛んに採用された、
一連の「クラスタースイッチ」です。


「PRNサテライト」と呼ぶこのステアリング周りの操作系のアイデアは、
CXからスタートし、そしてVISA、GSA、BX初期型(ボビン)、CXのシリーズ2へとつながり、
終焉を向かえます。
このPRNサテライトの中では、VISAは、それなりに重要な役割を担当していたともいえます。
それについては後述しましょう。

なお、「PRN」とは、
「Pluie = Rain(雨)、Route = Road(道)、 Nuit = Night(夜)」の略で、
すなわち運転に関連する操作系すべてに相当すると言ってよいでしょう。


それではVISAのダッシュボードを改めて見ていきますね。


■メーター
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まずゴーグルみたいな、もしくは四角い版赤塚不二夫のおまわりさんのつながった目のような
メーターが目を引きますね。




左がタコ。これは上位グレードのみで、通常は時計がビルトインされます。
右はスピードメーター。GTはいっちょまえに200km/hまで刻まれてます。
ちなみに、スピードメーターで100km/h以上に引かれた赤線は日本で入れられたものです。

真ん中は燃料計。加速とカーブで上下動が激しいですけど(笑)、
挙動が落ちついてから指し示す残量はまあまあ合ってるかなって感じです。
ただタンクが40Lしか入らないですし、このメーターの正確性もわからないし、
残量警告もないし、満タンするとなんだか吹き戻しそうだし、なので、
どうしても残り1/4くらいを切ると怖くて給油しちゃう。
なので、すごくこまめにガソリン入れてる気がして仕方ないですw


水温計は...ない!
オーバーヒートしたら、タコ左端のワ―ニングがついて、アウト!(涙
タコ下の右側は充電警告、オイル警告、ブレーキオイル警告灯。


なおこれ↓が、非GT系の「タコの部位が時計」仕様。
商用のEntrepriseなどになるともっと激しくて、ここには時計も付かず、
「CITROEN」って書いてありますw






■サテライト左側・上
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左の「茶筒」が、ワイパーとライト類の総合操作をになうゾーンです。

実はこれ、GSAと同じものです。VISAはGSAよりも早く登場しているので、
この茶筒、世に出たのはVISAが先だという以外な事実!
VISAがPRNサテライトの歴史で重要な役割を果たした、
というのは、GSA、ボビンBXにつながっていくダッシュボードの最初のモデルであるためです。





茶筒の上フタがワイパーです。フタを回す動作をします。
最初は律儀に5本指でフタを回すようにしてましたが、
やがてステアリング握りながら、指1本で回せることがわかって、
ああ、こりゃ便利だなって思いました。

0=停止
1=ロースピード
2=ハイスピード
0の横の縦棒位置=インターバル(ついてるの知ってびっくり!有り難い)

茶筒のフタ上の突起はフロントウインドウウォッシャーです。使ってないけど。



■サテライト左側・下
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そして茶筒下側。ライト類の操作系です。
これまたねー、良く出来てるんですよ。


0=off
マメ球マーク=スモール
ヘッドライトマーク=ロー
フタの下側に生える小気味よい操作感の突起スイッチをメーター側にオンでロー/ハイ切り替え

という操作がデフォなのですけど、
ここからが「にやり」とする部分なのです。2CVやBXボビンのオーナーの方ならわかるかと思うのですが、
この茶筒でいう「マメ球マーク」の位置で下フタ突起をオンにすると、
なんとロービームが点灯します。2CVでは、一回ライトスイッチを回して、奥に押す操作、
BXボビンでは、たしかスモールの位置にノブを下げ、一番下のスイッチをメーター方向に押す
操作がそれにあたるのではないか、と思います。


言われればわかるけど言われなかったら何もわからない操作系(でも好きw


これは、当時のフランスでは信号などの停車中には必ずヘッドライトをoffにしないといけないという
法律があったとのことで、
停車中のオンオフのたびにいちいちスモール/ローの切り替えに
スイッチやレバーを回すなどの動作をしなくて良いじゃんか、という
極めて合理的な理由によるものです(たぶん合ってるはず...)。

こういう設計見るとサブイボが立つわたしは変態ですが、何かw



■ウインカー
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そして、ウインカーはCXやボビンBXと同じく、シーソースイッチ。
茶筒の横に生えてる部屋の灯りのスイッチみたいなのがそれ。
ボビンのBXは猫澤君のでかなり乗ったので、その使い勝手の良さを思いだして感銘を受けました。
セルフキャンセルしない?それがなんだというのだ(笑



■サテライト右側
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で。今度は右の腕のような部分ですが、ここは空調の関連エリアです。
上が内気⇔外気導入のフラップ。
左端一杯にすると、フレッシュエアーが入ってきます。
しかもすごい量!これなら走行中、デフロスタの効きは期待できます
(ってまだ試す機会がなくて...)。
なお外気導入選択の際、ダッシュボード左右の吹き出し口からダイレクトに
外気が車内に入ってくるようになっています。


その下は、ヒーターの温度調整。左に向かうにつれ、温度が上がっていきます。


■空調吹き出し口調整
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で、空調の出口の調整はこのセンターコンソールにあります。

時代を感じさせる大きな灰皿(枠線のついたフタのような部分)の左側、
シルクハットと靴のマークの間にあるダイヤルが、デフロスタ⇔足元の切り替え。
中立位置でも止められますし、デフの位置でも、センターのフェイスレベルの吹き出し口から風が出ます。



そして右側の「+」「-」が上下についているダイヤルが、リアシートへの足元暖房吹き出しの選択。

でも実際にこのダイヤルを操作しても、灰皿下の吹き出し口から暖房が勢いよく出るだけで、
そのほとんどがシフトを操作する掌あたりにしか当たらない(涙
これじゃリアまで届いたとしてもおなぐさみだよ!っていう切なさがVISAっぽい(汗


なお、なんでこんなの(リアへの導風についてわざわざ訪ねる)がついてるかというと、
もとは空冷モデルもあるVISA、ただでさえ冬の暖房が弱い空冷エンジンゆえ、
乗員がリアにいない場合は無駄な暖房をすべて前席に集中させようとしたのではないか、
って推測してます。
たしかに空冷は水冷より暖房の効きは劣りますものね。


■ブロアファンスイッチとステアリングまわりのスイッチ
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ここまでは理解出来たのですけど、肝心の「ブロアファン」はどこにあるのだ!
いかにVISAの外気導入が優れていても、ヒーターファンがないわけないだろう!
でも正直、マニュアル見るまで見つけられなかった(汗





正解は、メーター下の5個並んでるスイッチの、右から2番目(わかるわけないw)
ほんとうは四つ葉のクローバみたいなファンのマークが入ってるはずなんだけど、
それが消えてるので、なおさらわからん!
1回押すとロー、2回押すとハイ。ハイって言っても風量、弱ッ(涙
もう1回押すとオフになります。


ついでにこのメーター下スイッチ類の説明をば。
左から、リアフォグ(死んでる)、ハザード、なんかの点検(なんだっけw)、
ブロアファン、リアデフォッガです。

ステアリングの奥には、さらに左側下にチョークノブ、
右側にはリアワイパーのウォッシャーとリアワイパースイッチが並びます。
なお本国にはステアリングコラムさらに左奥にヘッドライト光軸調整
(こんな小さな車にもついてるんだ!日本のミニバンは見習え!)があるはずなのですが、
1983年当時の日本の法規ではOKが出ず、ここは「パーキングランプ」スイッチになってます。
使わないよー!

ちなみに、これらステアリング奥のスイッチ類は、はっきり言ってぜんぶ使いづらいです(笑
たぶんこの反省で、GSAでは右側にも茶筒を付け、スイッチ類を集約したのだと思います!



やっぱりアヴァンギャルドさではGSAには敵わない(^^;


夜はスイッチそれぞれに通常状態では照明がつかないので、
車内が暗いと完全に手さぐりですw


ちなみにメーター照明は「赤いランプをメーター板に照射」っていうすごさ!


ほんとに赤いんですよ 暗室の赤い照明みたいな色(涙

しかも、この照明、すんごくすんごーくわずかに下側にも照らされていて、
これら並んだスイッチを照らしてるんですけど、イミねー!
ってくらい暗いんですw設計の段階で気づいてよw


そしてダッシュ右側にはなつかしや、サンデンのクーラーが...。
まあこの使い方は割愛しますね(^^;
効かせる時期になったらまたご報告します!


高級品、KAROのマットがついてきた!あと、このクルマ唯一のデジタルデバイス、デジタル時計が
シフトノブ前のちっこいコンソールにちょこんと付いてるのにも注目(^^;


ということで、やっと内装のレクチャー終了!ひー。




■シート
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やっとシートの話ですね(汗
古いシトロエンといえば、やはり気になるのはシート。
VISAのフロントシートは、はっきり言って、相当いいです。
まず、圧倒的に座面がやわらかい。でも、沈み込み過ぎないのもいいのです。
背もたれは座面にくらべたら沈まないですが、形状はかなりよく、
背中を微妙に押し戻しつつも猫背で座れて、肩の部分もすっぽり入ります。
ヘッドレストはCXなどにはおよびませんが、位置も良いです。


シートに刻まれた線の入り方とかもいいねえ


むかしのフランス車らしく、浅く腰かけても、深く腰掛けても、
背もたれをおこしても、倒し気味にしても、そう、どんなポジションで座っても、
どこも身体に痛みを感じさせません。
ウォーターベッドのような柔軟性で、「この座り方以外ダメ」というシートと対極にある
ようなシートなのです。
これがこんな...しょぼめの、30年以上前に登場した大衆車クラスに備わっていた
(同じクラスのサンクもむろん、猛烈にシートがいい)
わけですから、どうやってもいまでさえ日本車が敵うわけが無いのです(涙


ところで、座った感じですが、同時期のシトロエン、GSAとも、CXとも似て非なる座り心地。
この2者...GSA、CXもまた非の打ち所のないシートですが、
背もたれも座面も一体的なサポートをする2者と違い、
印象として座った時の感じがチャールストン系の2CVのシートっぽいです。



■ダブルフォールディング出来るリアシートとトランクスペース
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VISAはなんと法規上4人のり!
いっちょまえに50:50のダブルフォールディングシートをします。
さすが実用小型フランス車。荷物を積ませることに容赦が無いですw

クッションもまえのシートもかくや、というふかふかなシートで、
背もたれが低い以外はこれまた姿勢の自由度も多く、座り心地はかなりいいです!




むろん、ダブルフォールディングすると、かなり広めのトランクスペースが出現します。


きっとむこうの人はこうして畳んでなんでもこのVISAで運んでしまうのだろうな(^^



トランクスペースは3.7mの全長を考えるとそこそこ。でも底が浅いのです。
って写真は無いのですが(汗


ちなみに、さすがに設計の古いクルマなので、バンパーレベルからは開きません。
なのでリアランプがこんなに低いところにあるんですね(笑


モデルは本人ですw


■おまけ
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ノンパワーウインドウのクルマも散々乗ってきたのですが、
このVISA、その手回しハンドルにすごく違和感があって。
固いとかそういうのではなくて...それが、ふつうと逆回転なのです!
なのでとっさの時、いつも閉めたり開けたりに迷います(涙




ということで、ぜんぜん短くまとまらなかったのですが、内装・シート編をお送りしました。
これであしたから説明なしでVISAに乗れます!(大汗


ところで...どうでもいい豆知識なんですが、
実はVISAは1985年からこの「PRNサテライト」を捨て、
こんな「ふつうの」ダッシュボードになってしまっているのです、
生産が終わる1988年までと、VISAバンたるC15に関して。




VISAは外観からして十分シトロエンらしさを持ってるのですが、
内装がこの「ふつうの」になるだけで、
一気にVISAの魅力が下がってしまうような気がしてしまうのは自分だけでしょうか?
C15ならこのダッシュボードもいいんですけどもね...。




>>この独善的ともいえる設計と発想ですが、
でも操作すると、ほんとうにこれがまあ使い勝手がいいのです。
デザインや設計だけが突飛でなく、遊び心と機能性、デザイン性が
すべて、極めて高いところで融合してるのが、フランス車のすごいところ!

>>なので最近のC4やC5のセンターフィックスステアリングの操作系を見たときは
「これぞシトロエン」って思ったんですよね。
操作するレバーやスイッチのデザインの差異による独自性ではなく、
そもそも操作方法そのものが違う、というあたりに強くシトロエンらしさを感じたのです。


>>ゴーグル状のメーターナセル、VISAのダッシュ画像は当時からずっと正面向きばかりのが多く、
「浅い」って思っていたのですけど、
現車見てびっくり。

...こんなに奥行きがあるんだ(笑


>>四角いメーターナセルが長ーい!


>>いつ、この「キてるデザイン」を知ったのか忘れてしまったのですが、
少なくとも15年以上前から、「これはやばいのではないかw」って思っていました。
まさかそのダッシュボードを操作出来る日が来るとは(涙




コメント (28)
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