犯罪課の一室。ジフキン、刑事コンビ。
(・・・・ジフキンと話していたのは弁護士かな?)
「これからは12時間は、俺たち3人だけだ。
フランスの刑事訴訟制度に詳しくなれるぞ」
「怖くはない。私は、何もしていないんだから」
「俺にも息子がいる・・・
親に捨てられたら、どんなに苦しむことか・・・」
「耐え難い苦しみだ」
「隠れ家を転々とする生活を送ったんだろ。それで喘息になった」
「私に喘息はない」
「本当に?赤ん坊の頃も?」
「ああ、私は丈夫な子だった」
「じゃ、家族の誰かが喘息では?」
「いや、皆健康だった。
ナチスさえいなければ、両親は今も生きていた」
「・・おかしいな・・・
ラビのカバンに治療薬の粉末があった、
そしてこれは小さな子が使う吸入器だ。
ラビの息子は、喘息だった」
「ウソだろ。ワナだ。証拠のねつ造だ」
「カバンの中身は、記録されている。
DNA鑑定によると、吸入器の使用者と手袋の持ち主は親子だ」
「悪いが、あんたはラビの息子じゃない」
「ウソだ・・・証拠がある・・・その財布の中だ・・・
(財布から写真を出しながら)
・・・うちの親を迫害した国が、私まで苦しめるのか・・・
(写真を見せ)子供の頃から持っている写真だ。
これを携えて、フランスを出た」
「当時は混乱してた。写真を間違えたんだ」
「違う!
1966年にユダヤ人団体が、パリ市から記録を取り寄せた。
それでも、証明されている」
「1966年当時の資料は、間違えだらけだった。
だよな?バヤール」
「・・・氏名のミス・・・出生地の間違い・・・
1985年に訂正されて、電子化もされた」
「今では正確な記録が手に入る・・・ショア記念館でな。
行ったことは?」
「ない・・・私は間違っていないんだ・・・」
「ここから10分だ。今から連れて行ってやる」
「その必要はない」
「何を恐れている?ジフキン・・・」
自動車でショア記念館に向かう3人。
不安気なジフキン。窓から見える景色に・・・不安が増す・・・
到着。雨の中、記念館に向かって歩き出すが・・・
途中で歩くのを拒否するジフキン。
「お願いだ・・・中に入りたくない」
「いいのか?」
「ああ、自分が誰かは分かっている」
「じゃ、行こう」
「もう私に構わないでくれ」・・・座り込んでしまうジフキン。
「じゃ、ここでいい」
一枚の紙を取り出すジョー。
「今朝、中で調べた。ラビ一家がたどった運命だ。
ここに真実がある(紙を広げながら)読め」
「イヤだ。読まない」
顔をそむけるジフキン。「・・・帰りたい」
立ち上がろうとするが、マークに押し戻され、再び座り込む・・・
紙に書かれている文字を読み上げるジョー。
「ヴァルテール・ジフキン、34歳。
1943年、ビルケナウ収容所で死亡。
(耳を塞ぐジフキン。目を閉じ、全てを拒否するかのように・・・)
ウルスラ・ジフキン、31歳。
1943年、アウシュビッツ収容所で死亡。
ダヴィッド・ジフキン、2歳(手で顔を覆うジフキン。視線はジョーへ)
急性の喘息発作で死亡。1943年。場所はセーヴルの養護施設だ。
あんたは別人だ。燭台の所有権もない。殺人は無駄だったんだ」
「・・・そんな・・・じゃ、私の行為は・・・」
「あぁ、無意味だったんだ」
「・・・燭台の在りかを知りたければ、金を払えと言われた。
(ジフキン、ジョーを見上げながら)
・・・・長年、両親の遺品を捜してきた。
やっと見つけたのに・・・あの女が邪魔を・・・
女を壁にたたきつけた・・・何度も何度も・・・
・・・・そんな・・・すまなかった・・・悪かった」
ジフキンを立ち上がらせる2人。そして自動車の方へ。
「・・・私は、どうなるんだ?
・・・・父はヴァルテール・ジフキン・・・私はラビの息子だった・・・今はもう・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・感想は次で