向田邦子ドラマ「阿修羅のごとく」より。

今すぐ結論出しなさいとは言わないけど、私ね、あの人・・・


姉さん・・
もしお兄さんが浮気して・・・例えばの話し。
その時、国立、帰る気する？
私・・・今の家、帰るの辛いなぁ・・・
お父さんは８年も前から他に面倒見てる人がいるわけでしょう？
お母さん、それ知ってるのに、一言も口に出して言わないで、なんにもないような顔して暮らしている訳でしょう？
そんな中へ入って、私、一緒にご飯なんか、とっても食べらんないなぁ・・・


どっちにしても私は別れたほうがいいと思うなぁ・・・
まだ籍も入ってないわけだし。
ホント言うとね、私、ボクサーって聴いた時から「危ない」って気がしたの。


「危ない」って？


寿命が短いでしょう？
３０過ぎるとできないじゃないの。
チャンピオンになるにも何千人に一人、宝くじに当たるようなもんじゃない。


私、子どもの時、宝くじに当たったことあるわよ？


私ね、絶対、チャンピオンになるとわかっていても、あの人はイヤだな。
今日のやり方ひどすぎるわよ。
ラーメンだけとか、女の人だけとか、ねぇ？
そりゃ、百歩譲って、まだ勘弁できるわよ。
でも、ラーメンと女の人と両方よ？


あの・・・ぉ、オレ・・・、ねぇ、、うん・・・、うん、いいや。


なによぉ・・・


えへへへ、いいんだよ。


なによぉ・・・言いかけて・・・やよ。


やめとくよ。


言ってくださいよ、気になるわ。


うん・・・あのぉ・・・あのさぁ、女引っ張り込んでたんだろ？
あのぉ・・・ドテーーーーンとデカイの。


うん、こーんな。


なぁ？
手口も足口も太くてさ、あのぉ、なんか、もわーーーーんとしてるの。


しゃべり方もゆっくりしてるの。


う・・・ん、うん、いや、気持ち、わかるような気がするんだ。
いやいや、あの・・・、コイツのな。（←ボクサーのマネ）
怒るかもしんないけど、サキちゃんみたいに気使われると、男はツライんだよ。
割り切れないの。


いや、でもねぇ・・・


うん？


でもねぇ？


いや、あの・・・、まぁさ、あの・・・まぁ、聴けよ。
あの・・・例えが変だけどね？小説家がまわりにいないから想像で言うんだけども、いや、その男がさ、一生懸命原稿書いたとするよ。
で、女房が、後そっと読んでさ、間違い直されたらどんな気するかなぁ？
もう、それから、そいつ、ビビっちゃって、小説書けなくなっちゃうんじゃないかなぁ？
っていう、まぁ、そういう気がするんだよ。
で、男がいくら汗水垂らして苦しんでもだよ？
女房はそんなこと知らん顔でこう鼻提灯で寝ちゃってるんだよな？
で、そういう女房のことをその亭主は「バカだ」とか「ドジだ」とか悪口言うよ。
で、言いながらこう・・・ホッとしてるんだよな。
先回りして気使われるより、男は休まるんだよ。うん。


だからって、お腹すかして目回してるっていうのに、ラーメン食べて浮気してもいいってことは・・・


いやいや、それは、それは確かに悪いんだよ。
いや、悪いんだよな・・・
でもそういう時の男の気持ちってのは・・・理屈じゃなくてそういうもんじゃないかな・・・って話・・・



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あの、ほら、キレイな人って、こっち（頭を指で指す）ダメでしょう？
大体そうよね。
いや、違う人もいるけど。



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気持ちがイジケて・・・





気持ち的には「阿修羅のごとく」＜「あ・うん」のオバチャマですがね。