世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●偽装された普遍的価値 アメリカン・ドリームの崩壊

2018年11月12日 | 日記
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●偽装された普遍的価値 アメリカン・ドリームの崩壊

欧米が創りあげた民主主義と資本主義が、いま悲鳴を上げてのたうち回っている。マネーの奴隷と目される市場原理主義経済は、本来の資質通り、善悪や正義不正義、人道的見地‥等、公式な民主主義の定義に含まれている本質論には目もくれず、地球上を剥き出しの欲望のまま闊歩している。この自由な闊歩がグローバリズム経済により極大化されたと云うのが、最近の現状だろう。マネーの奴隷として象徴的に見られるのが企業であるとすれば、民主主義を持たない企業群に自由な活動環境を提供する国家と云うものは、結果的に、自発的なマネーへの従属を意味する。

昔の社会科の教科書には、企業には社会的使命が実存するかのように教えていたが、最近の企業を見る限り、この言説は嘘くさい。マネーの悪癖に振り回された市場原理主義な世界にある企業群には、社会的使命を果たす余力は奪われてしまったと考えるべき時代になった。国境なき経済活動を推進するグローバリズム経済と云うものは、国境のある経済活動の限界から生まれた鬼子のようなもので、マネーの欲望を極大した姿なのだ。しかし、このグローバリズム経済もフロンティア地域(今までは中国)で行き止まりを迎えている。

なぜ行き止まりなのかと言えば、グローバル経済(マネー)のご馳走であったフロンティア地域(中国)が、或る時点から共産党独裁の国家資本主義の担い手として成長した。フロンティア地域だと思い込んでいた中国が、いまや、市場を提供するばかりではなく、生産拠点となり、グローバル経済の良いとこ取りに成功した。尚且つ、その国家主義的経済の推進力を利用して、近隣諸国までも呑み込む経済活動区域(一帯一路)を拡大させるに至った。グローバル経済で良い思いをしていた国際金融(マネー)は虚を突かれたと云うべき状況になった。これが現状だ。

たしかに、一党独裁国家主義体制の下で、意思決定と責任が各企業に任されている自由主義企業群の経済活動と勝負するのだから、同じ土俵に乗っているとは言えない。ましてや、その国家資本主義が、実力に裏打ちされている場合、その勝負は自ずと知れる。国家資本主義国の勝利だ。中国と云う国家の実力がホンモノだと周辺国が思い込めば思い込むほど、その活動は波に乗る。おそらく、習近平の一帯一路構想にEU、ロシア、ASEANが乗り気になる気持ちも判る。安倍首相率いる日本でさえ、一帯一路への参加を表明するに至っている。現実、筆者は、諸手を上げて、中国の実力を信じていいものかどうか判断はつかない。

それよりも、中国の実力を推し測る代りと言ってはなんだが、日米欧などのグローバル企業群の動きに注目した方が賢明だろう。つまり、彼らの多くは、米国の市場を失ってでも、中国の市場を欲している動きが強く見られる。或る意味で、一帯一路の市場を、中国と共に分け合いたいと手もみしているようにさえ見える。しかし、これら企業群のマネーの多くは、米国ウォール街や英国シティー派生のものである。この点が、話を複雑にするのだが、マネーが自国に相当する英米の市場から遠ざかろうとしているのだ。マネーが、巣食う肉体を変えようとしている。

事実問題として、肉体の主である米国では、トランプ大統領による孤立主義が鮮明化しているのだ。格差や差別を美辞麗句で覆い隠す、偽善的民主主義を捨て、現存する醜悪な差別や格差を鮮明化すること、事実を事実として映像化してしまう、欲望剥き出しの民主主義と米国一国主義の米国を作ろうとしている。かなりの点で、グローバル経済からの撤退である。そして、個別的な利権を主張する傾向を鮮明にしている。おそらく、この状況が続けば、日欧等の企業による、米国市場へのアクセスは限定的にならざるを得なくなる。

このような状況は、米国経済の収縮を意味するわけで、限定的だが覇権の揺らぎにも繋がることになる。米国の揺らぎの分だけ、覇権の流れは中国に向かうわけだ。もし仮に、米国が同様の政策を取り続ければ、米中と云う、新たな東西冷戦構造を、意図的に再構築することになる。意図的にと言ったが、レーガン政権以降の米国経済は、紆余曲折はあったものの、中間層を失いながら、格差を拡大させ、辛うじて世界NO1の経済力を維持してきたが、経済活動の無理が、重大な格差を抱え、国民を分断するに至っているようだ。

つまりは、レーガン時代のプラザ合意以降、結局、米国の経済的ヘゲモニーは終焉に向かっていたことになる。トランプ大統領が、経済的ヘゲモニーを投げ捨てた大統領のように言われるのは少々気の毒で、格差と云うおもりを課された大統領と解釈する方が、公平なジャッジではないのだろうか。ただ彼は、その格差の鮮明化によって、大統領の岩盤支持層を纏めきると云う手法を使っていることが悪徳保安官のように見えるだけで、米国の弱点を晒して、世界に吠えているわけだが、単に悪者を一手に引き受けただけで、トランプ大統領のみの責任ではなく、レーガン以来のツケを、いま世界に晒しているに過ぎないと云うことだ。

このようなに、米国トランプ大統領や米国の格差状況をみた後で、先進国の「普遍的価値」等と云う言葉が、如何に空疎な言葉であったか、安倍晋三に聞いてみたいところだが、安倍は、今の米国も「普遍的価値」を共有している国だと思い込んでいるかもしれない。いや、「普遍的価値」なんて言葉は、カッコ良いから使っただけで、普遍的の意味すら知らない可能性がある。まぁ、いずれにせよ、米国が経済的ヘゲモニー競争から脱落することは時間の問題になってきた。ただ、軍事的ヘゲモニーは離さない点が気がかりだ。

経済における失地回復に、優位に立つ軍事を使わない保証がないことだ。米国と云う国は、CIAを通じて、世界の多くの国家の政府に干渉し、時には裏技で、政府転覆を得意技にしてきた国なのだ。ゆえに、何をするか判らないと云う裏の顔で、世界に睨みを利かせてきた覇権国だけに、どこに火をつけるか判ったものではない。シリア(IS誕生)、イランに限らず、香港、台湾、中国・新疆ウイグル自治区等々、CIA工作からは目を離せない。日米同盟の見直しを考えていた日本の政治家が早期に潰された姿も印象的だ。しかし、トランプ政権下だからこそ、日米同盟を見直す好機のように筆者には見えてくる。

いまだに、北朝鮮への米軍攻撃も可能性を残しているわけなので、現時点で言い出すわけにはいかないが、朝鮮戦争の終結が宣言された時がチャンスに思える。米軍への経済的支援を増額してでも、沖縄の基地負担軽減を計るべきで、玉城デニーが知事である間に、間隙をついて、トランプ大統領に直談判をして、日本政府の尻を突いて貰えれば、トランプ大統領の独裁も悪いものとばかりは言えないだろう。いずれにせよ、状況判断が難しい世界に突入した。まさに「Gゼロの世界」だ。


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