会場に入ると懐かしい芝居小屋の匂いがした。
かつて演劇少女で小劇場の芝居が好きだったことが、
嗅覚から蘇ってきた。
場所は笹塚の駅の前、「笹塚ファクトリー」
階段を下りるとキャパ150人ほどの座席が作られている。
段差がある作りなのでどの席からもステージが良く見える。
やってきた理由は地元のお寿司屋さんの常連でゴルフコンペでも同じ組で周った
かわのをとやさんが出演しいるからだ。
舞台にはベッドルームとリビング、キッチンのセッティング。
最初に登場人物が全員現れて、リズミカルな動きと共に一人づつにスポットがあたる。
舞台は暗転して残ったのは主人公、42歳独身一人住まいという設定の男性。
奥さんがいながら会社の受付の女性と浮気している後輩に部屋に居座られている。
この二人のいざこざにまきこまれた主人公は食傷気味ながらも心配もしている。
後輩は後輩で一人身の先輩への思いやりとして「彼女貸します」というパンフを持ってくる。
見せられて無表情だったが、心は裏腹な様子。
後輩が帰るとクローゼットから実は既に借りてきた彼女と説明係のマネージャー、
不思議な動きをする飄々とした茶色づくめの男性が飛び出してくる。
主人公はみんなに飲み物を薦めるがこの茶系の男性にはボールに入った水。
この男性は冷蔵庫に突然飛び上がったり、毛づくろいをしたり、
裸足で歩き、ソファーに横になり、主人公も話しかけるが、
主人公に向かっても話す。家の外と中を気ままに出入りしている。
ある時は彼を相手に主人公の子供時代の事まで対話が始まる。
それなのに他の登場人物は彼の存在に気づいていないようにさえ見える。
ほどなくそれが「飼い猫」だと気づく。
借りてきた彼女は主人公の希望通りの「気の強くてびしっと叱ってくれる人」
マネージャーがシステムの説明をヒップホップを踊りながら始める。
今回はお試し期間のサービス、終了時には鐘がなる、など。
三人が出て行くとそこにミステリアスな女性が訪ねてくる。
その人もまた主人公の友人が彼のために予約した借り物の彼女なのだった。
そこに田舎から主人公の妹がやってくるが、何かこの女性も曰くありげだ。
その上、主人公が間借りしている部屋の持ち主の友人も戻ってくる。
この人も一癖ありそうな人物。
ストーリーについてはここまでにしておく。
何しろ、一人一人のキャラクターがはっきりしていて、
話の展開がスピード感があり、どんでん返しの連続。
ストーリーも秀逸だったが、間の人物達のちょっとした会話に客席から爆笑が沸く。
主人公を演じる西秋元喜、友人の田中しげ美、
ダブルブッキングされた彼女のマネージャーのかわのをとや、
中堅が舞台を引き締めて、一時間50分思いっきり笑わせてくれた。
若手もそれぞれの役を個性たっぷりに演じて一人一人が粒揃いだった。
そして最後には笑いだけでなく、ほろっとさせて舞台が終わる。
久しぶりにたいへん好みの芝居に当たった。
設定をすべて理解した上でもう一度観てみたいとも思っている。
「彼女借ります」、1/25(火)~1/30(日)までの間の上演。
毎晩、19時から開演。京王線 笹塚駅前 笹塚ファクトリーにて
木曜と土曜、日曜にはマチネもあり。
脚本・演出 菅野臣太朗
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