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イタリアより

滞在日記

オートラント大聖堂その4 .

2023年05月25日 | オートラント

右通路側のモザイク画

ギリシャ神話の

天を担ぐアトラス

オリンポスの神と戦って敗れ

世界の西の端で天空を支える罰を科せられた…

そんな頑張っているアトラス

2022.12.23撮影

床一面に描かれたモザイク画は、「Il racconto del 'libro di pietra'」/石の書の物語と定義され、実はとても意義深いメッセージが発せられていました。

そもそもロマネスク時代の芸術では、教会の床は地上に於ける、意識に浮かんだ姿や像を聖堂に捧げる空間とされていて、それがゆえに製作者のパンタレオーネは、中世の動物寓話にヒントを得、現実の動物はじめ、幻想的な生き物や、騎士道文学、神話、更には英雄たちをも描いたようでした。

中央身廊に描かれた

グリフォンにまたがるアレキサンダー大王

パンタレオーネは、アレキサンダー大王の姿を借りて、

「誇りと傲慢」を語っているのだとか

大王はグリフォンを操って

天空へ昇ろうと企てているらしい

両手に持つのはグリフォンへの餌

『ほれほれ肉をやるぞー

だから私を連れて天へ飛んでいけ』みたいな…

2022.12.23撮影

勿論、モザイク画には旧約聖書の登場人物やそのエピソード、預言者や天使や悪魔までもが登場します。しかし、本来歩くための床には、土足で踏みつけることになるキリストや聖母など​​の宗教上の人物は再現されていない…。決して無節操に描かれている訳ではないモザイク画。このことは、心を打ち妙に腑に落ちた思いでした。

聖堂内部の構成/サイトより

こうして見ると

モザイク画は

まるで聖堂に敷き詰められた

絨毯のよう

余談

忘れないうちにちょっとした注意事項を…午後3時、聖堂の扉は開けられはしましたが、と同時に係の人が聖堂の床掃除をし始めました。左通路からそれはそれは丁寧に。そのために左側のモザイク画はなかなか見ることが出来ず。仕方なく地下のクリブタへ降りましたが…戻って来てもまだ掃除中。

ここからは独り言…「オープン前に掃除は済ませておきましょうネ」…ってここはイタリアでした。開館してすぐは、こんなことがあるので、聖堂に入るのはお掃除の済みそうなオープン一時間後くらいがいいかも知れません。もっとも、何かの都合で今日(2022.12.23)だけのことだったかも知れませんが。

午後3時、係の人が車でやって来たけれど…

-続く-

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オートラント大聖堂その3 .

2023年05月23日 | オートラント

木製の

キラキラの天井

八角形や十字形の文様は

純金メッキが施されている

2022.12.23撮影

床のモザイク画とこの天井の模様の

アンバランスさに

上を向いたり下を見たり

頭が上下に振れました

2022.12.23撮影

そもそもこの聖堂は、古代ローマ時代、ドムスと言われるやんごとなき人の住居の跡地、あるいは初期キリスト教の教会か寺院の遺跡に建てられたものらしく、ウキペディアと公式サイトによると、ルッジェーロ治世の元、1068 年ノルマン人の司教が設立したのだとか。

その建築様式は、ビザンチンや初期キリスト教はじめ、ロマネスクの要素を含む統合型。11 世紀にノルマン人が到来するまで、この地は数世紀にわたってビザンチン人に支配されていたというから、こうした、いわゆる「文化の融合」もうなずけます。

かろうじて通路側の壁に残っているビザチン時代の「聖母子像」のフレスコ画

2022.12.23撮影

その後、数百年の間に改築が繰り返されて今に至るのでしょうけれど、恐らく、むき出しになっている両サイドの12本のアーチの壁には、旧くはキリストにまつわるようなフレスコ画もあったのだろなと、そんな想像を巡らせました。

又、この大聖堂は、むごたらしい虐殺の現場でもあって、800人にも及ぶ殉教者を出したのだとか。1480年、オートラントに攻め入って来たオスマントルコ軍は、よりにもよってこの聖堂に避難していた女性や子供たち、そして聖職者らを皆殺しにしたというのです。まさしく神をも恐れぬ所業…

イタリア半島最東端に位置するオートラントは、エルサレムに向かう巡礼者が立ち寄る聖地でありながら、こうして大いなる戦禍を招く地でもあったことに改めて気付くことになりました。

長椅子が並んでいなければこんな風に…

公式サイトより

さてモザイク画の続きですが、この混とんとした摩訶不思議な絵柄にも、実は製作者パンタレオーネの深い思いがありました…モザイク画を幼稚だなんて…すっかり恥じ入ってしまいました。

-続く-

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オートラント大聖堂その2.

2023年05月21日 | オートラント

三々五々

見学者たちは集まって

午後からの開館を待つ

もうすぐ午後3時

2022.12.23撮影

結局、2時間近くの列車の遅延によって、午前中の入場は出来ず、午後からの開館を待つことになりましたが、その合間を縫って町の散策が出来たのは良かったです。コロナ禍の影響で閉店しているお店も多かったものの、海辺に面したレストランでゆっくりとランチが摂れたのは幸いでした。

それにしても、聖堂内の床一面に、小さな石を埋め込んで描かれた旧約聖書の物語…公式サイトには、「イタリアで無傷のまま残っている唯一のノルマン時代のモザイク床」と記述がありますが、確かに、ロマネスク様式の古いお堂で、こんなモザイク画が床一面に施されている聖堂や教会は見たことがありません。

椅子がなければなぁ…全体が見えるのに

2022.12.23撮影

入場して残念だったのは、堂内椅子が置かれている為に、モザイク画の全体を見ることが叶わなかったことですが、それでも聖書に無縁な私でも分かる場面やストーリーが描かれていて、そうして、何とも稚拙というか幼稚というか、ユーモラスな絵柄には、「わたしでも描ける~」などつっこみどころが満載で愉快な気分にもなりました。

正面入り口のモザイク画には

製作者と依頼者の名前がラテン語で記されている…

来館者への ❛名刺代わり❜ だとか

このモザイク画は、恐らく字の読めない信者たちにも理解できるよう、聖書のストーリーや伝承を床に描いたのだと思いますが、例えばアッシジの大聖堂に見る壁画のようにキリストの生涯を順を追って展開するというような、誰が見ても分かる構成からは程遠く、何だか混とんとしています。が、Il pavimento della Basilica è un pavimento “parlante”,と説明があるように、この大聖堂の床は、「話す床」、いわば「画像の中世百科事典」と定義されるのだとか。

入口左端っこに目についた強そうな女性の像

ギリシャ神話に登場する

勇猛果敢な女性戦士「アマゾネス」

成程!

2022.12.23撮影

製作者は修道士パンタレオーネ。1163 年に当地の大司教ジョナータに依頼され引き受けたのだそうですが、このモザイク画の「彼の意図は、兄弟たちが修道院で教え、学んだことを画像で再現すること」なのだとか。2年の歳月をかけて、たった一人で仕上げたというから驚きです。あんな小粒の石で、それこそコツコツと。。。

「アマゾネス」に射抜かれた鹿…

ん?

ギリシャ神話?

-続く-

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オートラント大聖堂その1.

2023年05月19日 | オートラント

オートラント大聖堂

2022.12.23撮影

結局午前中の見学は出来なくて…

※我が町に伊首相メローニさんが来ています。ちょっと触発されて、2022年の旅日誌を今少し…

■2022年12月23日

2019年にシチリア島の華やかなノルマン・シチリア王国を垣間見たのち、その足取りをもう少々たどってみたくなり、プーリアに足を向けました。

ルッジェーロ二世が築き上げた王国は、彼の孫であるフェデリーコ二世へと受け継がれはしたけれど、しかしその栄耀栄華も永遠ではありませんでした。奇しくもノルマン・シチリア王国は、プーリアに於けるフェデリーコ二世の死をもって終焉へと向かっていく…この地でそんな思いにも駆られてちょっと切なくなりました。

大聖堂ファザードのバラ窓

それでも、プーリアで彼が改築した城や要塞は100以上にも及び、そこかしこに足跡がありました。その一つがオートラントにもあって、そうして聖堂内の床一面に鮮やかに描かれたヨーロッパ最大級のモザイク画も合わせて見るべく、当地に足を延ばしたのでした。道中、アクシデントに見舞われはしましたが、無事に目的を完遂出来て良かったです。

聖堂前の表示板

聖堂の開館時間

11月、12月そして1月は

午前:08時~12時

午後:15時~17時45分

前述した列車の遅延がなければ、午前中に見学出来たのに…

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❝笑って受け入れる❞ in オートラント

2022年12月24日 | オートラント

オートラントの風景

今日も晴天でした

レッチェから更に南下して、ヨーロッパ最大のモザイク画が見られるというオートラントへ行ってきました。目指すは、そのモザイク画が床一面に広がる大聖堂、正式名称「サンタ・マリア・アヌンツィア大聖堂」です。

公式サイトから、午前中は正午まで開いているという情報を得ていたので、その時間に間に合うようにレッチェを9時に発車する列車に乗りました。オートラント到着は10時39分です。遅れを見込んでも、12時までには聖堂に着くと見込んで。

オートラントの町のメインストリート

実は、この路線の評判は芳しくありません。南イタリアを旅する誰もが一様に「当てにするな」と忠告を発するため、少々不安も抱きながらの旅程でしたが、レッチェの駅の窓口で切符も買えたし、ホームもすぐに分かった、予定時刻ピッタリにやってきた列車は定刻通り発車したし、な~んだ~案ずるより産むがやすし、いや、この列車の運行会社もきっと心を入れ替えたに違いないと、すっかり安堵した私なのでした。

見飽きない景色でした

オートラントに行くには、この酷評されるFerrovie del Sud-est/スド・エストというローカル線を利用するのですが、通常、目的地のオートラント駅に到着するまでに二度の乗り換えがあります。その接続がよくつまずいて、この路線の乗車時の難易度をあげているようなのですが、果たして…

~とかなんとか

最初の乗換駅「Zollino/ゾッリーノ」にて

もう1時間半以上待っていますが、乗り換えなければならない列車が来ないのです。ちなみに上記の写真の人たちは、レッチェから一緒に乗車してきた人たちですが、全員赤の他人です。共に困難に陥った時、こんな風に妙に連帯感が生まれる…この状況下、横で私は、旅の鉄則「命に関わらなければ、全て笑って受け入れ」ています。顔を引きつらせながら…あー聖堂が閉まってしまう…

コメント (2)
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