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「大きな古時計」の絵本2冊

2003-11-18 14:28:27 | 絵本と児童文学
[110] 「大きな古時計」の絵本2冊 (2003年11月18日 (火) 14時28分)

 「大きな古時計」の歌が受け入れられているのは、時代の空気を感じます。90年前後(バブル期)だったでしょうか、学生に提示した時「暗い~、暗い~」といって、ブーイングに近い反応だったので、他の歌に代えたものでした。 
 そうそう、これは音楽の時間ではありません。保育を学ぶ学生の教養として、学生が集まるまであるいは気分転換の意味もあり、講義の際短時間様々なことをしています。これまで詩を読む、歌をうたう、童謡の紹介と解説、絵本の読み聞かせ、あるいは手遊びなどやっています。
 歌は時代の気分を反映するものです。「涙そうそう」のように、森山良子が兄の夭折に思いをよせた歌が受け入れられてい今は、どんな空気と読み取ればよいのでしょうか。それにぼくが仕事をしながら聞くときがある木村弓(「いつでも何度でも」千と千尋人の神隠しの主題歌など)の歌もあるし…。こんな傾向は歌に関しては、メロディーが重視される普通の状況かなと思っています。
 おっとっとっと歌の話になりそう。ここでは歌を絵本にした「大きな古時計」の絵本についてです。この歌が物語性を持った詞なので、そのまま絵本にしやすいせいか、2冊出版されています。
 ひとつは、この歌を世に広めた平井堅によるもの(02年9月6日発行、学研発売)です。平井の自筆による詞にイラストで物語っています。そして彼の写真やこの歌にまつわるエピソードが綴られています。最後の2ページは絵葉書に出きるものが加わっています。
 黒に平井堅の文字が白抜きで書かれ、塩田雅紀が物語の世界へいざなう絵を黒の額縁に入れたように描いています。この絵が、独自な技法も取り入れ緻密で上品で立体感があり、物語性だけでなく平井堅の繊細なキャラクターをもイメージできるものです。
 もうひとつは、伊藤正道によるイラストで白水社(月刊誌『モエ』の出版社でもある)から、11月12日発行されたものです。これは『モエ』3月号に掲載されたものを絵本にしたものです。絵は、色画用紙に水彩クレパス色鉛筆などの画材を使ったと思われるものでていねいに描かれ、どちらかというと子どもがこの詞の物語の世界を想像しやすいような作品に仕上げています。
 メディアミックスの時代といわれていますので、歌が絵本になることもありうることです。ヒットした歌であればこそ絵本という商品になるのでしょう。また金子みすずの詩には曲がつけられ、絵本にもなっています。童謡は物語性を持ったものが多いので、絵本になる可能性が備えられています。しかし商品として売れなければ実現しませんが…。

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