世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●アメリカ国力の減少と中露の抬頭 経済・軍事で補完する日本

2015年05月02日 | 日記
秘密と嘘と民主主義
クリエーター情報なし
成甲書房


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●アメリカ国力の減少と中露の抬頭 経済・軍事で補完する日本

まあ、そんなことだと思っていたが「安倍晋三ツイッター」は、山本一太が書いている事が、ほぼ確実になった。山本は、おそらく安倍晋三になり替わり、反安倍の言論空間を徘徊し、ネット世界の管理部長と云う役目を仰せつかっている可能性が強くなった。夜な夜なと云うか、四六時中、山本一太は、二つのアカウントに“つぶやき”を入れている事がほぼ判明した。

間違って入れたとか、首相のツイッターを乗っ取ったなんて話じゃなく、そもそも、同氏が請け負っているのだろう。時折、大チョンボして、菅辺りから、大目玉を喰らい、訂正どころか、白々しく削除するお点前はチョロチョロ男にはお似合いだ。Wikipediaを覗いて見たら、おまけの様な特命大臣も退任、世耕とタッグを組み、自由民主党総裁ネット戦略アドバイザーになっている。要するに、閑職の中大教授なんて肩書で、暇を持て余し、山本ならではの夜警職に就いているのだろう(笑)。

さて本題だが、本題と云うほどの重要なコラムではないが、欧米諸国と云うか、アメリカンと云うか、彼らのプロパガンダな味つけタップリでありながら、「行動主義」から「口先介入主義」に変貌するアメリカの実態を、嘆きながら語っている。『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』著者のコラムである。コラムでは、幾つか中国、ロシアに関する「捏造情報」も混入されているが、知らない人間が読めば、すんなり成る程と思ってしまいそうな著書である。しかし、この著書には、アメリカの衰退を示唆する事実や、覇権国から脱落するリスクについて、アメリカ人自身を厳しく糾弾している点が面白く、且つ、現実的な悩みであることを露呈している。

911やイラク戦争、シリア、ウクライナ介入など、東西冷戦さながらの諜報合戦も、結局のところ、アメリカの力が、あらゆる部分で相対的に落ちてきた証左だと言えるのだろう。ロシア・プーチンや中国・習の野心を叩いているようだが、アメリカンな価値観で地球が動かなくなって、このコラムの書き手であり、『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』著者であるスティーブンズは、被害妄想の罠に嵌ってしまったようだ。ダイアモンド社が出版するはずのピューリッツァー賞受賞者だが、読んでみて判るがピューリッツァー賞なんてのも、アメリカプロパガンダ報道の賞だと考えておいても良さそうだ。そのような事実は、ノーム・チョムスキーによって既に暴かれている。

昨日のコラムでも言及したが、「資本主義」と「民主主義」は地球規模の大惨事(第一次世界大戦、第二次世界大戦、大恐慌‥等)が起きることで、マネーのエリートたちが、その地位から脱落する。富の差別は、民主主義の補正機能は焼け石に水程度で、殆ど効果を見せないので、格差と云うか、差別的不平等は日増しにその差を広げることになる。ゆえに、地球規模の大惨事が必要と思う勢力もいるが、それを望む一般の市民は殆どいないだろう。大惨事でしか、平等、機会均等が得られない「資本主義」と「民主主義」は幻想に近い正体を現しつつあるのが、21世紀なのだ。

このコラムで、最も重要視できる点は、アメリカの国力が、地球上の争いに口出しは出来るが、国家レベルの軍隊を送れなくなっている事実を示している。今回の安倍訪米における歓待は、アメリカの世界警察の補完機能として、自衛隊を使おうとしているのは見え見えで、論を待たない。安倍や一部の跳ねかえり勢力は、アメリカの今後には不安が残る。核の傘は信用できない。いずれは自前で自国を守る必要がある。最終的には、核を保有せざるを得なくなるだろうと本気で思っている節もある。まあ、100年単位なら起こり得る事と言えるだろう。


≪『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』(ピューリッツァー賞受賞者、ブレッド・スティーブンズのコラム)

 ★アメリカ人はもう「世界の警察」を続ける気がない 中国が暴走したとき、アメリカは日本を守るのか?(1)
【オバマが「われわれは世界の警察官であるべきではない」と語り、アメリカ人の半数が「よその国のことには口出しするべきではない」と考え始めている。『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』の著者でもあり、ピューリッツァー賞受賞・WSJコラムニストが予測する、世界が無秩序に陥るシナリオとは。】

 ■アメリカ国民は もう世界の平和に関心がない
 アメリカ人が世界指向だった時代は終わり、世界に無関心な時代に急速に代わりつつある。
 ピュー・リサーチセンターが二〇一三年秋に行った世論調査によると、アメリカ人の五二%が、アメリカは「よその国のことには口出しするべきではない」と考えていた。一九六四年に初めて同様の調査をしたとき、この割合は二〇%、二〇〇二年は三〇%で、過半数を超えたのは二〇一三年が初めてだった。  この傾向は支持政党の違いを問わず幅広く見られる。別のピューの調査によると、「国際問題に積極的に取り組むことがアメリカにとって最善である」 と考える共和党保守派は、二〇〇四年は五八%いたのに、二〇一一年は三九%まで減った。また支持政党を問わず五八%が「外国の問題への関心を縮小」し、六五%が「外国での軍事的関与を縮小」することを支持した。 ロシアのクリミア侵攻後にピューが行った調査では、五六%(共和党支持者に限ると五〇%)が、「クリミア問題に深入りしすぎない」ことが重要だと考えていた。「ロシアに厳しい姿勢」で臨むべきだと答えたのはたった二九%だった。

 では、外交政策に関して、アメリカ国民はオバマ政権にどんなメッセージを送ってきたのか。

 それは基本的に、「外交政策について、国民は多くを聞く気も、知る気もない」というものだ。これもホワイトハウスの態度とそっくりだ。「(シリア の)反政府派に武器を供与するか否かをめぐる議論が再燃したとき、オバマが高官級会議で強力な意見を口にすることはめったになかった」と、ニューヨーク・ タイムズ紙は報じている。

 オバマもアメリカ人も、なぜそんなに無関心を決め込んでいるのか。その理由は「イラク」と「不況」の二つに集約できる。

■「中東」と「不況」が アメリカを孤立主義に傾けた
 イラク戦争という破滅的な冒険を強行したために、アメリカの財政は破綻し、経済難に陥った。 「過去一〇年以上にわたり、わが国は一兆ドル以上を戦争に費やし、赤字を爆発的に増やし、国内の国家建設を進める能力を削がれてきた」と、オバマ は二〇一三年五月に語っている。しかし二〇〇九年二月一八日、オバマは景気対策法案に署名することで、国防総省が過去一〇年間にイラクで費やした金額(七七〇〇億ドル)を上回る金額(七八七〇億ドル)を一日で支出した。

 またアメリカの「赤字が爆発的に増えた」のには多くの理由がある。二〇〇一年以降、毎年三三兆ドルを超える歳出もその一部だ。それに比べればイラクとアフガニスタンで費やした約一兆五〇〇〇億ドルなど微々たるものだ。

 アメリカが世界に無関心なのは、イラクとアフガニスタンで苦い経験をした結果、世界の警察官の役割は割に合わない場合があると気づいたせいでもあ る。第二次世界大戦後の日本やドイツなら、あるいは冷戦後のポーランドなら、「国家建設」にアメリカの富とエネルギーを費やす価値はあったかもしれない。 だが、バグダッドやカブールで国家建設を進めても、まともな成果が期待できるはずはなかった。

 そもそもイラクやアフガニスタンが、イスラム世界全体の手本となる民主主義国になる可能性などあったのか。これは当然の疑問だ。アメリカ人がい ま、外国に介入することを嫌がっているのは、アメリカの中核的利益と周縁的利益の間にはっきりと一線を引き、周縁的利益のためにエネルギーを浪費したくないと思っているからだ。

 アメリカ経済の低成長が六年目に入ったことを考えると、アメリカ人がシリア内戦やフィリピン近海の領有権争いよりも、自分の給料や次の仕事を心配 するのは無理もない。国際環境がアメリカにとってさほど大きな脅威ではないのだから、アメリカ人が世界に無関心なのも当然だと指摘する声もある。

 ■中国、ロシア、イランの暴走を 止める力はもうアメリカにはない
 冷戦時代は、アメリカのどの都市にもソ連のICBMが三〇分で到達する可能性があったから、一般市民にとっても外交は非常に身近な問題だった。だが冷戦は終わった。アメリカ人はいまほかに心配するべきことがある。まずは自分自身だ。

 だとすれば、アメリカが総じて世界に背を向ける時代に突入したのも驚きではない。その論理は表面的だが説得力があり、政治的に強烈なアピール力がある。だから少なくとも一期目のオバマは、外交政策で高い支持を得ていた。

 また草の根保守派運動ティーパーティーや、ランド・ポール上院議員など自由主義的な考えを持つ共和党議員は、一九七〇年代にジョージ・マクガバンがベトナムからの撤退を訴えて、「アメリカよ、帰ってこい」と唱えたのと似たスローガンを訴えている。

 これまでの経過を見る限り、何をやってもアメリカは黙認するだけだと見込んで、世界秩序に挑戦する行為は増える一方だ。

 バシャル・アサドは今後もシリアの独裁者として君臨し続けるのか。だとすれば、それはレバノンやイラク、ヨルダン、イスラエルにどんな影響を与えるのか。

 中国政府は、世界の海上輸送の三分の一が通過し、世界屈指のエネルギー資源が眠る南シナ海を中国の湖にしてしまうのか。

 イランは核兵器を獲得するか、獲得に限りなく近づき、危機感を覚えたサウジアラビアまでが独自の核開発に乗り出すのか。プーチンはNATOの弱腰に乗じて、旧ソ連諸国への影響力をいっそう強めるのか。

 中国経済のバブルが崩壊したら、あるいはユーロ圏が再び激しい不況に見舞われたら、あるいはアベノミクスが抵抗勢力によって本格的な構造改革を阻まれて失敗に終わったら、アメリカ経済は世界経済を牽引できるのか。

 アメリカが世界秩序を維持する役割を拒否するなか、悪夢のシナリオの現実味は高まっている。


★戦後70年、自由民主主義の終焉は近い 日米安保は尖閣諸島で守られるのか?(2)

■「自由民主主義」がもたらす平和とは ただの幻想だったのか

 サミュエル・ハンチントンは一九九〇年代初め、「アメリカ・モデルが強さと成功を体現しなくなり、勝利モデルとみなされなくなったなら、何が起き るのか」と問いかけた。長引く戦争、財政の悪化、政治の麻痺という泥沼にはまったアメリカは、世界の国にとって必ずしも最高の手本ではないようだ。

 イランのマフムード・アハマディネジャド大統領は二〇〇六年、ジョージ・W・ブッシュ大統領に宛てた書簡で、「物事の本質が見える人間には、すでに自由民主主義体制のイデオロギーと思想が破綻して崩壊する音が聞こえる」と書いた。「世界じゅうで人々は最大の中心すなわち全能の神に向かいつつある」。

 アメリカが金融危機のまっただなかにあった二〇〇八年、旧ソ連の諜報機関KGBの元工作員イーゴリ・パナーリンが、アメリカは二〇一〇年までに六 つの国に分裂すると予測していたことが明らかになった。その場合、「ロシアがアラスカの領有権を主張するのはまっとうなことだろう」と、パナーリンはさらりと述べている。

 アメリカ議会の予算審議がまとまらず、連邦政府が一部閉鎖された二〇一三年九月には、中国の国営メディアが、「脱アメリカの世界構築を検討すべきときがきたのかもしれない」と指摘して、大きな議論を巻き起こした。

 一九二〇〜三〇年代も同じことがあった。「西欧列強は、自らの勝利が自らのイメージする時代の到来をもたらすことを願っていた」と、歴史家のノーマン・デービスは書いている。

 デービスによると、一九一四年のヨーロッパには一九の王国と三つの共和国があった。それが一九一九年までに王国は一四、共和国は一六になっていた。しかし民主主義は根づかなかった。「毎年のように、どこかの国で民主的な憲法が独裁者によって踏みにじられた。理由は一つではないが、西欧列強に自らのつくり上げた体制を防衛する能力がなかったことは確かだ」

 ■クリミア、イスラム国…… 撤退するアメリカが生んだ世界的無秩序
 現代も同じように、政治及び市民の自由が八年連続で縮小していると、アメリカのNGOフリーダムハウスは報告している。 「自由はクーデターや内戦によって損なわれているが、……同様に重要な現象は、いわゆる現代版権威主義の実践者たちが、些細だが究極的には効果的 なテクニックを駆使していることだ。この手の指導者たちは、反対派を潰すのではなく機能しないように陥れ、規律や正当性や豊かさをうわべだけ維持して、法の支配を愚弄することに全力を注いでいる」。

 これはロシアのウラジーミル・プーチン大統領、イランのハッサン・ロウハニ大統領、中国の習近平国家主席、トルコのレジェップ・タイップ・エルド アン大統領、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領、エクアドルのラファエル・コレア大統領、そしてハンガリーのビクトル・オルバン首相に当てはまる。*筆者注:(アメリカにも、ウラジーミル・プーチン、習近平国家主席に対抗する、個人ではなく、アメリカン・システムがあるので、目くそ鼻くその話に過ぎない。)

 プーチンは二〇〇五年に、ソ連崩壊は二〇世紀で「最大の地政学的悲劇」だったと語った。

 プーチンの外交政策は、旧ソ連全体とはいわずとも、少なくとも昔の影響圏を再建するために一貫したアプローチを取ってきた。たとえば北京夏季五輪の真っ最中にグルジアに侵攻し、ソチ冬季五輪の直後にウクライナ領クリミア半島を制圧した。

 ウクライナ東部では選挙結果を改ざんして偽情報を流し、覆面ロシア兵を派遣して親ロ派の分離独立運動を支援し、特殊部隊を展開した。キルギスタン 政府には賄賂を渡し、旧ソ連諸国には真冬にパイプラインをストップし、ロンドンでロシア人ジャーナリストを殺し、エストニアにサイバー攻撃を仕掛けた。

 その一方でプーチンは、ソ連時代の真髄ともいえるものを多数復活させた。形だけの民主主義、プロパガンダ化したマスコミ、政敵の見せしめ裁判、犯罪目的での国家権力の乱用、そして旧エリート層ノーメンクラツーラの復活だ。

 イランも状況は同じだ。アメリカがイラクとアフガニスタンからの撤退を進めるなか、イランはイラクとアフガニスタン西部を影響圏に入れる意欲をあからさまにしてきた。さらにイランは、子分的な存在であるシリア政府のために戦う意志も隠そうとしない。

 レバノンのイスラム原理主義組織ヒズボラや、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスにも堂々と武器を供給してきたし、シーア派が多数を占める バーレーンに対してイランの歴史的領有権を主張し始めた。こうした行動の一部は、伝統的なペルシャ・ナショナリズムに由来するが、より大きな影響を与えているのはイスラム復興運動だ。

 ■尖閣諸島を虎視眈々とねらう中国と 弱腰のアメリカ
 中国でも同じことが起きている。小平は一九八四年、中国政府はイギリスからの返還後も五〇年間は香港の自由を尊重し、台湾との再統一が「一〇〇年以内に実現しなくても、一〇〇〇年以内には実現する」と誓った。

 しかしの戦略的忍耐ドクトリンとも呼ぶべきものは、一九九七年のの死とともに死んだ。その後継者である胡錦濤は、二〇一一年一二月の中央軍事委員会で、中国海軍は「変革と近代化を断固として加速させ、戦闘への備えを拡大させるべきだ」と語った。

 誰に対しての戦闘か。それは「みんな」のようだ。それから一年のうちに中国は初の空母を就航させ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、日本にケンカをふっかけた。オバマ政権は二〇一二年九月、中国が領有権を主張する尖閣諸島が攻撃された場合、アメリカは日米安全保障条約に基づき日本を防衛するとの立場を明らかにした。

 その翌年の一二月、中国海軍の艦艇が南シナ海でアメリカ海軍の巡洋艦カウペンス(一〇億ドルのイージス艦だ)の前方にまわり込み、あやうく衝突しそうになった。

 同時に中国は、アフリカ、中南米、東南アジアの従順そうな資源国に低金利融資や開発援助をちらつかせて接近するグローバル戦略を進めた。ベネズエ ラだけでも、二〇〇八年以降三六〇億ドルが中国から流れ込んだ。おかげで、とうの昔に財政破綻していたはずのベネズエラ政府は、莫大な対外債務を返済することができた。

 イラン、ロシア、中国の政策当局者たちは、アメリカはアメリカ本土が攻撃されたのでない限り武力行使には踏み切らないと見越して、ますます大胆な行動に出ている。

 イランやロシアや中国の行動がどこまで大胆になれば、アメリカ大統領は重い腰を上げるのか。修正主義の国々は、どうすれば国際的な規範を尊重する ことを学ぶのか。アメリカは説得と道徳的な模範を示すだけで、世界秩序を強制できるのか。アメリカの武力行使に対する消極的な姿勢は、どこまでいくと敵の 攻撃を促すことになるのか。

 そしておそらく最も重要なことは、アメリカの消極性はどの時点で同盟国の戦略を変え始めるのか。

★アメリカが安部首相の 靖国参拝を引き止める本当の理由(3)
【米バイデン副大統領は一時間に渡り、安部首相に靖国参拝を自粛するよう説得を続けた。アメリカが首相の靖国参拝を引き止める本当の理由とは?『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』の著者でもある、ピューリッツァー賞受賞・WSJコラムニストが分析する。】

■安倍首相の靖国参拝を アメリカはなぜ恐れたのか
 アメリカがドイツや日本、韓国といった国に核の傘を与えているのは、これらの国が自ら核を獲得する必要性を感じないようにするためだ。また、それだからアメリカは最近まで、同時に二つの大戦争を戦えるだけの軍事力を維持してきた。

 それはアメリカ軍が中東に展開していても、日本などの国の安全保障が脅かされることはないと安心させるためだった。こうした責任を担うコストと、その履行に伴うリスクを引き受けているからこそ、アメリカは同盟国の戦略的選択肢に甚大な影響力を持つ。

 その影響力は一九九一年の湾岸戦争時に効果を発揮した。このときイラクのサダム・フセインは、イスラエルにスカッドミサイルを撃ち込んだが、ジョージ・W・H・ブッシュ大統領はイスラエルを説得して、イラクに対する報復攻撃を思いとどまらせた。

 そのためにアメリカの戦闘機の展開計画は変更を余儀なくされ、特殊部隊はイラクの移動式ミサイル発射装置を破壊しなければならなかった。つまりア メリカ兵の命を危険にさらす必要があった。しかしそのおかげで、アメリカはイスラエルを防衛する明確な意志があることをイスラエルのイツハク・シャミル首相に納得させ、イスラエルとの同盟関係を維持するという、より大きな国益を守ることができた。

 オバマもいま、イスラエルにイラン攻撃を思いとどまるよう説得しているが、イスラエルの指導者たちはその前提となる約束が軽視されているように感じている。そのためイスラエルは単独で行動を起こす誘惑に駆られている。 波紋が及んでいるのは中東だけではない。

 二〇一三年一二月、ジョー・バイデン副大統領は日本の安倍晋三首相と一時間ほど電話で話し、第二次世界大戦の戦犯を含む二五〇万人の戦死者をまつる靖国神社への参拝を思いとどまるよう説得を試みたが、失敗に終わった。

 ■核の傘がゆらいだとき 日本は軍国化する?
 安倍がバイデンの要請を断固拒否したのは、彼自身の愛国主義的な考え方のせいもあるだろう。しかしその前月に中国が突然日本の尖閣諸島を含む防空識別圏の設定を発表したとき、バイデンがはっきり中国を非難しなかったせいでもある。

 「水面下では、いつかアメリカが日本を防衛する能力または意欲を失うのではないかという不安が大きくなっている」と、ロイター通信は報じた。「このため安倍は、海外における軍事行動を制限した憲法解釈を改め、空軍力と海軍力を強化する意向を一段と強めた」。

 拓殖大学の川上高司教授(国際政治学)は、「いまは日米関係で最も危険な時期の一つだ」と警鐘を鳴らした。「日本は孤立感を抱いており、自立しなければと考える人が増えている。アメリカに対しても同じだ」と語った。

 フリーランス外交が拡大したら、ほかにはどんなことが起きるだろう。より多くの国が核開発に乗り出そうとするの はほぼ確実だ。中東に核保有国が三〜四ヵ国あったら、つまりイスラエルとパキスタンだけでなく、イラン、サウジアラビア、トルコ、場合によってはエジプト、さらにはアルジェリアまでもが核を持ったら、世界はより安全な場所になるのか。これらの国は政情や同盟関係(暗黙の同盟関係もある)がめまぐるしく変わるなか、互いにいがみあっている。

 イランにウラン濃縮活動が許されるなら、ほかの国も核開発の選択肢を残しておいてはなぜいけないのか。二〇一三年、日本とトルコは原子力協定に調 印した。朝日新聞(英語版)によると、この協定には、「トルコが将来ウラン濃縮と、核兵器の原料にもなるプルトニウムを取り出すことを可能にする条項」が 含まれている。

 サウジラビアは向こう二〇年間に原子炉一六基の建設を計画しており、二〇一四年にはヨルダンとの原子力協定に調印した。韓国はかねてから、独自の ウラン濃縮施設を確保したいとアメリカに訴えてきた。二〇一三年の世論調査では、回答者の三分の二が北朝鮮に対抗して核兵器を開発することを支持した。

 日本さえも核開発の可能性を残している。ウォールストリート・ジャーナル紙によると、日本は二〇一四年一〇月に、建設費二兆一九〇〇億円をかけた 六ヵ所再処理工場を完成させる計画(※編集部注 二〇一六年三月に延期)だが、ここは「兵器級プルトニウムを年間九トン、つまり核弾頭二〇〇〇発分を生産する能力がある」。*1

 ただし日本はまだ核兵器をつくりたいとは表明しておらず、二〇一四年三月には、核拡散防止の原則を尊重している証として、使用済み核燃料の一部を手放すことに合意した。それでも日本は、いざとなったら核兵器をつくれる権利は確保しておきたいと考えている。

 フリーランス外交が世界にはびこったら、アメリカはどう対応するのか。過去の例を見る限り、アメリカはうんざりして背を向けるだろう。「ウッド ロー・ウィルソンからジョージ・ブッシュまで、アメリカの歴代大統領は、何も見返りを求めないことをアメリカのリーダーシップの特徴と自負してきた」と、 キッシンジャーは指摘する。

 外交が高潔な道徳的規範の追求をやめて、単なる影響力の拡大競争になると、アメリカは嫌気がさして世界に背を向けるのが常だ。アメリカは元来、理想主義的である半面、幻滅しやすい。それは第一次世界大戦後、そして現在のアメリカの外交政策の圧倒的特色になっている。


 ★衰退するアメリカ軍と増長する中国を比べてみた(4)
【アメリカ軍がどんどん衰退している。米国の軍縮の一方で尖閣諸島をはじめ、南シナ海での領有権の拡大を目論む中国。アメリカの衰退と中国の台頭がもたらす混乱を『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』の著者でもあり、ピューリッツァー賞受賞・WSJコラムニストが分析する。】

■軍縮を続けるアメリカ
 実際、アメリカ軍の軍事支出のトレンドを見ると、懸念は一段と深まってくる。チャック・ヘーゲル国防長官が軍事費の大幅な削減を発表する前から、ペンタゴンの戦力は支出と反比例していた。  二〇〇一年九月一一日、アメリカ海軍は三一六隻の艦艇を保有していた。それから一〇年で海軍の予算は約一三〇〇億ドルから一八〇〇億ドル超に増えたが、保有艦艇数は二八五隻に減った。

 二〇〇一年、アメリカ空軍保有機の平均運用年数は二二年だったが、一〇年後はパイロットとほぼ同年齢の二六年に伸びた。これは主に、国防総省が転換機を十分に配備できなかったからだ。

 史上最高の単発機ともいわれるF16戦闘機は、一九七四年の初飛行を経て一九七八年までに空軍に配備された。これに対してやはり単発機のF35戦闘機は、二〇〇六年に初飛行をしたものの、早くとも二〇一五年まで配備の予定はない。

 現在、アメリカがワンシーターの次世代ジェット機を開発するのには、人間を月面に送るよりも長い時間がかかる。開発コストが安い無人機プレデターを除くと、過去一〇年間、最新鋭のステルス戦闘機F35から次期空中給油機KC‐X、さらには沿海域戦闘艦まで、ペンタゴンの主な調達計画のほぼすべてが大失敗に終わった。

 超ハイテク兵器を配備するための技術的条件が厳しくなっていることや、軍需業者に対する政治的要求や事務的要求が高まっていることなど理由はいろ いろある。いずれにしろその影響は懸念すべきものだ。アメリカ軍の調達面における「費用対効果」が低下する一方で、アメリカを倒すテクノロジーやテクニックのコストはどんどん下がっている。

 現代の戦争は、「武力か非武力か、軍事的か非軍事的か、あるいは致死的か非致死的かを問わず、あらゆる手段を駆使して、敵にこちらの利益を受け入 れさせること」だ。外交、スパイ活動、破壊工作、プロパガンダ、経済的圧力など国力を駆使した手段はみな、戦争を別の手段によって継続しているにすぎない。

 ■南シナ海で フィリピン、日本を脅かす中国
 中国が南シナ海の領有権を主張してきた背景にもこうした考え方がある。その歴史的根拠は、一九四七年に国民党政府が公布した地図に描かれた破線(九段線)だが、中国は国連海洋法条約に基づく二〇〇海里の「排他的経済水域」も中国の排他的軍事権があると主張する。

 明らかに同条約の意図的な読み誤りだが、国連は政治的にそれに反駁する立場にない。さらに中国は、政治的賄賂などを使ってカンボジアのような従属国家を手なづけ、東南アジア諸国連合(ASEAN)が共通の海洋ルールを策定するのを阻止してきた。

 また漁船や沿岸警備隊の艦艇(多くは武器を隠し持っている)を使って外国の軍艦に嫌がらせをしたり、外国の海域に侵入させたりしている。南シナ海の一部環礁とバリアリーフを占拠して、そこに常駐の前哨基地も築いた。 「どこまでやれば『これで十分』と言うのか」と、フィリピンのベニグノ・アキノ大統領は二〇一四年二月、中国の南シナ海進出に声を荒らげた。「世界じゅうが声を挙げる必要がある。ズデーテン割譲は、ヒトラーをなだめて第二次世界大戦を防ぐためだったが、逆効果だったことを思い出すべきだ」

 通常、「これでは一九三八年の繰り返しだ」と警告するのはイスラエルと決まっている。だが、アメリカの撤退後、フィリピンのように意外な場所からミュンヘン協定を引き合いに出す声が挙がっている。われわれは世界的無秩序の瀬戸際にいるのだ。
≫(ダイアモンドONLINE:ダイアモンド社書籍オンラインより)

筆者注:アメリカン思想の持ち主の「煽り本」同様のコラムは未だ続くようだが、興味のある方は、このコラムニストの著書の購読をお薦めする。アメリカンのアメリカンの為の、積極平和主義の行きつく先を眺望できるかもしれない。

撤退するアメリカと「無秩序」の世紀ーーそして世界の警察はいなくなった
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