世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

どうなる消費増税 党分裂回避の輿石、不退転の野田、小沢の戦略は?

2012年05月23日 | 日記

 

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どうなる消費増税 党分裂回避の輿石、不退転の野田、小沢の戦略は?

 先ず、はじめに指摘しておいた方が良い問題がある。それが、ユーロ圏を発端にする世界経済危機の懸念が、未だに消えていないと言う事実だ。そもそも、ユーロ危機の引き金を引いたのはアメリカのリーマンショックなのだが、オバマは“知らぬ顔の半兵衛”である。それは良いとして、財務省の官僚ども、先のG8でも野田に嘘を教えている。

 野田曰く、日本政府は「消費増税と社会保障の一体改革への努力を進めている」と強調、結果的に緊縮財政と同様の経済効果を齎す増税路線を標榜、それを持って財政再建を目指すと、恥じらいもなく語った。しかし、ここ数カ月で米国の世界経済に対するスタンスは有耶無耶の中でチェンジしたようだ。言葉としては、「強い成長を伴った財政再建の責任ある対応について、G8首脳で議論する」と発言している。野田以外はオバマの発言の真意を理解したようだが、経済なんて中小企業の決算書も読めないレベルの野田君、財務省のご解説に強く肯き、上述のような発言をした。

 しかし、フランス大統領選、ギリシャ連立政権の崩壊、ドイツではメルケル率いるキリスト教民主同盟が主要州議会選で大敗と、経済成長に軸足を置かない財政健全化は無謀なのかもしれない。場合によると財政再建を金科玉条のように語っていた世界戦略そのものに齟齬が生じたと、軌道修正し始めたと読むのが正解だろう。緊縮財政を主張し続けてきた米英独は、緊縮路線がまったく経済成長を伴わないものとなり、挙句に政治的混乱を招いた現実を直視した、即応の意志統一だ。勿論、日本の財務省も野田もつんぼ桟敷であった事は言うまでもない。消費増税法案の特別委員会の審議が始まったが、なんだか時間だけが経過しそうな按配で、野田のリーダーシップどころの話ではなくなっているようだ。時事は以下のように伝えている。

≪ 消費増税、折り合い困難=野田首相、小沢氏説得へヤマ場
 民主党の小沢一郎元代表は22日、輿石東幹事長を介した野田佳彦首相からの会談要請に応じた。輿石氏も交えた 3者会談が来週にも実現する見通しで、消費増税関連法案をめぐる党内調整はヤマ場を迎える。ただ、今国会での法案成立に「政治生命を懸ける」と繰り返す首相と、阻止を公言する小沢氏の溝は深い。両者が折り合うのは困難との見方が強く、局面打開につながるかは不透明だ。
 「法案への採決の際は政府・ 与党一体となって対応できると確信している」。首相は22日の衆院社会保障・税一体改革特別委員会で、公明党の斉藤鉄夫氏の質問に答え、関連法案への「造反封じ」に 自信を示した。
 首相は党代表として今国会での法案成立に協力するよう、小沢氏を説得する考え。首相は、採決では党議拘束がかかるとの認識を表明しており、会談では関連法案が党の事前審査を経て閣議決定されたことを説明し、党方針に従うよう求める見通しだ。
 しかし、小沢氏は「一方的に執行部が党内議論を打ち切った」との立場。同氏周辺も「消費増税を白紙に戻すなら別だが、そうでないなら何も変わらない」と強調する。小沢氏は、現時点での増税や早期の衆院解散に反対する考えを首相に直接伝えるとみられる。
 首相サイドも小沢氏が簡単に協力に転じるとは見ていない。むしろ、「小沢氏説得のため首相が手を尽くした」痕跡を残すことが目的ともいえ、首相グループの若手は「どうせ会談は平行線だ」と冷ややかに語る。一方、小沢氏の揺さぶりを警戒する声もあり、首相に近いベテランは「小沢氏はいろいろ理由をつけて会談を引き延ばすのではないか。その間は自民党との修正協議は進まない」と懸念を示した。≫(時事通信)


 野田は、小沢との会談で合理性の欠片もない消費増税法案への賛成を理解して貰う気は、さらさらないだろう。精々言えるとして、「党議拘束が掛かります」くらいの強弁だろうが、そもそも、法案成立への勝算など見えていないのだから、強気で言い放つ勇気もない。おそらく、霞が関やマスメディアが狙いを定めている「解散ナシ、民主・自民大連立」も、実態は驚くような惨状で、多く見積もっても、衆議院・民主から130人、自民から70人程度なのだから、腰が抜けてしまう。本来であれば、民主300+自民120で420議席の強力政権の誕生である。衆議院480議席の8割以上の議席を占めるわけで、戦争だって、核開発だって、徴兵制だって、何でも出来ちゃう!

 そんな凄い政権が出来る皮算用にも拘らず、蓋を開けてみたら多くても200議席だと云う。過半数に41議席も足りない始末だ。理屈上は、自民が100で民主が200の勘定が可能なのだが、民主の200の区分が難しい。100は完全に小沢が握っているから、残りの200を固めたいのだが、野田首相の云う事を聞くのは80程度だろう。残り120は様子見なのである。それこそ、小沢・野田・輿石会談の行方をジッと見つめている。それだけではない、1年後には選挙の洗礼を受けるわけで、各議員の多くが国民との約束を裏切った民主党。国民に痛みだけを強いる民主党のレッテルを背負って当選する自信なある議員は稀だろう。

 また、仮に野田が自民党に抱きつくことで、法案成立に目処が立ったと思った瞬間、この120人が野田を見限る可能性がある。何故かと云う、自民が法案成立に協力する見返りは、自民党の案を概ね丸呑みを意味しているので、80人欲しさに“ワン”と吠えたら、120人が毀れ落ちると云うイソップ物語になるのだ。この場合、公明党は法案の賛成には回らない可能性が高い。なにせ、S学会員に消費増税はすこぶる評判悪く、選挙運動にさえ差し障りが出る状況になっている。

 以上のように現在の政治状況を分析してみると、消費増税法案と云うもの、衆議院を通過する可能性は極めて低くなっているのだろう。“シロアリ退治”の野田のことだから、どうやって形を整え投了すれば良いか、迷っているような気がする。白を切って、G8においても、経済成長を確実の伴う財政再建が必要と云う、主要国の財政への見方が変わった。潮目が変わったので、先ずは経済成長3%を喫緊の課題と置き換える、と言ってしまえばイイだけの話だ。

 それを小沢に言わせたいと、野田が考えるなんてのは、野田への買い被りだが、そうでもしないと、消費増税法案は成立せず、民主党は分裂し、日本の政治を目茶苦茶にした、憲政史上初の内閣総理大臣と云うことになる。当然、1年後は国会議員である筈もない。これは冗談でも、ブラフでもない。合理的議席を勘定した話だ。更に、野田や谷垣にとって、9月には党代表・総裁選が控えている。完全に勝てる勘定も出来ない法案に命を張るだけの意味はないだろう。それを投げ捨ててでも、法案が成立すれば良いだろうが、宙に浮く可能性の方が高いのだから、完全に頓挫だ。

 来年の夏まで解散総選挙がないとなると、今度は現在の既存政党の枠組みでは想定がつかない状況が待ち受けている。地域政党の勢力図は相当のパワーを見せるだろう。石原は一落ちた状態なので問題にはならないが、橋下、大村・河村の勢力は一定の範囲で、既存政党の地域を侵略するのは間違いがない。具体的に人材がどれだけ集まるか未知数だが、現職議員にもウィングを拡げれば、相当のパワーだ。国政政党ではないので、どの位の議員数になるかは定かではないが、50議席以上は取るだろう。公明党よりは上の政党になる。

 橋下・松井維新はあきらかに石原さんサヨウナラと言っている。大村もサヨウナラを告げた。石原ははじめから本気ではなかったと言うだろう。この人が時々使うロジックで、特に驚くことではない。だから石原慎太郎なのだから(笑)。橋下・大村・河村ら地域政党に誰が加われば、強力な政権が出来るか、どんな馬鹿でも想像がつくだろう。民主その他含めて150人近い現役議員を擁する小沢一郎の協力は、政治理念より魅力的である可能性が高いのだ。小沢の場合、必ずしもトップを求めないかもしれないと云う皮算用も入っているだろう。

 今夜、筆者が言わんとしているのは、だから小沢と橋下が組むと云う即物的話ではなく、このような流れもありますよ、と野田に対し、輿石が絵図を語るかもしれない。野田のブレーンに真っ当な人間が、仮にいれば、その云う心配はするだろう。このように考えて行くと、一番可能性があるのが大幅会期延長で財務省の息切れを待つ。勝次官も原則的には7月退任の筈だ。延長なら、まだまだ頑張りますと云うポーズは持続できる。昨日の衆院社会保障・税一体改革特別委員会において「身を切り改革、衆議院の定数削減の結論は、消費増税法案の前に決めなければならない」と聞き捨てならない事を発言している。

 マスメディアが、この発言をどれだけ重要視したか知らないが、この発言はデカイ!記憶では衆議院議員80削減が軸になっていたはず、0増5減だけで済む話ではないと云う受け取りも可能だ。つまり、到底話はつかない。この件に関しては、自民と公明の利益は相反だ。野田も中々ヤルと思ったが、おそらく輿石の考えだろう。輿石に誰かが知恵を付けたやもしれない(笑)。まぁ常識的には、三者会談で、それなりの筋道が見えるのだろう。筆者の推測が当たるかどうかも、10日以内には判明するかもしれない。”待てば海路の日よりあり”と行きたいものである。



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