世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

間接民主主義への不満はなぜ起きたか? 住民投票の活発化がもたらすもの

2012年05月27日 | 日記

 

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間接民主主義への不満はなぜ起きたか? 住民投票の活発化がもたらすもの


 コラムでさらりと流すには奥の深い問題だが、敢えてさらりと民主主義を実践する為に、行わざるを得ない“間接民主主義”と議院内閣制について考えてみる。勿論、この問題は諸説あり、どれが正解かと云う主張をするつもりはない。ただ、原発再稼働問題や財政の透明性とか、健全化を議論する中で見えててきた、諸問題を通して考えてみようと云うことである。先ずは以下の読売の記事を見ていただこう。

≪ 農協・建設関係者の組織戦、市民パワーに屈す
鳥取市民が下した判断は、「新築移転にNO」だった――。  20日、投開票が行われた鳥取市の庁舎整備を巡る住民投票で、耐震改修案への賛成票が新築移転案の支持票を上回った。
 耐震強度不足が指摘される現庁舎に対し、防災拠点としてのあり方や、まちづくりへの影響などを論点に、市で初めて行われた住民投票。地道に訴えを続けた、新築移転に反対する「市庁舎の新築移転を問う市民の会(市民の会)」のメンバーは喜びに浸った。一方、竹内功市長は「結果を尊重したい」とし、耐震改修を進める方針を明らかにした。
 鳥取市若桜町のビルに集まった「市民の会」のメンバーらは、耐震改修案に賛成する票が多数を占めたことが伝えられると、「やったぞ」と歓声を上げ、バンザイで喜びを爆発させた。
 同会の吉田幹男会長は「市民に正しい判断をしてもらった。市民が積極的に行政に参加していく契機にしたい」とかみしめ、浦木清事務局長は「市長の住民投票に対する情報提供の進め方も含め、市民がノーを示した結果」と話した。
 同会は昨年4月、市庁舎の新築移転について、議論が尽くされていないとする市民有志で結成した。集会や説明会などを重ね、「厳しい財政の中、新築移転にかかる75億円の建設費は、市民の暮らしに使うべき」と主張。旧町村については、各総合支所の機能充実を訴えてきた。また、投票日が近づくと、「新 築移転はもったいない」と声を上げ、デモ行進を行うなどして支持拡大を訴えてきた。一方、「鳥取市役所の新築移転を実現する市民の会」のメンバーらが集まった鳥取市今町の事務所は、重苦しい雰囲気に包まれた。
 会は昨年12月に発足し、農協や建設業関係者などを中心に組織戦を展開。市議も支持者回りに奔走し、新築移転案への賛成を呼びかけた。4月の決起集会には市民会館が満員になる1700人を集めたが、組織をまとめきることができなかったことなどから、票を伸ばせなかった。
 同会の近藤儀徳会長は「我々の説明が、市民になかなか理解してもらえなかった」と悔しさをにじませ、対策本部の副本部長を務めた市議会会派「新」会長の上杉栄一氏は「市民の間で、税金でハコモノを造ることを疑問視する流れがあった」と振り返った。≫(読売新聞)

*上記の記事以外にも、最近よく目や耳にする言葉の住民投票だが、他にも以下のような記事があった。

≪ 原発問う住民投票を都に請求 市民団体、署名32万人
 原発の是非を問う住民投票を目指して署名集めをした市民グループが10日、32万3076人分の署名を東京都の石原慎太郎知事あてに提出し、住民投票条 例の制定を直接請求した。
 請求したのは「みんなで決めよう『原発』国民投票」。昨年12月に署名集めを始め、請求に必要な有権者数の50分の1(約21万人)を超えた。地方自治 法に基づき、知事が条例制定の是非について意見を付け、6月開会の都議会に条例案を提出する。
 石原知事は「代案も出さずに言っている限りセンチメントの域を出ない」と発言し、反対意見を付ける見通し。都議会の主要会派も慎重姿勢で、可決の見通し は立っていない。 ≫(朝日新聞デジタル)

≪ 大阪市の原発住民投票条例案否決 維新・自公など反対
 関西電力の筆頭株主である大阪市で、関電が持つ原発の稼働の是非を問おうと市民グループが市に直接請求した住民投票条例案が27日夜、大阪市議会の本会 議で否決された。
 橋下徹市長率いる大阪維新の会、公明、自民、OSAKAみらい(民主系)の各会派が反対し、共産だけが賛成した。脱原発依存の立場をとる橋下市長は費用 面などを理由に反対意見を議会に伝えていた。維新は「単に賛否だけの意思表示は必ずしも依存度低下につながる最適の方法ではない」と反対理由を述べ、公明 も同調した。
 自民は、条例案にあった16歳以上の投票年齢を20歳以上に引き上げ、永住外国人には投票権を認めない修正案を出したが、これも否決された。 ≫(朝日新聞デジタル)

≪「浜岡」住民投票へ署名開始=原発立地県で初―静岡
 運転停止中の中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の再稼働の是非を問う住民投票を実現させようと、市民団体「原発県民投票静岡」が13日、静岡市内 などで署名集めを始めた。原発の賛否を問う住民投票活動が原発立地県で行われるのは初めてという。
 請求代表者の一人で同県磐田市の鈴木望前市長は「良くも悪くも県民に巨大な影響を与える浜岡原発再稼働の是非に県民の意思を反映させたい」と意気込みを 訴えた。署名した静岡市内の男性会社員(38)は「浜岡が必要な人も不必要な人もいると思う。大事なことは住民の声で決められればいい」と話した。≫(時事通信) 

≪ 与那国町、自衛隊誘致で住民投票条例請求へ
 【与那国】与那国町が進める自衛隊誘致をめぐり、誘致反対派町民でつくる与那国改革会議(崎原正吉議 長)が、誘致の是非を問う住民投票条例の制定を町側に直接請求するため、今月30日にも手続きを始めることが24日、分かった。地方自治法第74条に基づ き町選挙管理委員会に住民投票条例案など必要書類を提出し、1カ月以内に請求に必要な有権者数の50分の1以上の署名を集める。
 崎原議長によると条例案では、町が2004年に実施した市町村合併の是非を問う住民投票で投票権を中 学生以上に設定したことを踏まえ、今回の投票権も中学生以上に設定する予定。
 町選管によると、町内の有権者数(20歳以上)は今年3月2日現在で1232人。署名が直接請求に必 要な約25人を上回ることは確実とみられる一方、条例案を審議する町議会(議員6人)は誘致賛成派の議員が過半数の4人を占め、条例成立は不透明な状況 だ。
 このため、同会議は町長の解職や町議会の解散が請求できる有権者数の3分の1以上の署名数を集め、条例案の可決を目指す。≫(沖縄タイムス)

 その昔は、首長へのリコールなどが中心だったが、最近は様相を一変させている。具体的に観察すると、間接民主主義ではタイムリーに民意を反映させていないと云う住民側の反旗のようにも取れる。野田佳彦やクーデター民主党議員を見ていれば、簡単に肯ける話だ。正統な見方をすると、間接民主主義の欠点を、住民投票と云う直接選挙的手法で補完すると云う役割だともいえる。この傾向に拍車を掛けたのが、原発事故で見せつけられた政治家や官僚、学者、マスメディアの堕落ぶりだったろう。原発事故の重大なる被害を奇禍とするのであれば、住民自治への目覚めが、日本の似非民主主義に“魂”を入れるきっかけになるなら、せめてもの救いである。

*根本的なことを言えば、日本の代議制民主主義においては、国会議員であれ、地方議員であれ、選挙中における有権 への歩み寄りと云うか、親密性はその時のみのものであり、当選後は代議として選んで貰った有権者の意見を集約して政治行動をしているとは言えないのが現状なのである。当選してしまえば、党利党略や特定利益集団の為に活動すると云うの事実がある。間接民主主義の、ここが重大な欠点である。ただ、このリアルタイムな民意を知る住民投票を野放図に拡大していくと、常に直接民主主義的手法を行使せざるを得なくなり、結果的に民主主義そのものの否定にも繋がる。

 現在は原則的に国家レベルの住民投票(国民投票)は憲法との兼ね合いで、行われたとしても、法的拘束力を持たせることは出来ない。国権の最高機関が国会と規定されているからだ。たしか“みんなの党”の何がしかが“原発国民投票法案”を提出したが、そこでも国民投票の結果に国会は法的制約を受けないとなっている。原発問題において、これ程判りやすい投票はないだろうが、チョット待てと云う考えにも至る。

 なぜなら、原発事故を受けて、放射能汚染などに敏感に反応するだけで、国家のエネルギー政策を安易に決めて良いのか?と云う疑問と、法的拘束力のない投票を国民レベルで行う投票コストと云う問題もある。無駄骨、気休めに過ぎないのではないかと云う疑問である。この点は、興味本位で聞いてみました、と云うマスメディアの世論調査と効力的に変わらないのであれば、実施する意味などないだろう。しかし、仮に“原発国民投票法案”が行われたとして、脱原発が過半数を制した場合、現実には政党や各政治家は、その結果を無視する事は出来なくなる可能性が高い。それが代議制の本質だからだ。国会での投票行動などは判明してしまうし、政党の選択も公開される。つまり、間接民主主義であっても、国民投票や住民投票の結果には左右されるのである。

 住民投票にせよ、国民投票にせよ、現時点の“民意”を知る意味では有力な民主主義のツールである。間違っても、マスメディアが誘導だか、捏造だか知らないが度々行う“世論調査”などのマスコミ論調に比べれば、余程ましではあるが、充分ではない。現実に住民投票や国民投票をする場合には、条件が必要だ。無知のまま、情緒に流され投票行動を起こす条件下での投票は駄目だろう。単なる感情論であり、そのジャッジすべき課題への知識なしは、それこそ民主主義を否定する事にも繋がる。

 間接民主主義の代議を補完する住民投票、国民投票に最も欠かせないのが「情報の公開」である。その課題に対し、行政側が抱えて住民や国民に積極的に見せない情報の積極公開である。誰が、積極的に見せるものか、と云う疑問もあるが、投票の結果が情報を公開しない事で不利に働く場合もあるので、最終的には公開せざるを得なくなる。また、ワークショップや討論会を通じて、賛否の識者の参加があるので、専門的情報は相当の範囲で公開されてしまう。このような行為の継続が、住民や国民に自治意識を芽生えさせるし、それこそ民主主義の原点である、住民や国民が自らの考えで決定し、自ら引き受ける覚悟の土壌が生まれるのである。

 筆者は正直、今回の鳥取市役所の新築か改修かと云った課題が住民投票に馴染むものかどうか、微妙だと思っている。住民投票や国民投票に馴染む課題は、生活に重大なる影響を与えるものに限定する立場だ。例えば、直近の問題を眺めた場合、大きな課題は“原発政策”と“消費増税”の二つだろう。更にいえば、“日米同盟と米軍基地”だろう。代議の政治家や政党が、選挙中に有権者と交わした約束を反故にするような事が、白昼堂々と行われるような間接民主主義の現状においては、住民投票などが盛り上がってしまうのは、議会の形骸化どころか、議会のまさに自殺行為をしているわけで、政治家や政党が文句を垂れる筋合いはない。

 正確なアンケートかどうか判らないが、ダイアモンド・オンラインによる住民投票への是非を聞いたところ、9割が前向きな方向の答えを出していた。つまり、今の政治家や政党の姿は、住民や国民からの信頼度が地に堕ちていると云う証明だろう。ただ、若干政治家に同情する部分があるとすると、政治家が無知である事と、徒手空拳で霞が関官僚と対峙しなければならないジレンマが、厳然と存在している事だろう。この最高の事例が、菅政権と野田政権だ。菅や野田の罪は罪とし、いずれ罰せられるだろうが、日本の民主主義を根底から邪魔をしている霞が関官僚組織と云うものへの法的対策と云うものも、議会を叩くだけでは解決しないので、近々考えてみようと思う。筆者のイメージとしては、行政官僚の政策立案の説明を参考人として、国会とは別の機関で顔出しをさせる制度が良いのではないかと考えている。ただ、この考えは小沢一郎からは全面的に否定されそうなイメージでもある(笑)。




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