民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「豆腐とこんにゃく」 リメイク by akira

2012年09月15日 09時38分53秒 | 民話(リメイク by akira)
 「豆腐とこんにゃく」   元ネタ 福島さすけね(You tubeあり)

 むかしのこと。

 あるとこに、友だちの豆腐と蒟蒻(こんにゃく)がいたと。
豆腐ってのは、白くて、やっこかんべ、こんにゃくってのは、黒くて、かたかんべ。
この二人、まるっきり、違うのに、どういうわけか、仲がよかったと。

 ある時のこと、豆腐のヤツ、台所の上から、足、滑らして、床に落っこちまったと。
そんで、元の形もねぇくらい、ぐっちゃ ぐっちゃになっちまって、入院したと。

 それを聞いて、こんにゃくが 見舞いに行ったと。
べったり、くったり、べったり、くったり、尺取虫みたいに、歩いて行ったと。

「おい、豆腐どん、ケガしたんだってな。・・・だいじょうぶか?」
「よー、こんにゃくどん、来てくれたんか。
つい、滑って、落っこちまって、このありさまだ。
もう、痛くって、痛くって、参った、参った。」

 こんにゃくが、あまりの痛々しさに、かける言葉もなく、下向いてると、豆腐が言ったと。
「おめぇはいいよな、丈夫なからだ持ってて。
落っこちても、オレみてぇに ぐっちゃ ぐっちゃに なんねぇもんな。」

 それを聞いて、こんにゃくが言ったと。
「いや、いや、そんなことねぇ。
オラにだって 人に言えねぇ苦労があんだ。
「うん?・・・おめぇの苦労ってのは どんなんだ?」
「それはな、オラが台所にいると、みんな、オラのこと見るたんび、
「こんにゃくぅ、こんにゃくぅ」って、言うんだ。
「ああ、今夜食う」って、オレは 今夜食われんのか、
短い命だったな、って、切なくなるんだ。」
って、こんにゃくのヤツ、エーン、エーンって泣いたと。

 赤ん坊が、腰にあてがっている、白い布、何だ?・・・「おしめ!」・・・そう、おしめぇ。

「しゃべる しゃもじ」 リメイク by akira

2012年09月03日 00時24分01秒 | 民話(リメイク by akira)
 「しゃべる しゃもじ」  元ネタ「尻なりしゃもじ」 笠原 政雄 「日本の民話 5 甲信越」

 今日は「しゃべる しゃもじ」って ハナシ やっかんな。(ワーイ)

 オレがちっちゃい頃、じいちゃんから 聞いたハナシだ。(フント)
ほんとかうそか わかんねぇハナシだけど、
ほんとのハナシだと思って 聞かなきゃなんねぇ。(フントコショ)

 むかし、あるとこに、なまけもんの 男がいたと。(フント)
この男、いっつも「楽して 儲かる方法 ねぇかな」なんて 考えてる男で、
もう 嫁さん もらっても おかしくねぇ年だったんだけど、
そんな男なもんだから なかなか 嫁の来てが なかったと。(フントコショ)

 ある時のこと、「初夢が 一番 正夢になる 確率が高い」って 聞いて、
男は 正月の二日が来んのを 首を長くして 待っていたと。(フント)
(初夢ってのは 正月の二日に見る夢のこと、正夢ってのは 夢がほんとになることだ)

 やっと、待ちに待った 正月の二日が来て、
男は(いい初夢が 見れますように)って、願をかけて 寝たと。(フント)
(なんせ 一年に一回しか チャンスがないんだから 男も必死だ)
 そしたら、垣根のてっぺんに しゃもじがのっかってる 夢を 見たと。(フント)
変な夢 見たなって、思いながらも、朝 起きて 垣根に 行ってみると、
なんと 垣根のてっぺんに しゃもじが のっかっていたと。(フントコショ)
(おっ、夢で見たのと おんなじだ)って、手に取って、
(はて、なんか 特別なしゃもじなのかな)って、じろじろ 見てみたが、
どう見ても 普通のしゃもじにしか 見えないんだと。(フント)

 そのうち、なんかの拍子に、しゃもじで ほっぺたを なぜてみると、
「オタビト タビト、オタビト タビト」って、ほっぺたが しゃべりだしたと。(フント)
「あれ、どうしたんだんべ?」
ほっぺた さすったり つねったりしてみても、おしゃべりが 止まんねぇんだと。(フント)
「あちゃー、・・・こりゃ 大変だ」って、言ってるうちに、
なんかの拍子に しゃもじの裏っ側で なぜてみると ピタッっと 止まったと。(フント)

「あれっ」って、思って、もう一回 しゃもじの表っ側で ほっぺたを なぜてみると、
「オタビト タビト、オタビト タビト」って、また しゃべりだしたと。(フント)
そんで、しゃもじの裏っ側で ほっぺたを なぜてみると ピタッっと 止まったと。(フント)
(そっか、表っ側でなぜると しゃべって、裏っ側でなぜると 止まるんだな)
こりゃ、おもしろい しゃもじだって ながめながら、
(さて、なにに 使うかな?)って、考えてっと、ハッと ひらめいたと。(フント)

 暗くなるのを待って、男は 村一番の 長者さまの家に 行くと、
便所のくみとり口の ふたをあけて、中に 入ったと。(フント)
 そこで しばらく 待っていると、長者さまの ひとり娘が 入ってきたと。(フント)
んで 娘がしゃがんで 尻がむきだしになったところで、
しゃもじで 娘の尻を ぺろって なぜたと。(フント)
すると、娘の尻が 突然、
「オタビト タビト、オタビト タビト」って、しゃべりだしたと。(フント)
娘は びっくりして 寝床にかけこむと、ふとんかぶって 泣き出したと。(フント)

 次の日の朝、娘が起きてこないので 長者さまが 心配して 見にいくと、
「オタビト タビト、オタビト タビト」って、しゃべる声が聞こえるんだと。(フント)
「誰だ、変な声でしゃべってんんのは」って、長者さまが聞くと、
「お尻が しゃべりだして 止まらなくなっちゃったの」
娘は 恥ずかしそうに 言うと また 泣き出したと。(フント)

 さあ 長者さまは(大事な)娘が とんでもない病気になったと、 
あっちこっちの医者に 声かけて 来てもらったが、
「オタビト タビト、オタビト タビト」
娘の尻が しゃべんのを見て、びっくりするばかりで、みんな、お手上げなんだと。(フント)

 長者さまは 困り果てて、
「娘の病気を 治してくれた者を 娘の婿にする」って、立て札を出したと。(フント)
すると、祈祷師やら 山伏やら なんやら いろんなのが やって来たが、
誰も 治せなかったと。(フント)
なかには 尻がしゃべるんだとよ なんて うわさを聞いて、
からかい半分で 娘のとこに来るヤツも 出てくる始末だったと。(フントコショ)
 
 (もう そろそろ いかんべ)
男は 占い師に化けて、長者さまのうちへ 行ったと。(フント)
「おらが ちょっと まじないをかければ、娘さんの病気なんか すぐに治っちまうだ」
長者さまは、男を 娘の寝てっとこに 連れて行ったと。(フント)
すると「オタビト タビト、オタビト タビト」って、しゃべる声が 聞こえてきて、
娘が 恥ずかしそうに 両手で 顔を隠していたと。(フント)

 男は「娘さんと 二人に させてくれ」って、言って、二人っきりになると、
娘に 尻を出すようにいって、しゃもじの裏っ側で、娘の尻を ぺろって なぜたと。(フント)
すると、ピタッっと おしゃべりが 止まったと。(フントコショ)

娘は 大喜びで 長者さまを呼んでくると、
「こりゃあ、日本一の 占い師にちげぇねぇ」って、喜んで、
約束どおり 娘の婿(むこ)にしたと。(フント)

 そうして、男は 長者さまの 跡取りになって、一生 安楽に 暮らしたと。(フントコショ)

 おめーらも うちへ帰ったら しゃもじで ほっぺた なぜてみろ、
もしかすっと「オタビト タビト、オタビト タビト」って、しゃべっかも しんねぇぞ。 

 いきが ポーンと さけた。

「鬼退治」 リメイク 2 by akira

2012年09月01日 16時23分17秒 | 民話(リメイク by akira)
 鬼退治  

 むかしのことだそうだ。

 めったに人が通んねぇような山道を、ひとりの男が 走るように歩いていたと。             
おっかさんが 危篤だっていうんで、郷里(くに)へ帰りを急いでいたと。

 すると、突然、男の前に、鬼が飛び出してきたと。
 「丁度いい、腹が減っていたところだ。」
鬼は男を食おうとしたと。
 (おっかさんに会うまでは、食われてたまるか。)
男はなんとか助かる方法はないかと考えたと。
そして、ひらめいたと。

 「よーし、おれも男だ、いさぎよく、食われてやらぁ。
だけんど、おらぁー、どうせ食われるんなら 大入道に 食われてぇ。
おめぇも鬼なら 大入道になるくらい わけなかんべ?
頼むっから 大入道になってから、食ってくんねぇか。」

 「お安い御用だ。」
鬼は グン グン、グン グン、大きくなって、大入道になったと。
 「うわぁー、たいしたもんだ。・・・だけんど、大きくは なれても 小さくは なれめぇ。」
 「小さくだってなれるわい。なにになってほしい、言ってみろ。」
 「そうだな、アリンコなんかは どうだ?」

 「お安い御用だ」
大入道は シュル シュル、シュル シュル、小さくなって、アリンコになったと。
男は 足元で チョコ チョコ 動いているアリンコを 見下ろすと、
足のウラで (グシャッと) ふみつぶして、なーんにもなかったように、先を急いだと。
 おしまい

「つつじの娘」 リメイク by akira 

2012年08月27日 00時40分17秒 | 民話(リメイク by akira)
 「つつじの娘」  akira リメイク (元ネタ 松谷みよ子 あかね書房)

 むかーしの ことだそうだ。

 ある 山に囲まれた 小さな村に、一人の いとしげな 娘がいたと。

 ある 夏の日、娘は 山を五つ越えたところにある 村での 祭りに 招かれたと。
 そこで、娘は 一人の 若者と 出会ったと。
 真っ暗な 山あいの中、その村だけ かがり火が あかあかと 燃えていたと。
 娘と若者は 時のたつのも忘れて 語り 歌い 踊ったと。
やがて、しらじらと 夜が明ける頃、二人は 互いに 忘れられんように なっていたと。

 しかし、祭りが終わってしまえば、二人の距離は あまりに遠く、逢うことも ままならなかったと。
娘は ぼんやりと 山を見ている日が 多くなったと。
 この山が なかったら・・・あの山が なかったら・・・
娘は うらめしそうに 山を見つづけたと。

 そんな ある夜のこと、娘が いつものように 山を見ていると、
ちらちらと 青白い 火の玉が 五つの山を 越えていくのが 見えたと。
娘は ひらめいた。 
 「そうだ、山を越えて行けばいいんだ。
そして、その夜のうちに 戻ってくれば 誰にも 気がつかれやしない。」
 
 その夜、娘は こっそりと 家を抜け出し、真っ暗な 山道を 走ったと。
山を 一つ越え、二つ越え、三つ越えると、
娘の胸は 張り裂けんばかりに 高鳴り、足は ブルブルと 震えたと。
 それでも、娘は 火のような 息を吐いて 走り続けたと。
四つ目の山を越え、五つ目の山を越え、ようやく、若者の家に たどり着いたと。

 「ドンドン ドンドン」はずむ息も そのままに、娘は 戸を叩いたと。
しばらくして、戸が開き、娘と若者の 目があったと。
「逢いたかった!」
娘の目から とめどもなく 涙があふれたと。
 「どうして ここへ?・・・」
 「山を 越えてきた。」
 「五つもの 山をか!?」
 娘は こくんと うなずくと 両手を 前に差し出し ぱっと開いたと。
その手には つきたてのモチが 握られていたと。

 その夜、二人は しあわせ だったと。

 それから、娘は 毎晩 若者を 訪ねるようになったと。
真夜中、戸を叩く音に、若者が 戸を開けると 娘が立っていたと。
そして、その手には いっつも つきたてのモチが 握られていたと。

 ほとんど 眠らずに、娘と一緒の 夜が続き、若者は しだいに やせ細っていったと。

 「おめぇ、いったい どうしたんだ!? どっか 悪いんじゃねぇのか?」
 若者の友達が 心配そうに たずねたと。
若者は 娘のことを 話したと。
 「そいつ ほんとに 人間なのか? 
魔性の女 なんじゃねぇのか?
五つも 山を越えてくるなんて とても 人間とは 思えねぇ!」

 その日は 嵐の 夜だったと。
 (今日は 来ないだろう) 若者は 早く 眠りに ついたと。
 ところが、「ドンドン ドンドン」 戸を叩く音に、若者が 戸を開けると、
 そこには、全身 ずぶぬれの(びっしょりの)娘が 立っていたと。
その目は きらきらと 輝き、手には つきたてのモチが 握られていたと。
 若者は 思わず 後ずさりをして、
 「おら おめぇのこと、魔性の女かと 思うように なってきた。」

 娘は 泣いたと。
 「あんたに逢いたくて、山を越えてくるだけなのに・・・」
 娘の目から 涙があふれたと。
 「家を出るとき、米を ひとつかみづつ 握って、
この山を越えれば あんたに逢える、あの山を越えれば あんたに逢える、
 そう思って 走っているうちに、
いつのまにか 手のなかの米は モチに なっているだ。
  おらぁ ふつうの娘だ! 
それを 魔性の女などと、そんな おそろしいこと、
お願いだから 言わないでおくれ。」

 だけど、その夜、若者は 初めて モチを食べなかったと。

 若者は しだいに 娘が怖ろしくなっていったと。
そして、それは やがて 厭(いと)わしさに 変わっていったと。
 「あいつは やっぱり 魔性の女に違いねぇ。
このままじゃ、おら いつか 殺されっちまう。
その前に なんとかしなければ・・・」

 ある日の夜、若者は 意を決したかのように、娘のやってくる 山へ向かったと。
そして、人ひとりが やっと通れるような 崖のかげで、娘の やってくるのを 待ったと。

 真っ暗な 山あいの中、ときおり、雲のあいまから 月のひかりが もれてくる。

 「タッタッ タッタッ」 娘の足音が かすかに 聞こえてきたと。
静かな 山ん中で、それは 地響きのように 聞こえてきたと。
「タッタッ タッタッ・・・タッタッ タッタッ」(だんだん大きな声で)
 やがて、月のひかりに照らされ、娘の姿が うっすらと 見えてきたと。
髪を振り乱し、両手をぐっと握り締め、おそろしいほどの早さで 走ってくる。
その姿は まさしく 魔性の女に 見えたと。
 「タッタッ タッタッ」 (娘が近づいてくる)
 「ハッハッ ハッハッ」 娘の 激しい息づかいが 聞こえてきたと。

 「この 魔性の 女が!」

 若者は 渾身の力をこめて 娘の足を 棒で はらったと。
 娘は まっさかさまに がけから 落ちていったと。

 やがて、そのあたりには、娘の血が 飛び散ったのかのように、
真っ赤な つつじの花が 咲き乱れるようになったと。

 信州、長野県の ツツジの名所に 伝わる お話。

 おしまい

「権現さま」 リメイク by akira

2012年08月15日 15時49分23秒 | 民話(リメイク by akira)
 今日は「権現さま」やっかんな。
  

 オレがちっちゃい頃、ばあちゃんから聞いたハナシだ。
ほんとかうそかわかんねぇけど、ほんとのことだと思って 聞かなきゃなんねぇ。

 むかしのことだそうだ。

 ある山のふもとに、病気で寝たっきりのおとうと せがれの孝太が 二人っきりで 暮らしていたと。
孝太は まだ 年端もゆかないのに、病気のおとうを助けて 一生懸命 働いていたと。

 孝太の 庭には、大きなしだれ桜の木があったと。
おとうが病気になる前は、春になると、満開の花を 咲かせていたが、
おとうが病気になってからは、だんだんと 枯れていって、今では 花も咲かぬようになっていたと。

 おとうは いっつも 孝太に 言っていたと。
「もう一度 桜の花が咲くとこ 見てぇなぁ。」
 孝太は そんなおとうの願いを かなえてあげたくて、一生懸命 桜の木の世話をしていたと。
水をあげたり、肥やしをあげたり、雑草を取ってあげたり・・・。
(桜の花が咲けば きっと おとうの病気もよくなる。・・・桜の花を咲かせておくれ。)

 それを見ていた 近所の子供らが、孝太をバカにするように 言ったと。
「もう 雪が降ってくる季節だっていうのに、桜の花が咲いたり するもんか。」
それだけじゃねぇ、木に登って 枯れた枝を折っては、孝太にぶつけたりもしたと。
(子供ってのは 残酷なもんだ。・・・おめーらは そんなこと すんじゃねぇぞ!)
 そんな嫌がらせにも負けず、孝太は 桜の木の 世話を続けたと。

 そんな ある日の夜、おとうが 孝太を枕元に呼んで 言ったと。
「孝太、オレも いよいよ ダメかもしんねぇ。
死ぬ前に、もう一度、桜の花が咲くとこ 見たかったなぁ。」
「おとう、桜の花はきっと咲く。それまでは 頑張っておくれ。」
孝太は いたたまれなくなって、真っ暗な外へ出て、桜の木にお願いしたと。
「桜の花を 咲かせておくれ。」

 すると、山の方から かすかに 声が聞こえてきたと。
「権現さまに お願いしておいで。」
 (滝のところにある 権現さまだ!)
孝太は すぐわかったと。
ちぃちゃい頃 おっかさんが よく連れていってくれたとこだ。

 孝太は 真っ暗な山ん中を 滝の音をたよりに 登っていったと。

 夜の山は こわいぞ。
無気味な 鳥や けものの鳴き声が 聞こえてくる。
「キィー」(鳥の鳴き声)「ウゥー」(けものの鳴き声)

 孝太は 帰りたい気持ちを 必死でふりきって、
ようやく、権現さまが祀(まつ)られている お社(やしろ)に たどり着いたと。
「権現さま、お願いです。・・・桜の花を 咲かせてください。」
孝太は 地べたに 頭をこすりつけて お願いしたと。

 その帰り道、
 ボロボロになったわらじで 血だら真っ赤になった足を 引きずるように、やっとこ 家に着いたと。
おとうの枕元に行って 寝息を聞くと ほっとして、
(桜の花は きっと 咲くからな。それまでは 頑張っておくれ)
孝太は 這うように ふとんに入ったと。

 次の日の朝、雨戸の節穴から もれてくる光で、孝太は目を覚ましたと。
(権現さま、お願いです。・・・)
孝太は 祈るような気持ちで 雨戸をあけたと。

 すると、満開の桜が 目に 飛び込んできたと。
「おとう!」
孝太は おとうを抱きかかえると、縁側まで連れて行って、桜の花を見せてあげたと。
「桜の花が・・・桜の花が・・・。きれいだなぁ・・・。」

 孝太に支えられて やっと立っていた おとうの身体に、だんだん 力がみなぎってきたと。
そして、元気だった頃のおとうに 戻っていったと。

 「孝太!・・・苦労をかけたなぁ。」

 それから、二人は しあわせに 暮らしたとさ。

 おしまい。