世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●噴火警報と風評被害 火山と温泉と観光、1200年の使用料か?

2015年05月09日 | 日記
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●噴火警報と風評被害 火山と温泉と観光、1200年の使用料か?

箱根町の観光事業関係者から、いかにも箱根全体が危険なように思われて心外だ。「風評被害にもなりかねない」と云う経済的事情による嘆きが語られている。しかし、昨年9月の御嶽山の噴火において、紅葉シーズンの重なったためか、噴火警戒レベルを1のままとした結果、63人の犠牲者を出した記憶は鮮明だ。この経験から早期にレベルを上げたことは、予防原則の立場からも当然の警報である。

箱根山大涌谷周辺は御嶽山よりも噴火口が広く分布しているので、大爆発を起こすことは少ないと云う説もあるが、科学上の学説に寄り添うことで、大惨事になることは避けるべきである。たしかに、箱根じゃなくても良かったから、行き先を変える人も出てくるだろう。その結果、観光業に一定の経済的損害が出るのも事実だろう。だからといって、“噴火は大したことありません”とか、“温泉旅館ホテルには影響は皆無です”等と言って「風評被害」だと語るのも如何なものだろう。

箱根の湯歴史は古く、時は奈良時代にまで遡る。西暦738年に釈浄定坊が発見した「惣湯」(湯本温泉)でこの温泉は現在も使われている。日本で広く知られるようになったのは、1590年の豊臣秀吉の小田原征伐からのことのようである。江戸時代になると、箱根七湯とか箱根八湯と呼ばれ、湯本、塔之沢、堂ヶ島、宮ノ下、底倉、木賀、芦之湯。プラス姥子の湯として認められるようになった。観光地や別荘地等々ポピュラーになったのは、明治以降だと云うので、観光業の生業として明確になったのは1919年辺りからのようなので、見出しの1200年は大袈裟で、100年くらいと云うのが正確かもしれない(笑)。

まあ、箱根温泉の歴史はさておき、御嶽山の噴火以降、国内の火山活動は活発になっている。火山の周辺が温泉等々の関係で、日本の観光地になりやすいわけだが、火山あっての観光地であったことを、観光業者の人々は受け入れるべきである。阿蘇山中岳、蔵王山、吾妻山なども予防原則を十分認識すべきだろう。巨大地震と火山噴火には最近は連動性が、顕著なのだから、火山活動の活発と予防原則と社会的被害の問題は、政治が解決するのが当然だろう。つまり、科学的合理性と社会的合理性は、時に対立するものなので、その調整をするのが政治の役割だと思う。実は、原発事故、再稼働問題にも、この対立ゆえの、歪んだ決定がなされていると云う事だ。

 現法規では、この予防原則に沿った社会的損失に対し、経済的損失を蒙っても、何らの補償もないのが現状だが、「風評被害」だと、イギタナイ言葉を話させないためにも、最低限の救済措置は講じても良いのではないだろうか。気象庁が「風評被害」にまで、忖度をするようでは非常に拙い。しかし、殆ど何事もなく過ぎれば、観光業者は気象庁に恨みの目を向けるに違いない。本来であれば、長期間に亘り、火山と温泉のお陰で生業をしてきたのだから、火山地形温泉の使用料だと割り切って欲しいところだ。

こう云う事は、筆者だから言えるわけで、政治や行政に関わる人たちは言えない言葉だ。であるなら、これだけ火山活動の活発な周期に入ったことを契機に、予防原則の概念を明確にし、その原則が躊躇なく出せる社会整備が必要と云う事だろう。これこそが、政治のすべきことである。戦争をしないで済んでいる国民に、戦争のリスクを背負えとか、原発のリスクも負えとか、観光県を目指す沖縄に恒久的米軍基地を作れとか、やらなくても良いことはする。やらなければならないことはしない。これじゃあ、選挙にも行かなくなるのは当然だ。最後はまたまた、政府への悪口で終わった。

 ≪ 箱根山、風評被害を懸念 神奈川県が情報発信強化へ
小規模な噴火が発生する恐れがあるとして、気象庁が箱根山(神奈川県箱根町)の噴火警戒レベルを「2」(火口周辺規制)に引き上げたことを受け、神 奈川県は7日、緊急対策会議を開催した。黒岩祐治知事は会議で「安全は第一だが、風評被害も抑えていかなくてはならない」と強調。正確な情報発信を強めるため、統括責任者を設ける意向を示した。
 箱根町も同日、箱根温泉旅館協同組合と今後の対応を協議した。町はホームページ上で規制エリアの地図を示すとともに、大涌谷以外の観光にはほとんど影響がないことを強調する「観光客の皆様へ」と題する文書を掲示した。
 気象庁によると、箱根山では7日午前0時~午後3時に10回の火山性地震を観測。116回を観測した5日と比べると6日以降減少しているが、同庁は「火山性地震は多い状態が続いている。火山活動が終息に向かっていると判断できる段階ではない」としている。
 気象庁は6日朝、マグマで熱せられた地下水が噴き出す「水蒸気爆発」が起こる可能性があるとして、箱根山の大涌谷周辺に火口周辺警報を発表。噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。
 これを受け、箱根町は6日、大涌谷周辺の半径300メートルに避難指示を出した。大涌谷に向かう県道は通行止めになり、ロープウエーも全線運休するなどしている。
 一方で「立ち入りが制限されるのはごく一部の地域なのにあたかも箱根全体が危ないようなイメージになっている」(県災害対策課)と、観光業などの風評被害を懸念する声も上がっている。 ≫(日経新聞)


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