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acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

八ヶ岳東面・旭岳東稜

2008年02月05日 18時47分10秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2008/2月上旬 八ヶ岳東面・旭岳東稜

原点

八ヶ岳東面にはいくつかの想い入れがある。 
権現東稜の敗退から始まり、その後の再訪完登。 
天狗尾根の速攻登攀から一転、稜線でのバテバテであったり、ツルネでのヘッデン下山であったり。 
それは悲喜交々、一夜を過した地獄谷の出合小屋に終結すると言っても過言ではない。

四年前の権現東稜登攀時に出合小屋のノ-トに記した一文を見る。 
ホンの短い一行に当時の感激を思い出す。 
そして時計型薪スト-ブは健在。夜な夜な宴に酔いしれたのもこのスト-ブが中心にあった。

地獄谷の三本。残るは旭岳東稜。 
もっともだから何なのだというわけではないが、冬のバリエ-ションにおいては この地獄谷を語らずには始まらない、原点としての想い入れがあるのだ。 

 

工作

美しの森から沢筋に入るとトレ-スは消え、早くもラッセル。 
出合小屋から先は痕跡すら見当たらず、記憶を辿りながら尾根の末端。 
権現沢に入り、二本目のルンゼ、左俣を詰める。急登のラッセルに汗する所だ。 
尾根に乗れば幾分足元も安定する。とはいえ、時には膝下ほどのラッセル。 
しかししかし、このたびの力強いパ-トナ-はそれでもグイグイ急登りをこなしていく。 
非力なさかぼうにとっては羨ましくもあり、ありがたくもあり。

細いリッジに出る。 
すこし躊躇するが、ここはクライムダウン。 
あとはリッジの側壁を慎重に伝っていく。 
そこからはひたすら登る。時に傾斜は落ち、そしてまた急登。

幕場跡を発見。 
時間はまだ余裕がある。この先まだまだありそうだったが、整地時間の短縮にもなるし、ここから空身で ラッセルしておけば翌朝楽でもあるはず。ということで幕を張ったら、ル-ト工作。 
目標を岩壁取り付きまでと考えていたが、そこまでは至らず、その手前のルンゼ下までで時間切れ。 
コレが翌日の奮戦のプロロ-グでもあった。


期待

さすがに夜は長かった。 
一眠りして起きたら21:30。また寝入り、次に起きたら0:30。 
この調子で行くとまた三時間後に起きるんだろうなあと想像しながら三度眠りに就く。 
と思ったら、4:00。起床のベル。

モ-ニングコ-ヒ-の後、朝食のラ-メンを作ったら丁度、ガスが切れた。 
最後にテントの中をあっためようと思ったのに残念。 
定刻に10分遅れ、6:10発。

昨日のラッセル工作の甲斐あって、ルンゼ下までは特に問題になるところはなかったが、 そこからの急登ラッセルが思った以上の重労働。 
ここさえ超えれば五段の宮という期待だけが今の自分を突き動かしているのかもしれない。 
稜に出れば五段の岩場が意外にこじんまりと横たわる。

 
地味

取付きで準備を整えたら登攀開始。

正面を少し触ってみたが、一段上がってからの一手。雪をのいてのホ-ルドにはそれでも未だ氷がつまっていた。 
持てるような持てないようなで踏ん切りがつかない。 
そんなこんなを繰り返すうちに手が凍える。 
時間は9:30。残念ながらここまで。素直に左にトラバ-スし草つきへとまわる。

とはいえ、この草つきも決してよくは無い。 
ピッケルとバイルを駆使するも、あまり手応えがないとなると雪を退けながら手がかりを探す。 
そうして地味に地味に高度を稼ぐ。 
草つきを2ピッチで五段の宮上。 
 

発見

そこから切れた雪稜を2ピッチ。ここばかりは先行の無いきれいな雪面にトレ-スをつけることにシアワセを感じるのだ。 
最後の岩塔は左から回り込めばあとはピ-クまで雪稜を一投足。

感激もそこそこに、ヘッデン覚悟の共通認識をした上で下山に取り掛かる。 
ツルネ東稜もトレ-スは見当たらず。 
赤布を頼りに、時に雪の踏み抜きに没しながら何とか道を外さずに、尾根から沢に降り立ち、 昨日の自分たちのトレ-スを発見したときには、これでようやくラッセルしなくてすむと心底嬉しくなってしまったものである。

そうして闇に浮かんだ、何の変哲もない質素な小屋。 
いろんなことがここであった。 
しかし、これで終わりではない。まだまだ、先はある。 
この先の幾多の出来事もあの夜を想えば、いつかきっと叶うと信じている。 
あの日、あの夜の苦悩と歓喜を。 
 

sak


八ヶ岳西面・ショルダ-右リッジ

2008年01月15日 18時42分35秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2008/1月中旬 八ヶ岳西面・ショルダ-右リッジ

少数派

午前五時。

しんと張り詰めた空気。 
一筋の明かりを闇に投じる。 
本日の第一歩を踏み出す。 
サクリと軽い音。

これが今の自分の全てである。

八ヶ岳・赤岳の北峰からさらに北。ショルダ-といわれるピ-クがある。 
その峰から派生するリッジは5本。その一番右がショルダ-右リッジである。

南八つにあって5本の派生尾根といえば想像に困難ではないが、そのル-トは 一見に複雑であり、また隣に人気の 赤岳主稜が存在する不運もあってか、訪れるパ-ティ-は、主稜と比べて 明らかに少数派となる。 

 

回想 

実は以前、このショルダ-右に取り付いたことがあった。


 <山行の回想> 
下部岩壁の一番低いところを登るらしいので、おそらくここでマチガイは無いであろう。 支点の捜索をするとどうにか一枚ハ-ケンを見つけることができた。 一枚打ち足し、見上げると凹角を斜上するラインが見えてきた。 
1ピッチ、リ-ド 
スタンスは脆く、ホ-ルドは外傾で雪がつまっている。そして追い討ちをかけるように支点が無い。 ようやくハ-ケンを一枚打ってテンション。掃除とハ-ケン探索で時間は過ぎていく。 試行錯誤を繰り返すもその後は一進一退を繰り返す。 
すでに時間は二時を過ぎており、時間切れ敗退を決断した。 
基部左のルンゼから岩壁上に出る方法もあるらしく、 なるほど、ル-トとしてすっきりはしないものの、傾斜はそれほどでもない。 もっとも今回取り付いた真ん中ル-トも登られてはいるはずで、正面からここを貫けて行きたいという理想も感じてはいる。

以前の記憶を辿りながら文三郎尾根から取り付き目指す。 
「じゃ、いきますか」と声をかけると、パ-トナ-は無言で頷いた。 

登攀

尾根から急下降。右ルンゼを渡り、尾根を乗り越す。左ルンゼは主稜からの落石が多い。急いで渡る。

下部岩壁。 
以前の取り付きは上からのチリが酷いのでさらに左のルンゼを目指す。 
一段、フリ-でフェ-スを登るが、想像以上に安定しない。初っ端から見通しが甘かった。 セルフをとってここからロ-プを出す。 
ロ-プを下に垂らし、まずはフォロ-を迎える。

1ピッチ・ルンゼをダブルバイルで行く。一箇所、岩の露出した2mの垂壁。 
2ピッチ・ルンゼ~尾根へ右上。 
3ピッチ・尾根を乗り越しトラバ-ス。岩壁下。 
4ピッチ・一段上がって、雪がつまってしまって心もとないホ-ルドで次の一歩が出ない。なんとかツァッケ一本の立ち込みで対処。 
5ピッチ・ガバのリッジ。とはいえ、雪と氷の掃除は欠かせず、ホールドスタンスの探索に時間は掛かる。 
6ピッチ・小岩塔を乗り越し雪稜 
7ピッチ・ガバのリッジ。思い切って断崖に身を乗り出す。 
8ピッチ・傾斜も落ちてなんて事の無いリッジ。~終了点 
 

縮図

ショルダ-右は総じて雪と氷に覆われたスタンス・ホ-ルドの掃除、また支点探しに従事した。

午後三時。 
陽は傾きつつ、黄金の雪原に針葉樹の影がひときわ長く突き刺さっていた。 
これからの美濃戸口までの長旅を憂いつつ、地蔵尾根ではシリセ-ドに興じる。

いっときの充実にあっという間の快楽。 
そして最後に残るのは、長い長い現実。 
一日は一生の縮図なり。 
結局は、一歩一歩地道に歩む時間が一番長い。

sak


八ヶ岳・大同心南稜

2007年12月05日 18時35分16秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2007/12月上旬 八ヶ岳・大同心南稜

言葉

「苦労は買ってでもするもんだ」 
良く親父に言い聞かされた言葉の一つである。 
「昔は学林のバス停から歩いたもんだ」というのは諸先輩方からの言。 
八ヶ岳今昔。果たして・・・。

12月。暦の上では冬山のスタ-ト。 
アプロ-チではなんと、非力な二輪駆動車でも美濃戸まで入ることが出来た。 
仰ぎ見る大同心は薄っすら雪化粧。 
アプロ-チでの寡雪が心配ではあったが、山はしっかり雪山模様。 
大同心稜は久しぶりのアイゼン歩行となった。

しかし、足と靴とアイゼンが何だかシックリこずに、早くもふくらはぎが悲鳴を上げる。 
先行のパ-トナ-に随分遅れをとり、喘ぎながらも何とか大同心基部。

南稜の取付を探すこと一時間。小同心へのトラバ-ス道から随分上で支点を発見。 
でもここまで来るともはやド-ムまで1ピッチほどしかない。 
それでは物足りないので、トラバ-ス道まで戻って登攀開始。 

 

雰囲気

リ-ドで1ピッチは右上。ホンの一手が出ずに直上を断念。 
結局先ほど確認した支点に出てピッチを切る。

2ピッチは左上へ。ガバをいいことに豪快に。 
こういうときの苦労は買ってもイイかな。 
短めであったがアルパインの雰囲気を味わおうと小さなバンドでピッチを切る。

3ピッチは左から。 
リッジに出たら顕著なピナクル。さらに小ギャップを超え、リッジを乗り越せばド-ムの基部は一投足。 
正直チョット物足りない。

 

笑顔

ド-ムは人工登攀。ここでリ-ドをWさんに選手交代。 
さすが、アブミの取り回しに無駄がない。

姿が見えなくなったと思ったらまもなく、ビレイ解除のコ-ル。 
数mをフリ-。ピナクルを足下にしたところから人工登攀。

3、4mmのスリングに不安を憶えつつも、ここは根拠も無くコレを信じるしかない。 
アブミをかけ、全体重をそのスリングに乗せる。足元を見れば大同心基部まで見通せる。 
緊張の中、爽快な気分である。

最後の支点、スリングが上のほうに引っかかって一寸苦労したが何とか終了点。 
頭から望むパノラマに仲間の笑顔はよく似合う。

今昔

あとは大同心稜を下る。 
前半の南稜事体は少々物足りないものの、ド-ムの登攀は爽快の一言に尽きる。 
後発パ-ティ-の奮戦を我がことのように眺めつつ、今日の登攀を語りつつの下山。 
充足のひととき。

あとはダラダラ、ボトボトと美濃戸まで。 
いやしかし、美濃戸まで行けば車があるという安堵は正直、ありがたい。

苦労にまつわる今昔。現実には、必要に駆られた利便が幅を利かす。 
「苦労は買ってでもするもんだ」 
あなたの心に、この言葉はどのように響くのであろうか。

 

sak


大菩薩峠

2007年01月05日 17時41分37秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2007/1月上旬 大菩薩峠

初詣

謹賀新年・2007年明けての初詣はここ数年、近所の女化神社と定番化しつつある。 
しからば新年明けての山詣はと問われれば、ここ数年の流れから八ヶ岳となるはず。 
が、しかし。 
冬型に押され押されて、山行計画もずずっと南下。大菩薩嶺と相成りました。

菩薩とは仏陀の次に位が高く、悟りを追い求める者。仏陀(釈迦)は悟りを開いた由緒正しい方であり、 悟りを開けぬ者は死をもって仏となる。ううむ。なんとも切ないオキテではないか。 
そんな風に考えてみれば、新年明けての初山詣が大菩薩とは、今年の山を占う意味でも うってつけなのかもしれない。

とはいえ、自身、何の予備知識もないまま出発時刻は刻々と迫りつつあり、仕事の合間に食料はモチロン、 地図を探しに行ったり、ワッパどうしようか憂慮してみたりで、 こりゃ大忙殺。なんちて。(これが言いたかったのである)

まあ、悟りを開くかどうかは別として、定刻に出発。一路大菩薩に向けて車中の人となった。  

心意気


冬の大菩薩は裂石先の林道ゲ-トから歩き出すこととなる。 
ココで積雪数センチ。のんびりと身支度をしている間にもたくさんの登山者が先を行く。さすが人気の名山。 
淡々と歩を進めれば上日川峠、福ちゃん荘、そうして大菩薩峠へとたどり着く。

大菩薩峠は山頂である大菩薩嶺よりも展望が良いため、多くの山岳紹介は〔嶺=峠〕どころか〔嶺<峠〕という 差別的な扱いをしており、少々心痛むところである。 
とはいえ、行ってみればナルホドと妙に納得してしまうほどに峠の展望は良く、南に雄大な富士、東に九十九谷を 思わせる奥多摩の山の連なりは見る者を飽きさせない。 
ここでノンビリといきたい所ではあったが、展望とは裏腹に強風が吹き荒れ、それどころではない。 
富士は大きな雪煙を上げ、北西に目を移せば遠く奥秩父の峰嶺は厚い雲を被っている。もし八ヶ岳に行っていたなら 
いかほどか、おおよその想像はついた。

山頂は樹林の只中にあり、全く展望はない。ちょっとした広場と山頂標識があるだけ。 
しかし、しかし、ココこそが頂。峠にない魅力がある。今日のような強風をもやさしい樹林がガ-ドしてくれる。 
こんな地味な頂だからこそスポットを当ててやるのも、心意気ってモノ。 
どうせなら褒めて伸ばしてやろうじゃないですか。

理想


山頂からは丸川峠を経てゲ-トへと戻る。 
丸川峠は思いのほか開けていて心地いい場所であった。 
この北側は泉水谷で大黒茂谷や小室川谷もこの辺りへ行き着くことになる。 
なんだかんだと稜線上は立派な雪山で、大変満足な山行となった。

下山後、大菩薩の湯・600円ナリでスベスベお肌になったら、路面凍結の青梅街道を奥多摩経由で下っ走り。 
燃料節減、高速代節減のためはモチロンのこと。さかぼうは環境のコトを考えて、エコの実践をしています。 
減らそうCO2。

今週の悟り 
やっぱり嶺より峠。理想では納得できないこともある。でも温泉は500円が理想。 

 

sak


鹿島槍ヶ岳・東尾根(中退)

2006年04月25日 17時27分21秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2006/4月下旬 鹿島槍ヶ岳・東尾根(中退)

同流

不意の降雪。雪面に爪先を蹴りこめば表層は音も無く谷へと落ちていく。 
強風に雪が舞い上がる地吹雪。裸眼を晒すにはチト辛くゴ-グルを取り出す。 春山の荒天はまさに「山をナメちゃあいけないよ」ってな具合である。 
そうして俺はつぶやくのだ。「春山ってイイヨねえ」と。 


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 

入山日、平日にも関わらず先行アリ。恩恵にあずかりサクサク進む。 
二時間半ほどで先行パ-ティ-に追いつく。トレ-スのお礼とともに我々が先行となる。 
ひと登りで一の沢の頭。稜線はここから随分と様相をかえ、リッジとなっている。 
途中、先ほどのパ-ティ-の一人がラッセルの協力を申し出てくれた。 しかも驚くべきスピ-ド。そんな彼のザックには「同流-DRU-」の文字。 
同流の底力、とくと拝見いたしました。 

 
携帯 

二の沢の頭でシバラク風に吹かれる。 
今日は第二岩峰までというプランもあった。 が、今日の雪の状態でオ-ルラッセル。しかも強風のコンディションではとても行く気になれない。 
そうと決まればココにくつろぎの居室が出来上がる。 あとは水を作りながらのんびり過すのだが、やはり気になる明日の天気。 
そしてなんと便利なもので携帯電話で山頂の天気予報や天気図が見られる。 
稜線や山頂はほとんどつながるのだから、携帯電話には少々ウンザリさせられることのほうが多いのではあるが、 いやはや便利なものである。 
肝心の天気は「晴れときどき雪」天気図は太平洋上の低気圧が離れ、移動性高気圧が列島を西から被う状況であったため 
「ときどき雪」は一時雨雲が通過するものの”回復傾向”と読んだ。

 

撤退

朝は三時五時。同流Pが10分程度の先行となった。 
昨夜は冷えたことと風が断続的に吹いていたこともあって雪の状態がいい。 アイゼンが程よく効いてサクサク進める。 
雪壁を繰り返し第一岩峰。このころから雪がちらつき始める。これが「ときどき雪」か。 
さらに雪壁をグイグイ上がり岩の露出した雪壁をトラバ-スすると第二岩峰。 
この頃から降雪は激しくなり、雪面に爪先を蹴りこめば表層は音も無く谷へと落ちていく。 
強風に雪が舞い上がる地吹雪。裸眼を晒すにはチト辛くゴ-グルを取り出す。 春山の荒天はまさに「山をナメちゃあいけないよ」ってな具合である。

第二岩峰はこのル-トの核心であり、ほぼ唯一の岩稜登攀の部分である。 
階段を上がって突き当たるチムニ-が四級とされるが、アイゼンの前爪を乗せる部分も明確で程よいホ-ルドも あり、問題はない。 
フォロ-を迎えて雪稜をもう1ピッチ伸ばそうとリ-ド交代。 視界も無く見えるはずの同流Pはすでにガスの向こう。 
パ-トナ-の姿が見えなくなろうかというそのとき、突然、人影が増えた。 
いくらか視界が効いてきたのかなと思ったのもつかの間、会話から同流が撤退を決め、下山にかかったコトを知った。 この先尚、視界は悪く、雪面とガスの見分けが付かないほどであるらしい。そしてこの強風。 
この先の雪稜も難所が無いとはいえ、これでは危険である。 
また、20cmほどの降雪もあり、帰りのラッセル協業化による省力など考えても我々も合わせて撤退がベストである。 

 
リベンジ 

第二岩峰を懸垂下降し雪の急傾斜をサクサク降りて右にトラバ-スで第一岩峰。 懸垂したいところではあったけど、支点が無いので見覚えのある潅木にアタリをつけてクライムダウン。 
そこから稜線につかず離れずで幕場に戻ると同時に今までに輪をかけて猛風が吹き荒れる。 
今頃、上にいたなら飛ばされてるかなという確信と安堵。難儀しつつも撤収を済ませたら長居する必要は無い。 
下山は尚強まる風に辟易としながらも空を見上げれば青空と積雲。

高度を下げ、風も弱まれば陽だまりスノ-ハイクの様相となる。 
程よくついた傾斜を探しながらシリセ-ドに興じれば、にわかに口元も緩む。 
「春山ってイイヨねえ」

このたびの山行は、「撤退」に終わった。 
とはいえ、第二岩峰は登れたし、程よい充実感と満足感。 
未踏部分はとなりの天狗尾根と被るし、そのとき頂まで詰めればいいかな、という気持ちである。 
だから下山後、パ-トナ-から「リベンジしますか?」と問われた時にモチロン俺はこう答えた。 
「もう、イイヨねえ」と。

 

sak


谷川岳・一ノ沢左稜

2006年03月10日 17時25分01秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2006/3月上旬 谷川岳・一ノ沢左稜

労働

谷川にロープウェイありき、だ。 
平日は駐車場タダ。あったかい建物の中で仮眠タダ。清潔なトイレタダ。何ならビ-ルも自販機でどうぞ(有料)。

登山届を投函し一の倉出合までのボトボト歩き約一時間。 
出合にて、上部は濃いガス。 
一の沢は適度にしまった雪でグイグイと高度を上げていく。 
いかんのは視界が悪く単調なため面白くない。ただ黙々と歩を進める。 
こうなると、労働ですな。

 
稜上

一の倉出合から一時間も歩いただろうか。「労働」などと露程も思えば、途端に嫌気がさして 小休止。手近にある支尾根を登るコトとした。 
本来、左稜を行くにはもっと末端から登るのだ。

見上げれば、結構急な支尾根を木登り、ルンゼ状でロ-プを出し、2ピッチで稜に上がった。 
そこからは硬軟取り混ぜたヤブ尾根で高度を稼ぐ。 
やがて稜は左右ともに切れ落ち、リッジの様相となって来た。 先はガスで見通せないが、どうやらこの先、やせたリッジの登下降が続くらしい。 
視界不良であっても感じる高度感、念のためザイルを出す。

シンセン岩峰

やがて稜は鋭さに磨きがかかる。各ピッチごとに「怖ぇ-」を連発しながら涙目でさかぼうリ-ド。 
その実、顔は笑っているのだから、もはや常軌を逸しているとも想われかねない。

ナイフリッジを跨いだり、リッジを手がかりにカニ歩きをしたり、セッピに戦々恐々としたり。 
途中の支点はあまり取れないので落っこちないよう慎重に。 
リッジを越えるとガスに霞む岩塔が連なる。 ここがいわゆる、シンセン岩峰である。 
実質の登攀となるのは、最後の三峰通過。 
その先には東尾根の第二岩峰が見える。 

 

三峰

1ピッチ 
か細い潅木とピッケル頼りで足を蹴り込み一峰塔頂に至る。 
岩に残置のスリングとビナが掛かってはいるものの、いかにも古いため手持ちで補強を要する。

2ピッチ 
後ろ向きになって一峰をクライムダウン。 
二峰は締まった雪で雪壁の様相。二峰塔頂の支点でビレイ。 
ただ、塔頂の向こう側は切れており、馬乗り状態でのビレイとなった。

3ピッチ 
躊躇したが、垂壁脇の雪を利してクライムダウンとした。モチロン雪の状況では懸垂下降も検討したい所である。 
三峰はピッケルと潅木を掴んで最後は少しカブリ気味の雪を切り崩して塔頂。

最後はシンセンのコルへと懸垂下降20m。 
この頃にようやくガスは薄らぎ、東尾根の前半が見通せた。ここまで充分な満足感で一の沢を下る。 
労働も、それが楽しければ充分な娯楽になるということか。これまた新しい発見では有る。

好ル-ト

不思議と山に遊べば遊ぶほど自然と仕事にも身が入るのはそういうこと。 
生業ですら娯楽にするのは自分次第。気楽に考えてもいいのではなかろうか。

一の沢は結構な斜度で、東尾根に来るためにここを登るのはかなり骨が折れるであろう。 
雪質は硬く締まっており一同後ろ向きになってサクサクと下る。 
適度に傾斜がおちたらシリセ-ド。コレが密かな楽しみだ。 
取り付きに戻った頃になって視界は晴れ、衝立が目前にドドンと見えた。雪の一ノ倉を同定しながら 振り返ればシンセン岩峰が鋭い。 
人気は東尾根に譲るとして、この一ノ沢左稜。なかなかの好ル-トである。

そして、下山後のひとっ風呂と冷えた一杯。これは労働だろうが娯楽だろうが関係なく止められない。 
 

sak


八ヶ岳・阿弥陀岳北西稜

2006年03月05日 17時22分40秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2006/3月上旬 八ヶ岳・阿弥陀岳北西稜

ラッセル

明け切らない闇に明かりを投げるのはコレで何度目になるだろうか。 
美濃戸口からの林道はいつ来ても、やっぱりいつもと同じダルダルさがある。 
とはいえ、自分はいつまでこの道を辿れるか、はたしてあなたはどうなのか。 
そんなこと考えながら闇の中。 つまりはこの林道歩きみたいなものなのかと思い当たるのだ。

北西稜へは数日前のトレ-スが急な樹林帯の途中まで付けられていた。 
露岩を過ぎ視界が開けるとラッセルも本格的となり、腰ラッセルを稜上まで。 
小ピ-クからリッジを行く。 前日の降雪で心成しかこれから先も雪が多い。 
 

リッジ

1ピッチ:リ-ド 
リッジの右斜面を行く。「あと5」になって、適当な対物が見つからない。 しかたなく斜面をいくらか下って潅木に支点を取った。

2ピッチ:フォロ- 
同じく、リッジ。か細い潅木でランナ-をとって、雪に埋もれた岩のフェ-ストラバ-スがいやらしい。

3ピッチ:リ-ド 
小岩峰は右から巻かず、正面から行く。 どうにか第一岩壁まで伸ばしたかったが、10m手前でロ-プが伸びない。 一杯なのだろうとピッチを切る。

4ピッチ:フォロ- 
リッジの残りを約10m。第一岩峰基部。しっかりした支点と安定したテラス。 
 

見せ場

5ピッチ:リ-ド 
基部からはいったん右にトラバ-ス。あとは草付フェ-スを直上らしいが、雪に埋もれ困難を予感。 ピッケルとバイルで戦闘態勢をとる。 
雪の掃除をしながら登攀。支点は極端に少なく、捜索に困難を極める。 やがてフェ-スから凹角を越え、リッジにたどり着く。 ザイルが残り数m。第二岩壁まで15mほどであったが、リッジにハ-ケンを打ちピッチを切る。 
このピッチで左手のグロ-ブは酷使され穴だらけとなる。「悪い」そんな印象が強く残った。

6ピッチ:フォロ- 
15mほどだが、雪の付いた岩のリッジはやはり掃除に時間を要した。 切れたリッジは風が強ければとても緊張する場面となろう。天候の安定は我々の強い味方であった。

7ピッチ:リ-ド 
第二岩壁の基部から左にトラバ-ス。バンドは雪に埋まっており、壁は一気に谷へと200mほど落ちている。 
雪は締りが悪く、一歩毎にサラサラと足元から奈落へ消えていく。確実にステップを安定させながらカニ歩き。 ここが行者小屋から良く見える見せ場ピッチといえよう。 

 

核心部

8ピッチ:フォロ- 
実質の最終ピッチで、核心部。残置を使ってのA0だが、支点の多くが雪に埋もれている上、 スタンスが外傾。困難さは登攀時間に比例する。

生憎の日陰で震えながらトップを見守る。最後はアブミを使いリッジの向こうに 姿が消え、まもなくビレイ解除。 
フォロ-の気軽さでA0しまくりロ-プ張り張り。最後のガバで 体を引き上げると遠く木曾駒の向こうに夕日が空を真っ赤に染めていた。

賞牌

スッカリ暗くなった頃、阿弥陀岳。あとは美濃戸口までボトボト歩き。

登攀の充実は、それを成し遂げた者のみが与えられる賞牌である。 
何にも代え難いそれは、それを知る者しか語れない。 ならば互いの信頼が報奨といえよう。 
その光栄に感謝をしながら、暗い森をヘッデンで切り裂きながら行けばボトボト歩きも悪く無い。

時は巡り、たとえ道が変わったとしてもこの日は決して変わらない。 
北西稜は記憶に残る一本となった。 

sak


八ヶ岳東面・天狗尾根

2006年02月15日 17時20分28秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2006/2月中旬 八ヶ岳東面・天狗尾根

八ヶ岳・天狗尾根

「初日はキレット小屋でヨカッペよ。」と人は言う。 でも我々は出合小屋にこだわる。 
「こ、これには深い訳が・・・。」と、いうことにしておく。 
理由なんて有るようで無いもの。 
一体なぜ出合小屋にこだわるのかは 自分たちでもうまくは説明が付かないのである。でもきっとあるその訳はたやすく他人に公言する類のものでもなかろう。

計画は初日に美しの森から天狗尾根を登り、出合小屋まで帰着、翌日下山というもの。 
そういえば今日はバレンタインデ-。硬派の山ヤは八ヶ岳東面。これでキマリ! 
見上げればコレしかないというほどの蒼空。最高のプレゼントである。

 

大天狗

尾根に上がれば足を掬うような強風にやや閉口。膝程度のラッセル。 
カニのハサミは左をトラバ-スしてひと登り。 
右へトラバ-スしてフィックスの張ってあるルンゼは足元が奈落へと続いている。 
精神的安心のためロ-プを1ピッチ出す。 
続いて草付やら岩稜やらをいくつか越えると大天狗が行く先に鎮座する。 
ここは基部を少し登りバンドへとトラバ-スすれば安定する。一歩だけ大きな体重移動が必要で緊張する場面である。


 
蘇る記憶

バンドを伝って小天狗をバックに記念撮影。ここはなかなかイイ雰囲気。小天狗は左の草付で巻く。 
あとは縦走路へ向けてひと登り。といいたいところだけど、折りからの強風でバテバテ。大きなレンズ雲が恨めしい。

ツルネへの縦走路はガレの下りに神経を使いつつも、阿弥陀南稜や権現岳、そして今トレ-スしたばかりの天狗尾根など 見渡せば記憶も蘇る景観がぐるりと展開し、決して飽きることは無かった。

 ひととき

息も絶え絶えどうにかツルネ。東稜を下る。 
どうにかヘッデンの世話にならなくて済んだ。そうして出合小屋の夜は更けていく。

翌朝、ひと仕事を終え充足の緩やかなひとときは穏やかな日差しとともにゆるりと過ぎていく。 
コ-ヒ-をすすりながらとても満ち足りた時間にこのユトリ。できることならこのまま時が止まってほしい。 
退屈な下山も工夫ひとつで予想以上に愉快になる。そうして、おそらくはまた来るであろう地獄谷に別れを告げた。

 


sak


八ヶ岳西面・小同心クラック

2006年01月10日 00時17分16秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2006/1月上旬 八ヶ岳西面・小同心クラック

赤岳鉱泉 
見上げる空に満天の星が輝いていた 
マイナス12℃ 
美濃戸口の車内でこの気温だった。 
あまりの寒さに寝坊することすら苦痛となり、準備に取り掛かかる。 
結局、この出来事が緩みがかっている気持ちを引き締めてくれた。 
未だ明け切らぬ闇にヘッデンを灯す。闇の向こうにこれから始まる山行への期待と不安を感じながら。

赤岳鉱泉へと着くころ、空は星空から青空へと変わっていた。

 
大同心稜

大同心稜は急激に高度を上げるとともに息も上がる。 とはいえトレ-スの恩恵に賜り、なぁんにも考えずに右、左、右と足を出していけばその先へと導かれる。 
上昇する体温とは裏腹にこの低温で冷されたピッケルを持つ右手だけは二重の手袋をもろともせずピリピリと痺れた。

『自分の要素は決して好ましいことばかりではなかった。 誰かに解ってほしい時も無くは無いが、如何に近しくともそれは困難であろう。』 
そうやって私は幾年月を過していくのか。

樹林帯を抜け眼前に大同心の姿が見えると俄然、心の高揚を覚える。

 
小同心

大同心から小同心へのトラバ-スはシ-ズン初めのギコチなさで我ながら不安を感じざるを得ない。 
それでもまあ、非現実な山岳景観に酔いしれ、あまりの寒さに痺れていた指の事を一時は忘れさせてくれる。

『満たされないのも孤独なのも呪うのも、いつしか自分を責めては納得させてきた事も、 もっと奔放に生きてこれなかったことへの後悔もあるはずだ。 でもそれが道だとうすうす感じているから諦めだってする。』 
そうやってあなたは幾年月を過していくのか。

小同心基部からは左上のチムニ-へと吸い込まれていく。 
時折、岩に付いた雪が綿毛のようにふわふわと風に乗って飛ばされて行く様が印象的であった。 
好天、微風、コンディションは言う事無い。唯一つ、未だに上がらない気温は「寒い」を通り越して「痛」かった。 
指は凍えて痺れるばかり。頬はこわばり「ビレイ解除」が旨く発音できないほどだ。


ランナウト

1ピッチ、フォロ- 
正面フェ-スから左上でチムニ-。凍えた手と体でギコチなく何とか。 
2ピッチ、リ-ド 
はじめこそ体が硬かったものの、やがて勘を取り戻す。しかしピンが見つからず、なむなくランナウト。 緊張する場面。慎重にスタンスを選び、確実に前歯を乗せていく。岩角で支点をとって一安心。 チムニ-は徐々に広がっていく。ここは大胆に両手両足を突っ張って体を上げ、突き出たところが小テラス。 
3ピッチ、フォロ- 
左のクラックをいく。少々かぶった岩を抱えて右を行くか左をいくか、このアタリは各々思い描いたム-ブでもって痛快に越えていく。 
4ピッチ、リ-ド 
肩からは草付きをひとのぼりでカシラ。なんてこと無い登りだけど小同心を詰めるピッチは心に余裕を持ってのんびりと。

ここからはしばらくコンテで横岳直下。そこから1ピッチで横岳山頂、終了点である。 

 

大同心ルンゼ 

下山は大同心ルンゼから大同心稜。 
今まさに登ってきた小同心を眺めながら高度を下げていく。

つまりは、誰しも永続的に充たされることは無いのだろう。 としても、今の自分はずいぶん充たされているのだろうと思い至る。 
だからこそ、こうしてツルベで行くことも、登攀を語り合うこともできる。 儚いこの一瞬に笑い合える仲間がいる。これが自然である。 
そうやって幾年月、綿毛のようにふわふわと自分は重ねられていく。

sak


会越・毛猛山~未丈ケ岳縦走

2005年05月05日 17時12分16秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2005/5月上旬 会越・毛猛山~未丈ケ岳縦走

やぶこぎ 【藪漕ぎ】 

木・竹・草などが一杯生えているところを分け開き前進すること。 
体の自由を奪われ苦痛であることが多く一般的には忌み嫌われる反面、特異な人々に愛される登山における行為。

六十里越の国道は例年にない多雪で未だ開通の目途が立たず、JR只見線、田子倉駅から除雪途中の国道をしばらく歩く 
国境トンネル入り口、湖側の斜面をひとのぼりでロボット雨量計のある峠に立つ。 
エメラルド色美しい田子倉の湖面を愛でつつ、しばらくは雪堤を拾う 
多雪とはいえ前毛猛まではまだまだ標高が低く、藪漕ぎに従事する場面も多い 
健気に咲くカタクリの姿がようやく来た春を感じさせる 


しんりょく 【新緑】 

晩春・初夏の若葉の緑。「-がまぶしい」 
春山における魅力の一つ。若々しいエネルギ-に満ち満ちた姿に「まだまだ自分だって」と背伸びをしたくなることも。

前毛猛に立ってようやくこの山旅の全容が眼前に広がる 
毛猛山~未丈ケ岳。その前衛の頂にあって毛猛ですら春霞にかすむ

見下ろせば新緑美しいブナの木立にホッとし、午前の瀟洒な陽に輝く湖面の向こうに村杉半島 
今日の行程も決して余裕はないのだけれどもここまで来てセカセカ行くのも馬鹿馬鹿しい 
幸いここからは雪堤もかなりのボリュ-ムで繋がっている。時に藪を行くのもまた楽しである 
 


ざんせつ 【残雪】 

冬が終わり季節が変わってもなお消えずに残っている雪。 
強烈な藪コギは嫌だけど道なき藪山を闊歩したいという身勝手な我儘を可能にしてくれる自然の恵み。「-回廊」

毛猛までの道のりは遠い。見た目以上に雪堤は切れており藪を行くことも多かった 
残雪なき季節ならば容易でないことは明白で、それは遥か彼方イスカンダルへ旅立つくらいの意気込みがなければ 到底叶いそうもない

シリセ-ド 〔siri-sade〕

積雪した斜面に己の臀部の丸みを利用し滑り降りる行為。尻制動(?)。 
登山における行動はスピ-ディ-且つ楽しいことこの上なく、時にやりすぎズボンの痛みに涙することもしばしば。

毛猛の頂は秘境たる雰囲気を匂わせていた。うむ。これこれ。(喜) 
直下の猛烈な藪を突破すれば今度こそは幅五間はあろうかと思える雪堤。延々大鳥岳手前までは繋がっているようだ

毛猛の頂から見定めておいた本日の幕場候補地までは時にシリセ-ドを交えながら快適に高度を下げた 

 


どくず 【読図】

地図に記載された等高線や記号などを基に情報を読み取ること。 
それぞれの経験、判断、考察により熟達度の誤魔化しは効かないが、「地図が間違っていた」 というモットモらしい言い訳も酒の肴に利用できる。

明けて朝日と共に朝食とする 
順調に進めば今日中に銀山平温泉に浸かれる。それを励みに雪と藪とを繰り返し大鳥岳、そして未丈ケ岳、 日向倉山もすぐそこというときに濃いガスと冷たい雨 
この山行では、視界を失うのが最も痛手である。方向感覚を読図能力と判断力に頼わざるをえなくなるからだ 
しかしすでに気持ちは温泉気分。とてもいい仕事はできそうもない。冷静になる時間が必要だと思った 
方角を失わないために日向倉の山頂付近に天幕を張り、食事をしたら半ば不貞寝のように寝袋に直行した

みなみあいづ 【南会津】(地域)

会津盆地南に広がる山々を有する地域。広義的には川内、会越、奥只見、尾瀬、帝釈、駒止など各山域を指す。 
いまだ静けさを保ち、原始の森に安らぎと恵みが残されている魅力の山々。

翌朝、未だ濃い霧にため息をつきながら磁石を片手に銀山平に向けて歩き出す 
地形考察を重ねつつ何とか想定路を外すことなくシルバ-ラインの銀山平トンネル入り口に降り立つ 
ここまでくれば一安心。小出の駅までどうしたものかはこれからじっくり考えよう。

ココロの憂いに南会津。 
地味で素朴でゆるやかで。 
喧騒に煩わされる日々、自分が渇きを覚えるのはそんな何気ない平穏のような気がしてならない 
それがホントの南会津。意味の核心でもあるわけです 
 

sak