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権利や法律を活かすも殺すも心がけ次第

2013年03月24日 22時32分19秒 | 職場人権レポートVol.2
   

 先日、労働基準監督署に相談に行って、下記の点について確認してきました。その報告を簡単にしておきます。

 (1)2月に腰痛で会社を1日休んだ為に交通費が出なくなった。会社の規定では月20日以上出勤しないと交通費が支給されない事になっているが、そもそも2月は通常28日しかなく、そこから週休を差し引くと皆勤でもギリギリ20日しかない。たった1日休んだだけで交通費も出なくなるのは余りにも理不尽。仮に出勤日数の規定を設けるにしても、どの月に休んでも公平になるように、日数ではなく出勤率を基準とすべきだ。

 (2)交通費支給の基準も不明瞭だ。規定だと月1万円まで出る事になっているが、実際は通勤定期代が月1万円以上になるのに、職場からの直線距離で足切りされているのか、8千円しか支給されていない労働者もいる。

 (3)腰痛で休んだ翌出勤日に、前日の休みを有休で申請しようとしたら、後で申請する場合は医者の領収書が必要と言われた。しかし、有給休暇とは本来、日数が残っている限り、事前・事後の別や使用目的に関わらず自由に使えるものだ。多忙等の理由で他の日に振り替えてくれと事前に時季変更を要請される事はあっても、既に休んだ分を有休に充てる事に何ら制約はない筈だ。

 以上3点のうち、私に関する事が(1)(3)で、(2)は私の同僚に関する事柄です。その他に、帰りがけのロッカールームで誰かが言っていた「冷蔵庫作業には特別手当が支給される」件についても確かめておこうと思ったので、交代制勤務で平日の休みに、定期健診受診で出社のついでに、途中駅の近くにある管轄の労働基準監督署に相談に行って来ました。

 しかし大した収穫はありませんでした。以下は労基署窓口での回答概略です。
 (1)については、一定の条件を満たした労働者にはパート・バイトも含め有休使用の権利があり、それを皆勤手当や交通費支給等をエサに制限するような事は禁止されている(労基法39条、同136条→末尾添付の参考資料参照)。
 但し、実際の運用についてはケース・バイ・ケースで判断が分かれると。例えば、皆勤手当等が有休手当よりも月数万円以上も多い場合は、事実上、前者をエサに有休使用を制限しており違法となるが、その差が僅か数千円程度の場合は必ずしも違法とまでは言えないと。
 後の(2)(3)については、ルール不在ならいざ知らず、一定のルールに則り交通費支給や有休申請の受理がされている以上は会社の裁量権の範囲内だと。冷蔵庫作業手当についても、そんなものはないと(未成年者への冷凍庫作業禁止の規定はあるが)。
 そして、唯一労基法に抵触する可能性のある(1)についても、所詮はグレーゾーンで犯罪行為とまでは言えない内容に対して、労基署として出来る事は強制力の伴わない行政指導ぐらいです。それでも良いのなら、今から会社に改善要望の電話を入れますがどうしますかと。そんな電話一本入れて貰った所で、何の効果も期待出来ないので断って来ました。

 思うに、この「グレーゾーン」というのが会社の巧妙な所で、これが賃金不払い等の完全なブラック(違法行為)なら、幾ら大人しいうちのバイトでも黙っていないし、幾ら人を募集してもそんな会社には誰も来ないから、流石に会社もそんな事はしない。訴えられない範囲で、巧妙に法の網の目をくぐり抜けようとする。
 でも、じゃあその現場には何も矛盾はないかというと、事故もミスも日常茶飯事で、腰痛を抱えている人間も大勢いる。法律がそれをカバーしきれていないだけで、矛盾がない訳では全然ない。それを「グレー」だからと放っておくと、今まで「ブラック」だった行為もいつしか「グレー」にされてしまいます。
 「グレー」を「ホワイト」に変えるのも「ブラック」にしてしまうのも、要は現場の労働者しだいではないでしょうか。例えば、グッドウィル等の派遣会社による賃金ピンハネが是正されたのも、社会保険も未加入で軍手すら支給されないのに、何故「安全装備費」等の名目で減額されるのかと、バイトが立ち上がったからです。

 今回の労基署訪問も、やはり「お役所頼み」だけでは限界がありました。労働基準法自体も元からあった法律ではなく、労働者の長年の闘いによって勝ち取られてきたものであり、労基署もそれに則って仕事をしなければならない以上は、それを無視する訳にはいきません。要は「権利や法律を活かすも殺すもみんなの心がけ次第」という事です。
 自分で言うのも何ですが、この度の契約更新面談で、会社側からバイトに業務改善の意見を求めてきたのも、勿論「アリバイ作り」でお茶を濁そうとの会社の思惑もあるでしょうが、私が今までやってきた組合活動などの影響もあるのではないかと、秘かに自負しています。誰も何も言わなければ、「アリバイ作り」すらしなかったでしょう。それを「アリバイ作り」だけに終わらせるか、それとも本当の改善に結び付けていけるかは、ここで働く私も含めた労働者の心がけ次第ではないでしょうか。


(参考資料)

大阪労働局編「労働基準関係法令のあらまし」22ページ「23 年次有給休暇(第39条)」より抜粋(Web版はこちら

■年次有給休暇は、雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全所定労働日の8割以上出勤した労働者に対して最低10日を与えなければなりません。いわゆるパートタイム労働者についても、原則として同様に扱うことが必要です。

①一般の労働者 (週所定労働日数が5日以上または週所定労働時間が30時間以上の労働者)
 継続勤務期間 6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月以上
 付与日数    10   11     12     14     16      18      20

②所定労働日数が少ない労働者 (週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者)
 (略)

◆年次有給休暇の取得時季
 年次有給休暇の取得時季については、労働者に時季指定権があります。なお、指定時季が事業の正常な運営を妨げるような場合は、会社に休暇時季の変更権が認められています。

◆年次有給休暇の請求権
 年次有給休暇の請求権は、労働基準法第115条の規定により、2年間で時効によって消滅します。年次有給休暇の請求権は基準日に発生するものであるので、基準から起算して2年間で時効により消滅することになります。

◆年次有給休暇を取得したことによる不利益な取扱いの禁止(第136条)
 年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額や精皆勤手当及び賞与の算定などに際して、欠勤として取り扱うなどの不利益な取扱いはしないようにしなければなりません。(以下略)   
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1 コメント

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あっせん制度利用の可否について (プレカリアート)
2013-03-27 08:31:51
この記事でも結局は「機が熟すまで待て」みたいな結論になってしまいましたが、勿論それだけで諦める気はありません。今一つ考えているのは、監督署で貰ったパンフレット類の中にあった斡旋(個別労働紛争解決援助)制度の利用です。労働組合が会社と集団で団体交渉するのとは別に、個人でも弁護士や社労士などの専門家も交えて会社と交渉する制度です。
何故この制度に着目したかと言うと、うちみたいな弱小組合のバイトでも会社と対等に交渉できるからです。勿論、組合に入ったのも会社と対等に交渉する為ですが、正直言って、あちこちの未組織労働者の寄せ集めでしかない地域労組では、賃下げ・解雇や明白なパワハラでもない小さな個別案件にまで動員は来ない。前職場の団交でも、会社側から4人も来たのに、労組側から来れたのは私と委員長のオバチャンだけでした。
それがこの制度では、他に弁護士などの専門家も入ってくれるので、動員力の弱さもそれでカバー出来るのではないかと。
勿論、社外の専門家には仕事の事なぞ分かりませんし、仕事のしんどさなど数値化できないものを説明するにも限界があります。本当はそれこそが取り上げたい事ですが、それは敢えて見送り、それよりも有休の事後申請や交通費支給規定の見直しなどの制度是正部分で実を取ろうと思います。
所詮はお役所(国家権力)なんて資本家の味方、労働基準監督署もどこまでやってくれるか未知数ですが、何事もやってみなければ始まりません。落ち着いたら頃合いを見てやってみようかと思っています。ブログ読者の皆さんからもこの件でアドバイス戴ければ助かります。
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