acc-j茨城 山岳会日記

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洗戸川・洗淀沢~会津朝日岳

2020年09月13日 00時45分02秒 | 山行速報(沢)

2020/8/31-9/3 洗戸川・洗淀沢~会津朝日岳


会津駒・朝日岳山群は福島県の南西部と新潟県境に接し、深い森林と渓谷を抱く日本的情緒あふれる一大山地。
道路などの通行手段に乏しく、ダムにより隔離されたその不便さから本州の深部、最奥部ともいうべき隔絶感がある。
一般的な道路地図でもその広大さは測り知ることができよう。

それは、日本アルプスや近隣の会越・下田川内、奥利根に比べても見劣りしない。
際立つ観光地を有しない地味さから、その隔絶感は本州の中でも随一といえよう。

それらに魅了された南会津ファンも少なからずいて、もちろん私もその1人だ。

会津駒ケ岳~朝日岳の南北に連なる主脈や、ダム湖と藪に護られた村杉半島は残雪を利して歩いた。
山群の中心にある丸山岳は大幽西ノ沢を辿り、会津朝日岳は楢戸沢を遡り北壁スラブを経て山頂に至った。
高幽山と梵天岳の間にある瓢箪型の小さな草原に佇んだこともあった。

そしてなお、憧れたのが洗戸川・洗淀沢からの会津朝日岳だった。
白戸川流域の豊饒な渓の恵みを享けながら、会津朝日岳南壁に切れ込む流れを遡る。
主脈が山巓を繋ぐ旅なら、沢を繋ぎ歩いて自由闊達な山旅をしてみたい。
そう思ったのは、自然なことだったのかもしれない。

この径には何があるのだろうか。
自然の中で生きるには、常に孤独がつき纏う。
どう過ごすかは自由。
反面、自由というのは実に非情なものだ。

現実を突きつけられると、社会生活での緩い束縛が恋しくなる。
山行前夜、そんな葛藤をしながら奥只見シルバ-ラインを行く。


8/31

奥只見ダムから大鳥ダムへの道をペタペタと歩く。
途中いくつかの工事個所があるが、通過に困難はない。
懸念していたメジロアブもほぼ消えており、快適なアプロ-チ。

水色の上大鳥橋先、ほどなく右から白滝沢が出合う。
白滝沢は地図上短く見えるが、なかなかどうして水勢もあり白泡立つ流れ。
このあたりが名の由来だろうか。


いくつか滝場を有するが、特筆した困難はなく、やがて流れは森に消える。

藪に入るが密度は中以下。
上へ上へと詰めていくと1395峰。
良好な視界があれば村杉まで約2時間、のはずだった。

しかし、このころから雨。視界もない。
1395峰から北へ延びる緩やかな尾根を見出すのがポイントとなるのだが、この辺りは藪も深い。
幾たび進路探しで行きつ戻りつを繰り返した。
ようやく尾根の径型へとたどり着いたときには1時間半ほども経過していた。

小雨降る藪を行くのはなかなか心折れるものがある。
しかしここで折れたら、山ヤを名乗る資格はなかろう。
この後も奮戦続き。
眼鏡のレンズが外れ紛失するアクシデントも、残された自分の視力だけを頼りに藪を漕ぐ。

村杉岳は頑強なツゲとシャクナゲに囲まれた頂。
残雪の頂とはまるで違う表情だ。

ここから東へ進路をとる。
幸い雨も上がり、ぽっかりと開けた草付きに出ると沢床はその先にある。
上五沢(上小沢)源頭についたと思った。
しかし、ここが滝のクサ沢(滝の沢)源頭だったことを知るのは、しばらく後のこと。
もはや登り返すに躊躇うほど下ってから気づいたが、装備に不安はないのでそのまま下る。

切れ込んだ窪を丹念に下っていくとやがていくつかの沢筋を合わせ、30mほどの草付きスラブにわずか水の流れ。
45mロ‐プでは少し長さが足りないようであったので、藪を頼りに少し巻き下り、最後は懸垂下降20m。
その後現れる10m未満の滝場も懸垂下降とクライムダウンでやり過ごす。

瀑流帯と河原を繰り返し、中流の2段40m。
上段は左岸を懸垂下降。下段は左岸を小さく巻き下ることができた。
その後も断続的に瀑流帯と河原を繰り返す。

17時を過ぎ、地形図上の783mの右岸に1mほどの高さの段丘。
この先には30m大滝も控えていることから、今日の行動をここで終了。

藪の彷徨と想定外の滝場下りで釣りをする気にもなれず、楽しみは明日に持ち越し。
反面、奥深い山中の大滝群を拝することができたのはこれもまた運命だろう。

薪はわざわざ集めるまでもなく、そこここに渦高く溜まっている。
夜な夜な一人で豪勢な焚火。
もう、近づけないほどに火柱があがり、時に爆ぜていくつもの火の粉が漆黒の空に消えていく。
その光景をただぼんやりと眺めていた。


9/1

朝方はさすがに冷える。
谷はぼんやり靄っていたが、空は晴天の兆し。
すっかり燃え尽きた焚火跡の処理をし、引き続き、滝のクサ沢(滝の沢)を下降する。

やはり、河原の後に瀑流帯があり、時に懸垂下降。
30m大滝は、上部がひょんぐっていて、なかなか立派だ。
幸い右岸から巻き下るとができた。
この滝を過ぎるとメルガ股沢まで一投足だった。

メルガ股は悠然と流れる。
深い森に滔々と流れる様に魅了される。
本当はメルガ股から丸山岳を目指すのが、南会津の沢旅における王道といえよう。
いつの日かの再来を誓い流れを下る。

洗戸川出合は明るく開ける。白戸川左岸の段丘はこれまで幾人の幕場として利用されてきただろうか。
一休みして洗戸川(洗戸沢)に入る。

最初のゴルジュ状は腰まで浸かるが通過は容易。
後は河原が続き遡行は捗る。
芦安沢まで遡行に専念するなら2時間あればたどり着く。

しかし、今日の行程は待望の癒し区間。
釣りを堪能し、焚火の準備にも余念なく一日を終える予定。
幕場は芦安沢出合と思っていたが、すぐ手前の小沢出合の段丘を利用した。

幕場近くに沢わさびが群生していて味噌汁の具にしたり、炒めたり。
やっぱり沢登はこうでなきゃ。そんな一日を堪能した。


9/2

朝食を素早く済ませ、焚火跡を処理する。
今日が核心。
そういう緊張感がある。
幸い天気は保つようだが、午後の雷雨リスクは頭に入れておかねばなるまい。

 

芦安沢出合を過ぎると、廊下やゴルジュ状、ゴ-ロと河原が断続するが、ゴルジュ内の小滝に困難はない。
とはいえ春の雪崩や出水により渓相は激しく変わり、滝場通過の困難度は年々変わることだろう。

地形図では赤柴沢(前沢)出合に「岩幽」の表記があるが、それと思しき岩小屋などを見ることはできなかった。
赤柴沢(前沢)は穏やかに出合う。
いざという時のエスケ-プル-トとして、この先前進を拒まれたなら、ここに戻ってくることとなろう。

ここから本流は洗淀沢(荒淀沢)と名を変える。
加えて、今まで以上に両岸は立ってくる。
反面水量は減るため、平水なら胸まで浸かることはあっても泳ぐことはない。

釜を持った4m+1mの滝は右岸を巻く。
岩と草付きのミックスで、足場が外傾している。
空身で登り、荷揚げ。
その後は灌木を繋いで小さく巻き、最後は懸垂下降で沢に復帰した。

しばらく峡谷の河原が続くが、やがて蛇行し始め流れはさらに岩の中に食い込んでいく。
なかなか見ごたえのある景観だ。
そして前方には会津朝日岳の南壁。
しかも稜線の岩峰群は佇立し稜線に出てからも難儀させられそうに見える。

断続的に現われる小滝を丁寧にこなして行くと、右岸に大崩壊跡。
通過が躊躇われるが、素早く通過するため直前で休憩。

観察すると左岸に滝が見える。
どうやらここが「両門の滝」だった場所。
円形上のスラブ壁に左岸20m、右岸10mチョックストンであったらしいが、左岸10m滝は崩壊により埋もれているのだろう。
この滝が核心の一つだったので、残念ではあったが少しホッとした。

大崩壊地のゴ-ロ帯を落石に気を配りながら行く。
急登に息が切れる。

登り切ると二俣。
左が本流のようだが、8m滝の落ち口がナメとなっていて手が出そうもない。
草付きを小さく巻くにも結構な傾斜で、草もか細い。
ここは右の容易な滝を登って中間尾根に立つ杉木まで高巻いていくことにした。

ちなみにこの右の流れは、さらに辿っていくと次第に傾斜を増して壁に吸収される。
はたして、会津朝日岳南壁は登られているのだろうか?

高巻きは30分ほど。
最後は懸垂下降で沢床に復帰。6m滝上に出た。

流れは小さくなるものの、沢の切れ込みはさらに激しくなり、小滝が続く。
気持ちよく直登で超えていくが、ヌメりもあるので慎重に行く。

前方に明らかなハング滝。
20mくらいあるだろうか。あそこが三俣だ。
一見し容易ならざる雰囲気が見て取れる。

左俣にチョックストンの15m、右俣にスラブ状の多段30m。
全体俯瞰すると、正面の20mハング滝よりも右俣スラブ滝を登って草付きバンドを辿り、正面滝上を目指した方が容易に思えた。

とはいえ、先人の記録では正面ハングの弱点を縫い、突破している。
右俣滝からの草付きスラブはオプションとして、正面ハング滝の観察に入る。

滝直下まで来る。
意外と登攀部分は高くなく10mくらい。
ホ-ルドも豊富に見えたので、ファ-ストトライ。

しかし岩がグズグズで全く信用できない。
水流右のルンゼ状を行き、水流裏めがけて左上するのだが、ホ-ルドが甘くて、左上への一歩が出ない。
一旦クライムダウン(というか、泥壁をずるずる下って)して空身で再トライ。

手と足の置き場には最大限注意を払うが、それでも信用ならないほどのボロさ。
むしろ、岩をぼろぼろ落としたら、ガバでも出来やしないかと思い試してみたが、余計に甘々ホ-ルドになってしまった。

どれくらい格闘しただろうか?
なんとか右足に体重を乗せ、滝裏へ。
そこからは少し安定した足場があるので、荷揚げ。

滝上への草付きも草の根をホ-ルドに体重分散しつつ登る。
草付きが苦手な人は大層難儀することだろう。

滝上からは単調な流れとなり、枝沢の流れが2~3流入する。
本流と思しき流れを遡るが、一か所5mほどのナメ滝を力づくで登ると滝は終了。
急角度の窪を息を切らしながら行くと尾根に出る。

しかし、ここからの尾根にも気が抜けない。
シャクナゲとツゲと松・杉の混成植生で、まるで意思を持ったかのように前進を阻止してくる。

ヤブコギは全身運動。やたらに腹が減る。
明日下山の目途が立ったので、予備食で凌ぎつつ八本歯の峰を超えていく。
しかし、ものすごい角度、そしてヤブコギだ。
落ちたら、北壁か南壁を転がり落ちて命はないだろう。
腕力がモノを言う登りだった。

やがて楢戸沢源頭の北壁スラブが見えてくると会津朝日岳の山頂はあとわずか。
山頂に出た時には、疲れ切った腕を力なく片方だけ挙げて記念撮影とした。


9/3

朝日岳避難小屋で快適な一夜を過ごし、あとは下るだけ。

下山後の車回収や着替えのタイミングなど考えながら、ボトボトと下ってゆく。
途中、会津朝日岳を目指す方々とすれ違いながら久しぶりの会話。

三吉ミチギの水場で大休止。
東シナ海を通過した台風の影響もあって、今日は日差しが一層強い。

水場からの樹幹越しに見る南会津の空は青く、そして深い。
いわなの里でタクシ-を呼ぼうか悩んだ末に、萬歳橋まで歩くことにした。

なぜ?と問われても困ってしまうが、半世紀を生きた男の酔狂とでも言っておく。

 


エピロ-グ

「虹が見えますよ」

只見線の車中、見知らぬ女性が声を掛けてくれた。
汚いザックを抱えた無頼者に声をかけるのは勇気が要っただろう。

でも、彼女は教えてくれたのだ。
このすばらしい、景観を。
このすばらしい、瞬間を。
そして人が喜びを分かち合う、素晴らしい世界を。

車窓後方にきれいな虹が見えた。


sak

 

8/31
奥只見ダム(4:49)-上大鳥橋(5:37)-白滝沢入渓(6:03)-1395峰(9:08)-村杉岳(12:57)-滝のクサ沢沢床(13:06)-幕場(17:32)

9/1
幕場(6:46)-メルガ股沢出合(7:51)-洗戸川出合(8:47)-<釣行>-芦安沢出合・幕場(12:43)

9/2
幕場(6:26)-赤柴沢出合(8:12)-両門の滝跡(11:03)-三俣(13:00)-稜線<八本歯>(15:05)-会津朝日岳(16:54)-朝日岳避難小屋(17:37)

9/3
避難小屋(6:28)-三吉ミチギ(8:15)-いわなの里(9:24)-白沢集落(10:22)-萬歳橋(11:24)


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