まさかこれほどの素晴らしいライブになるとは行く前に予想もしていなかった。
往年のずっと聴いてきた懐かしくも愛すべき曲達と共に、
フィリップのアーティストとしての40年を振り返る。
フィリップが一緒に組んで仕事をしてきた数々のアーティストの楽曲と、
フィリップしか知らないそれらのアーティストとのエピソードが語られる。
貴重なR&B史の講義を聴いていると同時に、そこにオンタイムで参加し、
キーボードの演奏を実際にしてきたフィリップが生の曲を聴かせてくれる。
フィリップはR&Bの歴史におけるまさにリビングレジェンドだ。
Philip Woo “Roots Story”音楽活動40周年記念&Birthday Live
会場に6時半頃着くと席はキーボードから二列目。
目の前にはスタインウェイのAタイプ、YAMAHA MOTIF ES、ハモンドB3が
並べられている。その他中央にも別のキーボードが置いてあるようだ。
登場したフィリップはスライドショウを始める。
シアトルで5人兄弟で生まれ育ったこと、幼年期からピアノに親しんだ。
12歳の時、ベッドでペルシャ猫と眠っている写真が可愛い。
今もフィリップは愛猫を大切にしていて時々写真が出てくるが、
子供の頃からずっと猫と一緒だったようだ。
両親や兄弟の愛情を受けて幸せな子供時代だったことが伺える。
初めて親しんだ曲はビートルズ、その後、音楽部で、
それぞれが自分で習得した曲を皆の前で披露した。
その時の曲も。
ダニー・ハサウェイの曲との出会いはフィリップにとって決定的なものになった。
ダニーの音楽を知る前と後では自分は全く違ってしまったとフィリップは語る。
ハモンドB3、15歳の時に18才の女性から買ったのが一台目だったそうだ。
たいへんな重さで三人掛かりで部屋まで運び込んだそう。
高校は先輩や同級生に著名人がたくさんいる。
ブルース・リー、ケニーGなどの写真も出てきた。
フィリップはこの日に55歳になった。
芸歴は実際は41年だそうだ。
つまり14歳からコンサートなど公の場で演奏してきたことになる。
「僕はね、音楽しかしたことがないんだ。普通の仕事は一度も。
ずっとこういう楽器をいじってきているよ。」
以前、ロイ・エアーズのライブの時に語られた二人の出会いと歴史を、
ブログに書いているが、
10代後半でフィリップはロイに請われてニューヨークへと出て行く。
http://blog.goo.ne.jp/ak-tebf/d/20100318
ここで演奏された曲はロイ・エアーズの"Everybody Loves Sunshine"
ロイは自分に対して父親のような存在だった。
ロイのお陰で今の自分がある。
しかしその時、ロイと一緒にいる時にはどれほど自分が守られているか、
自覚していなかった。
3年後にロイの元を離れた時、世間の厳しさというものを思い知った。
その後、組んだのはAshford&Sympson。
ヴァレリーは音楽に長け、ニコラスは詩人だったとフィリップは語る。
彼らと組んで仕事していた時、フィリップは強盗にあい、家財を盗まれてしまったそうだ。
その時、二人はフィリップに金の延べ棒のような物を、
お金に替えるようにとプレゼントしてくれたそうだ。
そればかりか次の週にも、また同じ物をもう一本くれたそうだ。
この時はほんとうにありがたかった、二人は気持ちの暖かい人だとフィリップ。
そこで「この曲、わかるかな?」とグランドピアノへ向かった。
イントロを聴いた私は飛び上がった。
"Ain't No Mountain High Enough"この曲を聴くと条件反射で立って、
歌いながら踊り出してしまう。
続いて"Ain't Nothing Like The Real Thing"
「この曲は知っているかな?彼らの曲でチャカ・カーンが歌った・・」とフィリップが切り出したので、
"I'm Every Woman!"とシャウト。演奏が始まる。
今日が命日のフィリス・ハイマンの写真が出る。
「彼女の声は素晴らしかった。こういう人と組んでいると自分もひっぱられて、
どんどん深く、また高いレベルへと引っ張って貰うことができた。
今、彼女は天国にいるけれど。」
その他にもホイットニー・ヒューストンやステイービー・ワンダー、オージェイズ、マリーナ・ショー,
BBキング、アル・ジャロウ、ジャーメン・ジャクソン、ジェイムズ・イングラム。
これまで一緒に仕事したアーティストの名前をたくさんあげた。
「でも一回だけ一緒に組んだだけでその人と仕事したなんていうのは、『ずるい』よね。
それでいてスティービーと友達みたいに人に話すなんてね。
そういうのはあまり好きじゃないな。」
「グローバー・ワシントン・Jrともしばらく一緒に仕事をした。
彼の家族みんなと親しくさせて貰ったよ。
彼も今は天国だけど。」
このフィリップが「天国」という時の話し方がいい。
フィリップが少し上を見上げて「天国にいる」と言うと、
ほんとにちょっと上の世界からこっちを見てくれていて、
自分の曲が演奏されるのを楽しげに眺めていてくれる、そんな感じがするのだ。
「シンディー・ローパーとは今までの分野とは違うけど、
彼女とも良い仕事ができた。」
アシュトンのボーカルで、ジェフリー・オズボーン"Every time I Turn Around"
バンドがタイトでアシュトンの声もこの曲に合っている。
スタイリスティックスの"Betcha By Golly, Wow"
原曲は優しく流す感じなのに、ブレンダはこのロマンティックな恋のマジックを綴った曲を、
とろけるように歌い上げる。
客席もうっとりと聴いている。
ふと見ると最後の部分でマイクは膝の上。
エンディングが余韻を残して見事だった。
ブレンダ・ボーン、サム・ムーアの時もバックコーラスで参加している。
"Just The 2 of Us"、グラディス・ナイトの"On and On"
"Lady Mamalade"では、「ゲジゲジヤヤイ―!」
"Voulez vous coucher avec moi ce soir?"と絶唱。
隣にいる夫が引いている。
これは英語にすると"Would you like to make love with me tonight?"
初めて、ひょっとしてこの仏語変かな?と気づく。
「いたします?」「いただけます?」ではちょっと。
こういう内容ならvous voulezではなく、tu veuxが相応しいのでは?
これだけダイレクトに誘ってるなら"Would you like"ではなく"Do you want"であるべきだな。
曲に合わせて響きが良い言葉を選んだ結果なのでしょう。
1stだけで帰る予定が、まだMAZEを聴かずに帰るわけにはいかない。
"Joy and Pain"、一昨年のメイズ、フランキー・ビバリーの時のライブが蘇る。
"Joy and Pain, Sunshine and Rain"と皆でコーラス。
ここで声を枯らしてしまった。
そして「パーティーやバーベキューが終わった後は、
この曲を聴かずに帰すわけにはいかないね。」と"Before I Let You Go"
最後はオールスタンディング。
フィリップへのバースデイケーキのプレゼントもあり。
「願い事してから消すからね。」と嬉しそう。
フィリップは優しくて芸術家タイプ。
前半では緊張したせいか、「手が吊ってしまった。この中に鍼灸師の人いない?」
なんて言いながら辛そうに手を揉んでいた。
その後、セカンドでは「リラックスしようと思ってちょっとアルコールも飲んだよ。」
とほんとうに楽しそうだった。
おいてある楽器に次々と移り変わって演奏、中にはピアノとキーボードと一緒に弾いたり、
ハーモニカも聴かせた。
チューニングも自分でしているし、バンドの指揮も取っている。
最後に「おめでとう」と「ありがとう」の挨拶をした時に、
「先週、ボディーアンドソウルに名前があるから行ったのに、出ていなかったね。」と話すと
「来週は出るよ。」と言われてこちらも勢いで行く約束をした。
今までCDや映像で聴いてきた曲、そこに聴こえているキーボードの音は、フィリップのものだ。
それらの名曲を目の前で聴くことができて、数々のアーティストとの思い出が語られる。
フィリップはR&Bで第一線のアーティスト達と仕事をしてきた。
それは彼が才能豊かで努力家だっただけでなく、多くのアーティストから愛される人柄であったからだと
この日のライブを観ながら思ったのだった。
(Pf/HAMMOND B-3/Fender Rhodes/Key)Philip Woo (G)マサ小浜
(Ds)Jay Stixx (Vo)Brenda Vaughn、Ashton Moore、Tahirh Walker
(B)Cliff Archer (Sax)Andy Wulf
往年のずっと聴いてきた懐かしくも愛すべき曲達と共に、
フィリップのアーティストとしての40年を振り返る。
フィリップが一緒に組んで仕事をしてきた数々のアーティストの楽曲と、
フィリップしか知らないそれらのアーティストとのエピソードが語られる。
貴重なR&B史の講義を聴いていると同時に、そこにオンタイムで参加し、
キーボードの演奏を実際にしてきたフィリップが生の曲を聴かせてくれる。
フィリップはR&Bの歴史におけるまさにリビングレジェンドだ。
Philip Woo “Roots Story”音楽活動40周年記念&Birthday Live
会場に6時半頃着くと席はキーボードから二列目。
目の前にはスタインウェイのAタイプ、YAMAHA MOTIF ES、ハモンドB3が
並べられている。その他中央にも別のキーボードが置いてあるようだ。
登場したフィリップはスライドショウを始める。
シアトルで5人兄弟で生まれ育ったこと、幼年期からピアノに親しんだ。
12歳の時、ベッドでペルシャ猫と眠っている写真が可愛い。
今もフィリップは愛猫を大切にしていて時々写真が出てくるが、
子供の頃からずっと猫と一緒だったようだ。
両親や兄弟の愛情を受けて幸せな子供時代だったことが伺える。
初めて親しんだ曲はビートルズ、その後、音楽部で、
それぞれが自分で習得した曲を皆の前で披露した。
その時の曲も。
ダニー・ハサウェイの曲との出会いはフィリップにとって決定的なものになった。
ダニーの音楽を知る前と後では自分は全く違ってしまったとフィリップは語る。
ハモンドB3、15歳の時に18才の女性から買ったのが一台目だったそうだ。
たいへんな重さで三人掛かりで部屋まで運び込んだそう。
高校は先輩や同級生に著名人がたくさんいる。
ブルース・リー、ケニーGなどの写真も出てきた。
フィリップはこの日に55歳になった。
芸歴は実際は41年だそうだ。
つまり14歳からコンサートなど公の場で演奏してきたことになる。
「僕はね、音楽しかしたことがないんだ。普通の仕事は一度も。
ずっとこういう楽器をいじってきているよ。」
以前、ロイ・エアーズのライブの時に語られた二人の出会いと歴史を、
ブログに書いているが、
10代後半でフィリップはロイに請われてニューヨークへと出て行く。
http://blog.goo.ne.jp/ak-tebf/d/20100318
ここで演奏された曲はロイ・エアーズの"Everybody Loves Sunshine"
ロイは自分に対して父親のような存在だった。
ロイのお陰で今の自分がある。
しかしその時、ロイと一緒にいる時にはどれほど自分が守られているか、
自覚していなかった。
3年後にロイの元を離れた時、世間の厳しさというものを思い知った。
その後、組んだのはAshford&Sympson。
ヴァレリーは音楽に長け、ニコラスは詩人だったとフィリップは語る。
彼らと組んで仕事していた時、フィリップは強盗にあい、家財を盗まれてしまったそうだ。
その時、二人はフィリップに金の延べ棒のような物を、
お金に替えるようにとプレゼントしてくれたそうだ。
そればかりか次の週にも、また同じ物をもう一本くれたそうだ。
この時はほんとうにありがたかった、二人は気持ちの暖かい人だとフィリップ。
そこで「この曲、わかるかな?」とグランドピアノへ向かった。
イントロを聴いた私は飛び上がった。
"Ain't No Mountain High Enough"この曲を聴くと条件反射で立って、
歌いながら踊り出してしまう。
続いて"Ain't Nothing Like The Real Thing"
「この曲は知っているかな?彼らの曲でチャカ・カーンが歌った・・」とフィリップが切り出したので、
"I'm Every Woman!"とシャウト。演奏が始まる。
今日が命日のフィリス・ハイマンの写真が出る。
「彼女の声は素晴らしかった。こういう人と組んでいると自分もひっぱられて、
どんどん深く、また高いレベルへと引っ張って貰うことができた。
今、彼女は天国にいるけれど。」
その他にもホイットニー・ヒューストンやステイービー・ワンダー、オージェイズ、マリーナ・ショー,
BBキング、アル・ジャロウ、ジャーメン・ジャクソン、ジェイムズ・イングラム。
これまで一緒に仕事したアーティストの名前をたくさんあげた。
「でも一回だけ一緒に組んだだけでその人と仕事したなんていうのは、『ずるい』よね。
それでいてスティービーと友達みたいに人に話すなんてね。
そういうのはあまり好きじゃないな。」
「グローバー・ワシントン・Jrともしばらく一緒に仕事をした。
彼の家族みんなと親しくさせて貰ったよ。
彼も今は天国だけど。」
このフィリップが「天国」という時の話し方がいい。
フィリップが少し上を見上げて「天国にいる」と言うと、
ほんとにちょっと上の世界からこっちを見てくれていて、
自分の曲が演奏されるのを楽しげに眺めていてくれる、そんな感じがするのだ。
「シンディー・ローパーとは今までの分野とは違うけど、
彼女とも良い仕事ができた。」
アシュトンのボーカルで、ジェフリー・オズボーン"Every time I Turn Around"
バンドがタイトでアシュトンの声もこの曲に合っている。
スタイリスティックスの"Betcha By Golly, Wow"
原曲は優しく流す感じなのに、ブレンダはこのロマンティックな恋のマジックを綴った曲を、
とろけるように歌い上げる。
客席もうっとりと聴いている。
ふと見ると最後の部分でマイクは膝の上。
エンディングが余韻を残して見事だった。
ブレンダ・ボーン、サム・ムーアの時もバックコーラスで参加している。
"Just The 2 of Us"、グラディス・ナイトの"On and On"
"Lady Mamalade"では、「ゲジゲジヤヤイ―!」
"Voulez vous coucher avec moi ce soir?"と絶唱。
隣にいる夫が引いている。
これは英語にすると"Would you like to make love with me tonight?"
初めて、ひょっとしてこの仏語変かな?と気づく。
「いたします?」「いただけます?」ではちょっと。
こういう内容ならvous voulezではなく、tu veuxが相応しいのでは?
これだけダイレクトに誘ってるなら"Would you like"ではなく"Do you want"であるべきだな。
曲に合わせて響きが良い言葉を選んだ結果なのでしょう。
1stだけで帰る予定が、まだMAZEを聴かずに帰るわけにはいかない。
"Joy and Pain"、一昨年のメイズ、フランキー・ビバリーの時のライブが蘇る。
"Joy and Pain, Sunshine and Rain"と皆でコーラス。
ここで声を枯らしてしまった。
そして「パーティーやバーベキューが終わった後は、
この曲を聴かずに帰すわけにはいかないね。」と"Before I Let You Go"
最後はオールスタンディング。
フィリップへのバースデイケーキのプレゼントもあり。
「願い事してから消すからね。」と嬉しそう。
フィリップは優しくて芸術家タイプ。
前半では緊張したせいか、「手が吊ってしまった。この中に鍼灸師の人いない?」
なんて言いながら辛そうに手を揉んでいた。
その後、セカンドでは「リラックスしようと思ってちょっとアルコールも飲んだよ。」
とほんとうに楽しそうだった。
おいてある楽器に次々と移り変わって演奏、中にはピアノとキーボードと一緒に弾いたり、
ハーモニカも聴かせた。
チューニングも自分でしているし、バンドの指揮も取っている。
最後に「おめでとう」と「ありがとう」の挨拶をした時に、
「先週、ボディーアンドソウルに名前があるから行ったのに、出ていなかったね。」と話すと
「来週は出るよ。」と言われてこちらも勢いで行く約束をした。
今までCDや映像で聴いてきた曲、そこに聴こえているキーボードの音は、フィリップのものだ。
それらの名曲を目の前で聴くことができて、数々のアーティストとの思い出が語られる。
フィリップはR&Bで第一線のアーティスト達と仕事をしてきた。
それは彼が才能豊かで努力家だっただけでなく、多くのアーティストから愛される人柄であったからだと
この日のライブを観ながら思ったのだった。
(Pf/HAMMOND B-3/Fender Rhodes/Key)Philip Woo (G)マサ小浜
(Ds)Jay Stixx (Vo)Brenda Vaughn、Ashton Moore、Tahirh Walker
(B)Cliff Archer (Sax)Andy Wulf