世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●経済大国の過去を捨て 現実的で合理的な国家像とは

2018年11月23日 | 日記
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●経済大国の過去を捨て 現実的で合理的国家像とは

外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が、今月中にも成立する可能性が高くなっている。最も、外国人労働者の受入れに前向きであろう日経新聞の社説を読んでみた。社説に書いているような議論はなされず、法務官僚と経産官僚の作文を、“め●ら判”よろしく、安倍政権は強行採決しようと企んでいる模様だ。どんなに法案に不備があっても、現行の技能実習制度を残したまま、見切り発車しようとしている。

東京などに住んでいる者の多くは、生活実感として、コンビニ、外食、介護、建設現場等々において、外国人労働者が働いている姿を見ているので、経済界から、人手不足の悲鳴が、政権に届いているのが実情なのだろう。来年の統一地方選や参議院選を、少しでも有利に戦うためには、この法案の成立は、安倍政権の死活問題になっていることが、よく判る。選挙を有利に展開したい安倍官邸の喫緊の課題なのだと理解すべきだ。ゆえに、法案の中身の詮議は、無意味だとも言える。実際問題、このような法案の成立が、安倍政権の思惑通り、選挙に有利に働くかは不透明で、逆効果の可能性もおおいにあるのだが。

野党側の指摘する問題が火を噴くのは、安倍晋三が、総理の座を3年無事経過した後に生じる弊害だろうから、痛くも痒くもない法案の欠点なのである。安倍政権の成立させた法案や経済政策の多くは、安倍晋三が、ただの山口県出身の元総理になった後に副作用や後遺症が生じるものが多いようだ。それゆえに、安倍晋三は「今だけ金だけ自分だけ」と揶揄されるのも納得だ。いま世界は、自由貿易経済、保護貿易経済か鬩ぎあいがスタートしたわけで、今までの自由貿易とグローバル経済に疑問の声が上がりはじめていると云う事実を無視出来る状況にあるとは思えない。

日経新聞の社説では、“日本の成長基盤づくりにつながる重要法案”と決めつけているが、日本の成長基盤と云う前に、“日本の成長”の是非と云う議論もしないままに、成長しなければならないと、「信仰」のような地点から論が進められている。

本質論として、日本にとって、成長すると云う意味は、どうも経済成長すると云う一点突破な考えに収斂されているようだが、問題は、本当にそうなのか?と云う問題だと思う。少子高齢化構造の国家においては、合理的に、あり得ない妄執の世界に引き摺り込まれている感が否めない。国の価値を経済的豊かさに求めるとしても、それがイコール経済成長と同一線上にあると決めつけるのは、短絡的に過ぎるのではないだろうか。


行政を預かる総理大臣としては、或いは選挙で勝ち抜き生き残る立法府の政治家にとっては、メディアの経済至上主義言説により、守銭奴う根性に蝕まれている、彼ら(有権者)の要望に応えないことには、政治家ではなく、只の人になると云う悪しき図式がまかり通っている所為なのだろう。その意味では、政治とは、与野党問わず、経済至上主義者で、時折、国家主義者や人道主義者になる厄介の国民のニーズに応えようとするのだから、碌な政治が行われないのは当然だ。しかし、これが民主主義であり、愚衆政治に 繋がるのだろう。

では政治に期待できない国家像は、いつ、どのようにして生まれるのか、とんと見当がつかない。日本において、哲学者や社会学者や宗教家が、これからの日本の国家像を提示できるだけの環境はまったくない。一部に、それなりの主張はあるものの、メジャーな広がりを見せる気配はない。個人的には、定常社会、或いは下降経済下でも生き残れる国家像を見出すことは可能だと考えている。経済成長神話は、一時期(バブル崩壊、リーマンショック、原発事故等)バッシングを受けたが、既得権益層の逆襲により、早々に元のさやに戻ったわけだが、既得権益層の牙城は堅牢だ。容易なことでは崩せないだろう。

しかし、このような堅牢な既得権益層も、いずれは一敗地に塗れ、日本軍のように総崩れになるのも、時代の要請だと考えている。総崩れするまで、国民は誤った道をまっしぐらに政治家の号令の下、走らされるが、最終的には、ぐうの音も出ない状況で、肌感覚で諦めると云うのが現実なのだろう。

ただ、20代、30代の人々の中に、退廃的な国家観があるのは、残念なようだが、実は、幸運の兆しだと考えている。経済力でしか、国の価値を勘定できない人間から見れば、それは“負け犬根性”なのだが、案外、日本のこれらからの付加価値を高める駆動力になるのではないかと、淡い期待を抱いている。我々は、日本の現状と、20年後だけを考え、ジャパン・アズ・NO1を忘れよう(笑)。



 ≪社会不安招かぬ外国人政策へ議論深めよ
外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が、13日の衆院本会議で審議入りする。日本の成長基盤づくりにつながる重要法案だが、問題は社会不安を防ぐ手立てを含めた新しい制度の全体像がみえないことだ。明確な説明を政府に求めたい。

介護、建設、農業など14業種が対象の「特定技能1号」、熟練者を想定した「同2号」の新たな在留資格について、取得するための能力基準は曖昧なままだ。家族の帯同と長期滞在を認める2号の対象業種と併せ、はっきり示さなければ議論は深まらない。

政府は人手不足の状況に応じ、業種ごとに外国人労働者の受け入れの停止を判断するとしている。肝心なのは、何を根拠に判定するかだ。日本人の雇用への悪影響を防ぐため、外国人の受け入れの調節は重要になる。具体的な方法を政府は明示すべきだ。

先進国では外国人労働者の受け入れにあたり、一定期間求人を出して国内では充足されないことを確認する、といった労働市場テストが普及している。こうした仕組みを取り入れるべきだろう。

問われているのは、社会に混乱を起こさず外国人の受け入れを広げる、責任ある政策である。

低賃金で外国人労働者を雇う企業が増えれば、国内労働者の待遇も悪化しかねないとの指摘がある。低賃金の労働力に頼って生産性向上が遅れるのを放置しないためにも、外国人の労働条件の監視を強める必要がある。

とりわけ国会審議に求められるのは、外国人が日本で支障なく生活するための環境整備の議論だ。今回の法案が従来のようなその場しのぎの受け入れ策ではなく、正面から外国人労働者を迎え入れるためのものであるなら、生活支援はより重要になる。

日本語学習や住宅の確保、子どもの就学などの支援策に関して、議論を尽くす必要がある。

社会保障をめぐっては、外国人が母国にいる家族を健康保険の被扶養者にし、家族が母国で使った医療費を日本の健保に請求する悪質事例もある。厚生労働省は扶養家族に日本国内の居住という要件を設ける検討をしている。こうした社会保障制度の持続性を考えての見直しは妥当だろう。

違法残業などが後を絶たない技能実習制度をこのまま続けることには問題がある。抜本的な見直し作業も並行して進めるべきだ。  

≫(日本経済新聞2018年11月13日付社説)


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