ねーさんとバンビーナの毎日

「静」→ 「淡」→ 「戻」→ 「無」→「休」→「解・涛」→「涛・停」→「抜」→24年「歩」 最終章序章スタート!

毛利元就より。その4

2009年09月09日 08時36分00秒 | 考えるねーさん
「表裏者ととられませぬか」

「表裏者ととるか、とらぬか…。それは相手の器量次第。小国の駆け引きの辛さ、口惜しさがわからねならば語るにたりぬ」

「わかりました…」

広良は、改めて一礼し、思った。

(俺より二十歳も若いといいながら、かなわぬな…)

志道広良の手紙で、休戦のための和議を結ぶと知らされて、陶興房は、

「しぶとい男よ。若いのに大ずる者めが…」

と、舌打ちするようにいったが、顔は笑っていた。

「それも結構。しぶとくなければ、この乱世に家は保てぬ。小ずるであろうと大ずるであろうと、必至で家を守ろうとする人間でなければ信用できぬ。小ずるい男は目先の利に惑わされやすいが、大ずるは十年先二十年先を見ておろう。当方が誠意を尽くせば、元就はそれに応える男よ」

尼子方の謀報機関は、志道広良と陶興房、すなわち毛利と大内の接触をただちに掴んだ。掴んだということを、元就も孫助の報告で掴んだ。

「久幸よ…」

尼子経久は、最も信頼する弟の尼子久幸にだけ心をゆるして嘆いた。

「元就はなかなかの男とは思っていたが、いま手元から離れかかってみて、得難い男とわかった。相合元綱の一件、わしの生涯でも大きな失態となりおった…」

安芸の国で、尼子の与党一色の中で、ぽつりと毛利が色を変えようとしている。それは枯れ野に灯火を置いたように、経久しには思えた。油ぎれして消えるかもしれない。油ぎれのまえに枯れ草に火がつくかもしれない。

経久は、火がつきそうな気がしてならなかった。『元綱、病死いたし候』といってよこした元就のそのときの心中を、経久は改めて思いやるのであった。




表裏者と取るか取らぬかは相手の器量次第、ほんにまぁそういうこと。

「損得のポリシー」や「守りのポリシー」が一致する者同士は、巧みに裏読みしながら、人を計算ずくで謀らずに、つかず離れず関係は続くものですや。
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