10月16日、日曜日の午前と午後に渡って蒲田駅前アプリコで行なわれた
「大田区障害者の集い」クラシックコンサート、
予定されていた視覚障害者のピアニストの方が体調を崩されたため、
急遽、金子三勇士が代役で演奏することになった。
金子三勇士、今週末には名古屋、大阪でのリサイタルを控えている。
「リスト生誕200年記念コンサート」に向けて、
演奏曲目の練習に励んでいたところに急に決まったコンサート。
代役で弾くのはショパン「ピアノ協奏曲第1番」
2010年の4月にオペラシティーで東京フィルとの共演で演奏。
2010年4/22、金子三勇士「ショパンピアノ協奏曲第1番」
広上淳一指揮、東京フィルハーモニー楽団
http://blog.goo.ne.jp/ak-tebf/d/20100423
その後、同年7月に葛飾シンフォニーホールでショパンピアノ協奏曲第1番第1楽章のみの演奏。
金子三勇士 2010年7月4日 「おなじみのクラシック音楽大集合」
梅田俊明指揮クラシックオーケストラ
http://blog.goo.ne.jp/ak-tebf/d/20100704
それ以来、コンサートでは演奏していなかった曲を短期間で仕上げることになった。
13日になってオーケストラ、東京フィルと指揮者、大友直人とのリハーサルが行なわた。
13日の朝、大田区役所に問い合わせると、
既に前売りのチケットは販売終了している。
開演1時間前に売り出される当日券のみとのことだった。
金子三勇士の弾くショパン「ピアノ協奏曲第1番」には特別な思い入れがある。
また家からそう遠くない場所にこのコンサートホールがある。
2時開演の午後の部を観に行くことに決め、地元の友人たちにも声を掛ける。
会場すぐ近くに住む友人夫婦が自転車で駆け付けてくれた。
2階席、バルコニー席もある1400人収容のホール。
一階前方は車椅子の方用に座席を外して対応。
中央が障害者の方達のための座席。
また一階後方には通常の車椅子席を更に広げて、
たくさんの方がそれぞれの障害の状況に応じて移動可能なように、
空間が作られている。
司会者の紹介で担当の方の挨拶、
そして東京フィルのメンバー、指揮者の大友直人が登場し、
ヘンデル「水上の音楽」
金子三勇士が壇上に迎い上げられショパン「ピアノ協奏曲第1番」
この曲は19才のショパンが母国ポーランドを離れる決心をし、
旅立つ前のコンサートで披露した曲。
ショパンのポーランドへの想い、これからの将来への夢など、
いろいろな気持ちが込められた曲。
また金子三勇士にとってもこの曲を初めて演奏した昨年の4月は、
ピアニストとしてプロでの契約が決まったものの、
まだデビューコンサートにも至っていなかった時期。
この曲へのショパンの想いと当時の金子三勇士自身の心境が重なる。
オーケストラの演奏が続きピアノの演奏が始まる。
その瞬間、ここに至るまでの金子三勇士のピアニストとしての
道のりが胸に迫ってきた。
階下の会場を見ると、知的障害者の方で気に入った場所で手拍子を取ったり、
リズムに乗って踊っている人もいる。
演奏中にも掛け声が掛かる。
これはクラシックコンサートでは稀でもR&Bのコンサートでは普通のこと。
本来ではクラシックコンサート、楽章の終わりでは拍手が入らないはずだが、
第一楽章の終わりに拍手が入る。
第二楽章の終わりでは最後のピアノの演奏が終わる前に拍手が始まるが、
金子三勇士、落ち着いて拍手をかき消すこともなく弱音の部分を演奏、
第三楽章に繋げる。
2009年、金子三勇士が東京国際フォーラムでの子供のための演奏会で、
チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」を演奏した際、
司会進行の三枝成彰氏が「クラシックでも楽章ごとに拍手しても、
気に入れば前に出てきて気持ちを表してもスタンディングしても良いと思う。」
と話されていた。
金子三勇士 チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 8/11・12 2009
http://blog.goo.ne.jp/ak-tebf/d/20090813
東京のクラシックコンサート、クラシック専門のコンサートホールでは、
独特の張りつめた空気感がある。
そういう意味ではこの日のコンサート、こちらもリラックスして観ることができた。
金子三勇士、ショパン「ピアノ協奏曲第1番」残念ながらCD化されたアルバムがない。
家で聴く他のアーティストの演奏と較べると、
三勇士のこの曲には、優しさが溢れている、
感情が込められていながら抑制の効いた格調を感じる。
金子三勇士の弾くこの曲のCD化、いつか実現するだろうか。
演奏の後、指揮者の大友直人ともに金子三勇士、
壇上で司会者からインタビューを受ける。
2~3歳からピアノを始めたとのこと、
その位の子供でも鍵盤を押すだけの力があるのか、
今は学生だが来年卒業後、社会の荒波に揉まれることになるが、
将来の抱負はなど。
演奏が終わった瞬間に思うことは?
三勇士「毎回、『生きていて良かった』と幸せに感じます。」
将来、どのような活動をしていきたいか?
「ハンガリーと日本で育ったことから、
国際交流に役立つことをしていきたい。
また音楽を通じてそれが可能だと思っています。」
インタビュー後、リスト「愛の夢第3番」
「皆さんの心に届く演奏をしたい。」との言葉の通り、
協奏曲ではオーケストラの音と調和するように音をコントロールしていたが、
この曲の後半からのクライマックス部分では2階席後方にいた私にも、
この曲にリストが込めた愛、それがひしひしと伝わってきた。
障害のある方達にもぜひトップレベルのクラシックを楽しんで欲しいという趣旨の元、
この日に向けて準備をされてきた方、
演奏者たち、指揮者、司会者、
障害者の方に付き添ってお世話されていた方達、
それぞれの暖かい真心のこもったコンサートだった。
終了後、楽屋を訪ねて近況などを聞く。
この演奏会の後は今週末の名古屋、大阪へと向け、
全力投球すると語ってくれた。