亡くなる

介護施設で、ひっそりお亡くなりになっているおじいさんがいました。
その人は、「自分は１００才で、５歳から商売をやっている。」というのがうたい文句です。
本当は、９４才で、５歳から商売なんかできるはずはないのです。
大ぼら吹きです。

でも、亡くなってしまったら、もう面倒なことがなくなります。
その人は、いつも酸素の機械で生きながらえていました。
どこへ行くにも酸素の機械が必要で、本当に邪魔くさい人でした。
それが、いつも私の担当に当たるんです。
私はいつも、車いすと機械を両手で押して中腰で歩くことになります。
亡くなってくれて、本当にありがとう。と、言いたくなります。

「次は、あの人よね。」と、いつも食事になると、誤嚥を起こす人を言います。
いつも食事をさせるのに苦労をすることになります。
邪魔くさい人は早く死んでくれて、楽な人ばかりになるといいなぁ。と、思います。

まあ、一応は、悲しむ振りをしたのですが、５分後には忘れてしまうほど薄情な人間だったんです。私は。