acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

谷川岳幽ノ沢ノコ沢大氷柱

2023年03月12日 23時15分34秒 | 山行速報(雪山・アイス)

ザワザワする日々を言い訳にして引き籠る
邪魔もののない世界は快適だ

その小さな世界はやがて襲われる
自分自身に

「諦め」で心満たされるものか!
そして薄暗い部屋で地図を手に取る

 

2023/3/6 谷川岳幽ノ沢ノコ沢大氷柱


ノコ沢大氷柱のポイントは雪の状態判断
あの氷柱に取り付くかどうか
雪崩が頻発しての撤退記録も少なくない
滝下に飛ばされたという記録もある

当日の天候に抗らうことはできなくても、準備と偵察で登攀に没頭できる確率が1%でも上がるなら取り組むべきだと思った。

5日前はあちらこちらで聞こえた雪崩の轟音も、前日の偵察では静かな幽ノ沢
雪の状態はいい
取付きまで闇夜の中でも行けるという確信も得た

当日は午前1時半にisiさんと合流
2時前にベースプラザを出発
一ノ倉出合、幽ノ沢出合まで踏み跡をトレースする

3時頃から雪が舞う
雪の勢いは増していき、実に嫌な降り方だ

前日の偵察でノコ沢に5パーティ-入ったと聞いていた
彼等の踏み跡をありがたく使わせていただきながらも、この降雪で踏み跡が消えるほど積もるなら撤退しようと思案する
昨日の好天に、今日の積雪は危険だ

幸い展望台の尾根に上がる頃には雪はあがり、積雪も5cmに満たない
ここで身支度をして尾根を詰める

次第に辺りは明るくなるが、淡い霧の中
この辺りで大氷柱を望めるはずなのだが、今はその姿を見ることができない
雪崩リスクを考慮するならむしろ「いい天気」と言っていい

尾根からノコ沢の左岸をトラバース気味に行く
基部の左岸側で登攀準備
50cmほどシュルンドが開いており、念のためロープを出してシュルンドを跨いでトラバース
氷柱下、スクリューでビレイ

氷瀑中央あたりから凹状とフェイスを繋ぐ
isiさんのリードは安定
余裕をもって登ってゆく

50mロープで2ピッチ
アイスクライミングは1.5ピッチという感じか

滝上は左岸を右上、堅炭尾根に向かう
過去の記録では落ち口から沢筋を詰めて石楠花尾根に乗る記録も多いようであったが、雪崩リスクを考慮すればこちらのほうが合理的だ
雪のつき方次第でルートは変わるだろう

雪壁を詰める
この先sakがルーファイを見誤り、非常に悪い凸岩で苦戦する
ここは大きく左から巻いて行くと容易だったようだ
この辺りのトレースが消えかかっていたこともあるが、完全なルーファイミス

時に開いたシュルンドを回り込んだりして滝上から3ピッチで堅炭尾根に乗る
この時を待っていたかのように展望が開け、あたり一面に谷川の峰々

下山はβルンゼ
懸垂支点のあるコルなので見紛うことはない
クライムダウンで降りるが、見た目以上に急で長い

あとは氷柱を仰ぎ見ながらノコ沢へ小尾根を乗り越せば、アプローチの踏み跡に合流する
往路を忠実に戻るのだが、幽ノ沢出合からベースプラザまでの下山は腐り雪の踏み抜きに辟易した

準備において不安を払拭できた会心の山行だったが、山行後感は反省点の多さに複雑な胸中であった


【エピローグ】


ザワザワする日々に、空を見上げる

情熱だけでいいのなら、誰でも空を飛べるだろう

想い届かぬこともある
現実に押し潰されるときもある
快適なことばかりではないけれど、
それでもやっぱり、リアルはオモシロい

そうして人は翼を手に入れるのだ

 

sak

 

動画も

 


後立山連峰・五竜岳

2022年05月25日 00時17分08秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2022/5/2~4 後立山連峰・五竜岳


「快挙」と言ってもいいのではないだろうか。
それは山頂のことでなく、困難なルートのことでもなく、日常での出来事。
このゴールデンな日々に3連休。
平日休を生業とする身としては、本心では社会をドロップアウトするくらいの覚悟だが、
そんな様子は一切見せずに「休みますが、何か?」と努めて冷静を装った結果だ。

案の定、幾許かのチクリと来る一言は頂戴したが、
かの”一休さん”のように「気にしない気にしない、一休み一休み(三連休三連休)」。
と唱えるのだった、が。。。


【登山あるある①】

山行計画時は強気でイケイケだったにもかかわらず、直前に少しだけいろんなことが不安になったりもする。

...「あるある」は続く


2022/5/2

五竜テレキャビン・とおみ駅の駐車場でisiさんと合流。
始発は8:15なので、のんびり準備。
今日は西遠見あたりまでの行程。
ゴンドラとリフトを乗り継いで、あっという間に標高は1640m。

滑走屋に交じって山屋は数名。
みなここで準備をして、やおら登り始める。

雲はあるものの、概ね晴れ。
昨日5cmくらいの積雪があったようだが、歩行に困難はないのでツボ足で。
最初の急登で体温は上昇しヤッケは脱ぐ。
時に夏道を歩く。

非常に距離の長いイメージのあった遠見尾根だが、淡々と脳内BGMをリフレインして進めば意外と距離は感じない。

【登山あるある②】

淡々と歩いていると、いずこからか脳内にBGMが降り注ぎリフレインする。
それは名曲よりもCMなどの覚えやすいメロディーラインであることが多く、まんまと企業戦略にハマっている自分を時に呪う。

(今日の脳内BGM:「釣り具のキャス〇ィング」のテーマ

...「あるある」は続く

西遠見に着くころ、次第に雪が舞う。
五竜や鹿島槍、唐松もガスに巻かれて、稜線は暴風の予感。
展望よりも「耐風」を考慮した場所にブロックを積み上げ、幕を張る。
あとは、水を作りながらの入山祝い。(祝杯)

さて、懸念は明日のルートだ。
計画ではGⅡとG0を2泊3日で予定していたが、直前にフェイスブックのACMLで少雪の情報。
GⅡのABCルンゼの雪は繋がっていないとのこと。
藪ルンゼ登攀が予想され、加えて今日の降雪。
すでに雪は本降りで10cmほど積もっているだろうか。

「藪のスカ雪登攀かぁ」
加えて取付きまでの雪崩も気になるところ。
いずれにしろ、明日朝(4時)の天気で判断することにした。

早めの飯を平らげたら、やることもないので昨夜の寝不足を解消するべく寝袋に潜る。
幸い、頭上を轟々と唸る強風にもテントを揺らされることはなかった。


2022/5/3

4時に起床。
雪はまだ降り続いている。

棒ラーメンの朝食をとりながら、天気予報を確認。
どうやら降雪は朝まで続き、強風は昼まで残るらしい。
今日のGⅡは諦め、一般道で五竜岳へ昼頃到着の予定とし、7時まで二度寝。

再度目覚めると、風は強いものの概ね青空が覗いている。
身支度を整え、歩き出す。
昨日から30㎝ほどの積雪があったようだが、すでにトレースがある。
よく見れば、白岳の上部に単独行者。

白岳の登りの前にアイゼンを装着。有難くトレースを追う。
またも、脳内BGMはあの曲だった。

白岳を踏んで、五竜山荘。
昨夜ここで幕営したパーティーが待機しており、軽くあいさつを交わす。

流石に稜線は風が強く、休憩も体温を下げるだけなのでそのままゆっくりと歩を進める。
夏道の鎖場あたりで単独行者に追いつく。
トレースの御礼とともに、先行を申し出る。

このあたりは、岩雪ミックスでちょっと悪い。
雪に埋もれた岩をまさぐりながら急場を登る。
雪が安定してきたところで、雪面に手を突き刺してホールドを得ていたら雪中に岩が隠れていて右手中指を痛打してしまった。
その後は悪場もなく雪稜を進む。

「あそこが山頂か?」と思っていた頂の向こうにさらなる高みが見えたりして、さながら「登山あるある」だ。


【登山あるある③】

目前に見える頂は、大抵「山頂の手前」。
それは山頂を踏むために試されているかのよう。まさに試練である。

...「あるある」は続く


山頂。
ほぼ予定通りの11:57。
いつしか風は弱まり、展望も開ける。
それにしても初めての頂というのは、やはりいいものだ。

往路を戻る途中、G0の確認。
やはり、藪パインは必至。
五竜山荘を風よけにして休憩。

モチベーションというのは何事においても事の成否を左右する。
山頂を後に、満足感を得てしまったのもあったのだと思う。
状態の良くないバリエーションに取り組む意欲がみるみる下がっていったのは、自分でもわかった。
それは音を立てて急降下していくかのようだった。

【登山あるある④】

「早く下山したい病」
下界には様々な欲望を満たす誘惑と仕事の不安を払拭できる安心感がある。
私はそれに屈したのだ、そう思う。

...「あるある」は続く

幕場に戻ったのは、14時半。
ここまでの道中で、G0を諦め登山日程の終了を決めていた。
ゴンドラの最終は16時半。急げばなんとかなるか・・・。

その様子を見かねてか、isiさんは「今日はここで一杯やれたら最高ですよね」と私を諫めた。
何故に事を急いていたのか、憑き物が落ちた思いだった。

西遠見の平坦地には本日入山のテントがいくつも張られていた。
皆、幕場の整地作業と宴の準備で大わらわ。
楽しげな会話がそこここから聞こえる。
昨夜の雪で湿っていた我がテントもすでに乾燥し快適な一夜を過ごせるだろう。

今「なぜ山に~」と問われたら、語る言葉が見つからない。


【登山あるある⑤】~今宵は”登山あるある”がいっぱい~

・山屋は「なぜ山に」と問われた時のことを考え準備している
 ⇒いつ誰に聞かれてもいいように。少しカッコイイ事言いたくなるよね。

・パートナーとの道具談議で物欲にスイッチが入る
 ⇒isiさんと道具談議。いつも物欲に駆られます。間違いなくアレはポチるわ。

・テント内で足が攣る
 ⇒疲労もあってか手狭なテント内で体育座りしてると、足攣りはよく起きます。
  「漢方68番」が特効薬。

・携帯の電池残量を気にしすぎて、山アプリ(GPSログ)のリスタートを入れ忘れる
 ⇒帰幕後に気づいたりして、徒労感に苛まれる。

・「昨夜は熟睡してましたね・・・」といわれて自覚がない
 ⇒昨夜は「うつらうつら」して、あんまり寝た気がしないな、と思っていたのですが。


...「あるある」はまだ続く

 

2022/5/4

好天。
昨日入山のパーティーはすでに五竜に向けて出立。
静かなテント村。
G0を取りやめた我々は下山するのみだ。

備忘録のため、取付きへの下降路確認にしばし出かける。
あれがABCルンゼ、あれがG0。
Bルンゼ取付きに1パーティ-。

それを眺めて二人、しばらく立ち尽くした。
トライしなかった理由はいくつかあった。
冷静なる判断と言えば聞こえはいいが、言葉にすれば安っぽさだけが残った。

沈黙で呼応するパートナー。
その気遣いが沁みる。

今、私にできるのはGⅡ取付の彼らにエールを送ることだけだった。

 


幕場を後に遠見尾根をゴンドラ・アルプス平駅へと向かう。
滑走屋でにぎわうゲレンデを歩く。
「鯉のぼり」を掲げて滑走する姿もある。
皆、心から楽しんでいた。


【登山あるある⑥】

帰りのザックは、なぜか少し重く感じる。
食料を消費した分、軽いはずなんだけどなぁ。
 ※個人的なその時の心持ちと思い込みです


「登山あるある」はあなたの傍にも。
それは「登山でよくあること」かもしれませんが、その場・その時の想いは唯一無二のものとなるでしょう。

 

追伸

【sakの”山行記あるある”】

1.山行への想いが強すぎて、前置きが長くなってしまう(笑)
2.未来志向の教訓や格言が大好きなので、「ポジティブ説教」が色濃い(汗)
3.執筆中は脳内BGMがここでもリフレインする


sak


↓五竜岳の様子を動画で

 

 

 

 

 


越後・池ノ塔~郡界尾根~越後駒ケ岳

2022年05月12日 22時50分25秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2022/4/28 池ノ塔~郡界尾根~越後駒ケ岳

 

普段は手の出ない奥深い山巓でも残雪を利すれば、山旅の自由度は広がる。
これぞ春山の醍醐味といってもいい。

地形図を眺めれば創造の山並みが手招きをする。
マイナーな場所ほど行ってみたくなるのは、もはや病か。
否、そこは探求心だと言っておこう。

点と点を繋げばそれはもう、私にとっては壮大な計画
いつかきっとの想いに栞を挟み、生業に縛られながらも等高線の連なりに思いを馳せるのだ。

池ノ塔は越後駒ケ岳から北西に連なる郡界尾根の中ほどに位置する尖塔。
佐梨川雪山沢を詰めた頂がそれである。
アオリとの間には、地元称「ブラック台地」といわれる平坦地がポッカリと開ける。
ここで一泊も楽しそうだと大湯から駒の湯、池ノ塔尾根を辿っての計画を立ててみたものの、初日は生憎の雨で彼の地での夜はお預け。
しからばと水無川側から残雪に埋まるセンノ沢を遡り、池ノ塔~越後駒ケ岳を日帰りで目指す。

荒山集落の先を歩き始めたのは夜明け前。
雪の残る水無川添いの道をしばらく歩く。
途中、森林公園を見送り小規模なデブリを越える。
前方にカグラ滝が轟音をたてながら落ちるのを望むとセンノ沢はもうすぐだ。

センノ沢は出合でこそ雪は割れているが、下部は概ね雪に埋まっていた。
中流で右岸側に白沫の流れを見る。
本流は谷を埋める雪渓と考えてそれを詰めるが、どうやらこちらは池ノ塔へ直接詰めあがることに途中で気付く。

これからの針路補正は相当の労力を費やさねばならぬという思いから、そのまま雪を繋いで標高1200m。
ここからは池ノ塔まで藪を漕ぐ。

久しぶりのヤブコギに少しばかり興奮しながらの登行。
とはいっても、石楠花などのヤブコギ天敵が現れ始めるとウンザリしてくる。
そして、池ノ塔西峰。
真っ白なブラック台地を見下ろして次こそはと、彼の地での一夜を想う。

西峰から池ノ塔本峰まではわずかに踏まれているようで藪は濃くない。
次の無名ピークまでは何とか歩けるが、そこから先の郡界尾根は屈強な藪と闘うことになる。
時に空中戦を強いられながらも、左には佐梨川に切れ落ちる断崖が待っている。
これは、自分との闘いといえよう。

それでも郡界尾根と越後駒に挟まれた雪のオツルミズの景観に癒され、
断崖の基に昨年歩いた鉱山道の姿を見ると感慨深いものがある。

最低鞍部の少し手前でいよいよ藪は頑強となり、もはやどうしたらいいのか途方に暮れるレベル。
このままでは今日の下山もままならなくなるので、オツルミズへと下降する。
雪渓は概ね安定しており、踏み抜きもないが越後駒側からの雪崩を警戒し常に郡界尾根寄りを歩く。

途中、雪崩の危険のない緩やかな斜面から流れる支沢で水補給。
担いだ水分はすでに底をついていたので、これは生き返った。

フキギを過ぎると越後駒へと突き上げる雄大な谷を右に見送る
この先、雪が途切れて流れが顔を出す。
右岸を少々ヤブコギしてこれをやり過ごすとオツルミズ源頭。

 

雨流線が谷を求めて、雪面に艶めかしい曲線を描く。


雲は流れ、世界中に羽ばたいていく。


空と白銀の狭間に、陽は小さな陰を落とす。

そして歩く。
この星の片隅を歩く。

下山はグシガハナ経由の極楽尾根。
急下降に加えて雪と夏道のミックス。
登山道とはいえ、気は抜けない。

十二平に着く頃、闇に捕まる。
闇に包まれた大デブリ帯はまるで迷路。
突然進路が激流に削られ、断崖となっていたりする。
落ちれば、雪融水に流され10分とは保たないだろう。
ここは慎重に。
白息の向こうに、星が瞬いていた。

果たせなかった場所での一夜を想う。
傍らに花陽浴の吟醸。
そうしてまた等高線の連なりに思いを馳せるのだ。


sak

 

 

↓ 山行の様子を動画で


南会津・七ケ岳

2022年04月08日 18時07分17秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2022/3月~4月 南会津・七ケ岳


一路、北へ。

陸羽街道から塩原を抜けて、山王峠を越えると南会津。
道の駅を左に見て、山菜ときのこの販売所を通り過ぎる。
そして会津鉄道の高架橋をくぐると「あぁ、来たな」と、いつも思う。

その南会津の前衛に鎮座するのが七ケ岳。
いつかきっとと思う反面、気軽にハイクできるだろうと今まで選から外れていた。

雪の多い季節ならば面白そうだと記録を漁るが意外と積雪期の七峰縦走はネットで見つからなかった。

というわけで、出来上がった当初プランが、
”針生~黒森沢登山口~高倉山北尾根~高倉山~七ケ岳~下岳~下岳登山口~針生”
というもの。
さて、いかがなものか。

 

【針生~黒森沢登山口~高倉山北尾根(中退)】

針生からのファーストトライは前日のルート工作(林道ラッセル)もむなしく、降雪と強風で時間切れ中退。

多雪の年、どうやら1日で抜けるのは厳しそうだ。
同行してくれた、kikさん、matさんには感謝。

再訪を予感しながら、次なる機会に望みを繋げる。


【針生~黒森沢登山口~高倉山北尾根~高倉山~七ケ岳~黒森沢登山口~針生】

ファーストトライから7日。トレースが残っていることを期待したが、会津田島では直前にドカ雪が降って、むしろ雪深い林道に苦慮。
スキー板で脛まで潜るのだから、ツボ足だったら恐ろしいレベルだ。
前回、針生から2時間半で着いた登山口まで、結局4時間もかかってしまった。

スキー板をデポして、わかんに履き替え高倉山北尾根に乗るが、膝ラッセル。
なかなかに心を砕く深雪である。

こういう時は、アレだ。
「こんなの当たり前だと思い込んで行く」作戦だ。

端から見ると苦行なんだけど、「むしろこれが当たり前」なので大丈夫です。
的なアレです。
まぁ、どちらかというと辛いんですけど、なんか山やってる気がして気分は高揚します。

雪庇の発達した急登をいくつか超えると次第に視界が広がる。
こうして眺めると南会津の山々は起伏がなだらかだ。
隣に見える大平山までの稜線も廊下のように雪庇を連ねていて、楽しそうだ。

などと思って後に調べてみると、やはり歩いている方はいるのです。
しかし、ものすごい記録だ。

◆会津田島~舟鼻山~駒止湿原~黒岩山~七ケ岳の記録(3泊4日:55.6km)

とにかく、こんなの当たり前だと思い込んで行くと次第に傾斜は緩む。

こんもりとした雪原に一歩踏み出す。
そうして足跡は伸びていく。

ひとつひとつの積み重ねは、確実に頂へと近づいていく。
一方で、消失点に向かっていることもまた事実である。
頂は通過点でしかない。

刻まれてきた足跡はそのほとんどが衆目に触れることもなくやがて消える。
ただ、振り返って胸を張ればいい。
こんなの当たり前だ、と。

時間は16時過ぎ。翌日は予備日。
このままワンビバークで縦走することも考えたが、視界にはレンズ雲。
強風の予感に恐れをなして黒森沢コースを下山。

途中、闇に捕まった上にわかんのベルトが切れるアクシデント。
結局ビバークすることになるのだが、これでよかったのだと自分に折り合いをつけた。


【たかつえスキー場~七ケ岳~下岳~古内登山口~会津山村道場駅】

4月4日
明らかに3月と比べると里の積雪量が違う。というか、ほぼなくなっている。
雪庇の崩壊を懸念しながら車を走らせる。

道の駅:番屋で朝を迎えるが、あいにくの小雨模様。気温は1℃。
慌てても仕方ないので、次なる計画の偵察として桧枝岐まで車を走らせる。

そうこうしているうちに雨が上がる。
この雨の切れ間を待っていた。

今シーズンの営業を終えた、たかつえスキー場のゲレンデを直登してゲレンデトップ、高倉山まで。
山頂に着くころ、また雲に巻かれる。しかしここまでくれば雨でなく雪。気温も氷点下だ。
冷たい雨より、雪の方が組みし易い。

高倉山から七ケ岳は一投足。
とはいえ、視界が利かないからコンパスで方角セットは忘れずに。
懸念していた雪庇は一部切れ切れになりながらもなんとかつなげられた。

雪庇の立体的な造形とクラックの切れ目。
それを慎重に選びながら歩く、このシチュエーションがいい。

下岳を過ぎると時に夏道が現れる。
道標を頻繁に見かける頃に縦走路は終わり針生と古内の分岐点。
古内への下りは道を外してしまったが、問題なく林道に出る。

林道開通記念碑からは地形図にある破線、南の沢筋を行く。
渡渉が一度あったが、靴をぬらさず飛び石で通過。
あとは林道らしき雪道を行くと舗装路に出る。

事前にデポした自転車を使って舗装路を快適に下る。会津山村道場駅で一休み。
当初、たかつえまで自転車で車回収をしようと考えていたが、16インチの折り畳み自転車では1%の勾配ですら大苦戦。
中山峠の8%勾配など到底歯が立ちそうもない。
なんとか会津高原駅までたどり着き、駅に自転車を置いてデマンドタクシ-(たかつえまで900円!)のお世話になるのであった。

山々に遊ぶことを選んだ自由。
成功も、失敗も、充実も、後悔も、苦楽も。
何があろうとも、そんなの当たり前だ。

選ぶ自由がある。
その価値を忘れてはならない。


sak

 

 


常念岳東尾根

2022年03月31日 20時56分42秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2022/3/30 常念岳東尾根


闇にゲートが浮かぶ。
この先、様々な出来事があるだろう。
灯りをともして、ゲートを後にする。

常念岳は安曇野に居を構えた中学校の友人がイチ押しの山だ。
家から見える山姿が実に良いらしい。
同窓会でその話を聞き、一度は行かねばならない山の一つだった。

舗装路をしばらく歩いて、東尾根の取り付き。
鉄塔巡視路となっており、しばらく歩いやすい道が続く。
高架鉄塔の下をくぐって、笹原の踏み跡を行く。
明瞭な踏み跡で不安はない。

残雪とともに藪が濃くなってくると道は隠されるものの目印と先行のトレースが先を導いてくれる。
時に膝まで踏み抜くこともしばしばだが、雪の締まった3月にトレースのある登行は気が楽だ。

反面、泊装備の重荷に体が悲鳴を上げ始める。
予定では尾根上部2100mで幕を張り、明日の登頂を目指す計画。
しかし、明日の天気は下り坂。
しからばと、1900mに泊装備をデポし本日登頂にシフトチェンジ。

軽荷となってから登行は捗り、森林限界。
前常念が美しい。

晴天、微風。トレースは明瞭。
時に股下まで踏み抜くこともあるのだが、腰深までハマっている先行のトレースを見るにつけ、
心の中で「ありがとう」と唱えてその穴は避けて歩く。

前常念への登りでは重荷登行の疲労も影響してか息が切れ始める。

こういう時は、アレだ。
「電池切れにならないように行く」作戦だ。

端から見るとバテているように見えるのだけれど、「問題ない」程度にバテているだけなので大丈夫です。
的なアレです。
まぁ、どちらかというとバテてるんですけどね(汗)

 

前常念まで岩場が二か所。
右から巻くように通過する。
一か所、急斜面トラバースからの直上でピッケルを使う。

ようやくたどり着いた前常念から常念岳はまだまだ遠く見えるが、これまでの登りに比べたら傾斜は緩い。
それ以上に奥に広がる景色は素晴らしく、ビクトリーロードといえよう。

 

「これが北アルプスです」
山頂からの景観は雄弁に語っていた。

 

 

自分の足で、一歩づつ。
信じ続けた結果。

 

山頂を後に下山は登りと反比例して早い。
こうなると、下界の様々な誘惑が脳裏に過る。
ということで、泊装備を回収して下山。

途中、闇につかまりヘッドライトを灯すも、踏み跡を拾えるところまでは高度を下げられたので不安はない。

遠く、安曇野の街の明かりが揺れる。

 

闇に始まり、闇に終わる山行だった。
加えて、使わなかった無駄な荷を担いだ徒労感は否めない。

それでも一歩一歩の積み重ねは重厚だ。

 

無限の闇に吞まれぬように。

決めるのは自分だ。

 

sak

 


八ヶ岳西面・無名峰南稜

2021年04月03日 16時41分17秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2021/3/27 八ヶ岳西面・無名峰南稜


行者の幕場を6時発。
中山尾根を終え、それぞれのテントに引きこもる前に共有しておく。

ヘッデンを灯して取付きまで、とも考えた。
しかし北沢右俣の各ル-トは視界が無いと取付きを取り違えやすい。
過去の経験を踏まえて、明るくなってからの出発とした。

行者小屋から中山乗越を越えて九十九折を下り、右手の沢筋に入る。
僅かにトレ-スがあり、遡上にラッセルの苦労はなかった。

右岸二本目の沢に入る。これが三叉峰ルンゼ。
雪は締まっており、トレ-スの痕跡もあって苦労はない。

しばらくして左にルンゼを分ける開けた場所。
おそらくここが無名峰南稜「新ル-ト」への取付きだろう。

しかし、尾根まで雪が繋がっていないことに加えて、尾根に乗る直前が脆く悪そう。
現在地に確信を得ることも含めて三叉峰ルンゼ大滝が視認できるところまで行くことにした。

三叉峰ルンゼ大滝(奥)

旧ル-トの取りつきコル

大滝手前まで来ると左にコル。
ここが旧ル-トの取付きだろう。
雪もつながっており容易に上がれそうなので、旧ル-トから取付くことにした。

コルでロ-プを出し、isiさんから登攀開始。

1ピッチ目の露岩

1P
コルから脆い露岩を越えハイマツ帯。
小尾根を辿ると露岩に突き当たる。
先が読めないので、ここでピッチを切る。
支点は灌木のみ。(露岩でカムが使える)

2P
脆い露岩を直上、ホ-ルド・スタンス選定は慎重に。
小尾根に上がってその先に緩傾斜の脆いスラブ。
ロ-プはまだあるので急な草付(左上)に入る。
灌木が豊富で、草付&木登りピッチ。
時に被った草付を強引に登る。
支点はないので、灌木で取る
途中、ロ-プが足りなくなって立木でビレイ。

3P
草付を直上。
sakは左トラバ-スが良いのでは?と思ったがisiさんは直上していく。
これが、大正解。
岩壁にハンガ-ボルトが二カ所あり、新ル-トとの合流点であることが分かった。

左下方は脆い岩のトラバ-ス。
新ル-トの核心ともいえる岩壁基部のトラバ-スは見るからに悪い。
先ほど草付を左トラバ-スしていたら、この脆い岩の只中に出たと思われ安堵した。

新ルートのトラバ-ス(左下)

 

4ピッチ目の凹状

雪稜に出る

4P
正面岩壁凹状を行く。
岩壁には支点がないが、スタンスは得られるので慎重に。
上部灌木で支点を得て一安心。
草付をひと登りで開けた尾根に出る。

 

中間岩場の手前

 

5~7P
雪稜から岩塔へ
岩塔は左を回り込むようにして通過。
コンテでも良いだろう

8P
中間の岩場。
どっしりとした岩塔の基部から正面岩ルンゼを直上。
途中からバンドを左へ伝って草付~リッジへ。
支点はないので貧弱な灌木かカムで取る。
草付ではアイスバイルが心強い。

上部岩峰が見えた

9~10P
雪稜~ミックスを2ピッチ、最後の上部岩峰が見えてくる

11P
小岩峰を左から巻いて上部岩峰へ。
岩峰下部のチムニ-はホ-ルドも豊富で楽しい。
岩峰中間部のテラスまで

核心部のチムニ-(と、チョックストン)

12P
岩峰上部のチムニ-が無名峰南稜の核心。
被り気味のチムニ-にチョックストン。
支点と残置スリングがあって、A0通過。

チョックストン辺りは脆い部分もあるので注意。
isiさんはこのチョックストンに足をかけた時グラついたらしい。
いつも冷静な彼がかなり興奮気味だったのが事の次第を物語っていた。

核心を越え、ひと登りでハンガ-ボルトが二カ所。終了点だ。

目の高さの稜線に登山者を見る。
ここでロ-プを解き、歩いて登山道へ。

プアな残置や脆い岩場などアルパインらしさは中山尾根を遥かに凌ぐル-トだ。
八ヶ岳にあって無風状態、そしてこの陽気。
厳冬の壁だったら、今日のようにはいかないだろう。

13:45
ヘッデン間際の下山を予感しつつ、標を一つ重ねられた安堵。
まずは、お地蔵様との再会を果たさねばなるまい。


sak

↑私的備忘録(トポ)※PDFが開けます

 


八ヶ岳西面・中山尾根

2021年04月02日 16時26分46秒 | 山行速報(雪山・アイス)

停滞

中山尾根は、2020年末にisiさんと南伊豆に行ったとき候補に挙がった。
sak自身は2005年にトレ-スした事があったが、無名峰南稜と併せて一泊というのも大アリだ。
まずはここに標を定め、禍中を凌ぐことにした。

とはいえ、文明社会の生活は居心地がいい。
休暇に部屋で映画や読書、山道具選びに耽るのもそれはそれで充実はする。
こうした生活習慣に浸ってしまうと、その標すら見失いかねない。

そうして山道具に散財したのも事実なのだが、消費も社会の役に立っているものと自分を納得させる。
だからこそ新しい道具たちの力を借りて、自分の背中を押すのだ。

 

2021/3/26 八ヶ岳西面・中山尾根


美濃戸口から歩いて、美濃戸。
南沢に入って、山の神で一休み。
久々の山行に加えて、密対策でそれぞれに幕を担ぎ、ガチャも含め重荷が身に堪える。

行者小屋で幕。
ようやく重荷から解放されたら、今度はガチャを身に着け中山尾根の取付きへ急登を行く。
トレ-スがあり、大変助かる。

取付きでロ-プを結ぶ。予報通り風が強い。
しかし、稜線に雪煙は見えないから何とかなるはずだ。
isiさんから登攀開始。

中山尾根の核心はこの1ピッチ目だと、私は思っている。
まだ体が登攀に馴染んでいない上に、傾斜は立ち良きホ-ルドが少ない。
isiさんは着実に高度を稼ぐ。

2ピッチ目の凹角は「アイゼンのツァケをここにおいてね」と言わんばかりのスタンスがある。
今日は氷雪がないけど、このピッチで乗雪やベルグラがあれば難易度がワンランク上がるだろう。
その上は雪稜。
折からの強風もありスタカットで行く。

上部岩壁の凹角から凹角ハング。
いわゆる核心だが、15年前の記憶がまるでない。
支点も豊富で慌てず探せばホ-ルドスタンスも多い。
isiさんはバックステップを使わず、被った岩をそのまま乗越てきた。
さすがだ。

しばらく雪稜。

最後の小ハングが意外と手こずった。
その大きな理由は、乗越すところに支点がないから。
ちょっとの勇気と思い切りが必要。
そして、異様にロ-プが重くなってしまった。

トサカ状岩峰を目前にリッジを跨ぎ、バンドをトラバ-ス。
登山道はすぐそこだ。

風を避けて一休み。
岩に雪なく快適な登攀となった。
支点が埋もれることがない上、ホ-ルド探索に手間暇かからないのは助かる。

登山道を赤岳方面へ。

まずは1本。
地蔵菩薩に再会を誓い、尾根を下れば今宵の幕が待っている。


sak

 


南アルプス・農鳥岳

2020年02月14日 11時46分37秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2020/2/3-5 南アルプス・農鳥岳


なんて穏やかな気分なんだろう。
山を下りて、温泉入って、美味しいものを食べて。
そして、さらに明日も休日なんて。
いろいろあるかもしれないけど、日常は概ね平穏だ。

初日は2100mで幕。
樹林帯の中なので、至って静か。

想定の2350mまでは至らなかったのは、ラッセルに苦難を強いられたからだ。
大門沢小屋まではまだいい。
そこから先はひざ上~腰深まで。
もちろんトレ-スはない。
タイムリミットは16:00。
小屋から300m高度を上げるのに4時間かかったことになる。

稜線まで約700mの高度差。
あとどれだけ掛かることか。

それでも農鳥岳から北岳までの計画に望みを繋いで、二日目。
全装を背負ってまずは2800mの稜線を目指す。

当然のごとくここから先もラッセル。
表層が薄くて堅いモナカ雪。
外はサクッと、中はエアリアル。
スナック菓子ならさぞかし絶妙な食感だろう。
時に胸ラッセルにつかまり、途中何度諦めかけたことか。

稜線に近づくにしたがって、斜面はアイスバ-ン。
脹脛には相当な負担であったが、前歯に乗って登行。
ラッセルよりはいいが、スリップしたら即アウトだ。

稜線には雪煙がつむじ風となって舞う。
輪舞に興ずる雪精がそこにいる。
もう少しで届く。
それだけを励みに苦しい登行。

稜線。
広河内岳が近い。
締雪を選んで登ってきたため夏道を大きく南に外していたようだった。
そしてノンビリと休憩もままならない強風。
途中、大門沢下降点の鐘塔を見ながら、ボチボチと歩いて農鳥岳を目指すが意外と遠い。

農鳥岳からは、北岳と間ノ岳が望める。
今日は北岳小屋までの計画だったが、今からでは農鳥小屋までたどり着くのが精いっぱいだろう。

高気圧に覆われた状況で、この風。
明日の昼には前線の通過とともに今季最強クラスの寒気が入り込むと昨夜ラジオで報じていた。
間違いなく、寒気とともに風が強まる。

暴風、寒気、3000m。

この組み合わせに一考。
時間と装備は何とかなりそうだと思ったが、風と寒気は計画ばかりか、人をも狂わす。

過去の経験と見聞が脳裏に蘇る。

もう、いいのではないか。
全装背負ってここまで来た自分を敬ってもいい。
そう思った。

もしかしたら、私は日常の平穏な魅力に負けたのかもしれない。
今もって、その先の選択をしたのならどうなっただろうかと考える。
一番恐れたのは守るべきものの未来。

往路を戻って、大門沢下降点の鐘を鳴らす。
鎮魂の鐘は彼らに届いただろうか。

大門沢への下降はこれが登山道かと思うほどに急だ。
道しるべの標柱が一本見いだせただけであとは雪の下らしく判然としない。
尾根や疎林を繋ぎ、胸まで埋まることもしばしば。
幸い雪崩の予兆もないので沢筋を行くがそれでも腰まで埋まる。
下りだからいいものの、これを登るのは相当な覚悟だ。
これまた夏道度外視で強引に下る。

登りにつけたトレ-スに合流し、何とか目途が立つ。
あとは踏み後を忠実に戻るが、途中闇につかまりヘッデンを灯した。

大門沢小屋には先客が一名。
遅い到着とアテにならないトレ-スを刻んでしまったことを詫びる。
明日、2時4時で農鳥岳を目指すとのこと。
山に向かう姿勢に襟を正される気分であった。

夜は手早く食事のみ済ませ、20時過ぎには就寝。

「今、稜線にいたならどんな気分だったろう」

その先を選択した自分に、何処か憧れる自分。
疲労は他所に、なかなか寝付くことができなかった。

小屋の中が赤く染まる。
富士の脇から朝日が昇る。

ゴウゴウという風が小屋を揺らす。
時に舞う雪は、稜線から飛ばされてきたものか。
ここから望めぬ稜線方向は灰色の雲。

なんて穏やかな気分なんだろう。
これから山を下りたら、温泉入って、美味しいものを食べて。
そして、さらに明日も休日なんて。

そう強がってみる。

そして、これでよかったんだと自分に言い聞かせる。
今日の自分と未来の自分に言い聞かせる。

sak


西穂高岳西尾根

2020年01月26日 09時26分01秒 | 山行速報(雪山・アイス)

・ 期間

2020年1月1日~1月3日

・メンバー

sasa、S田

・ 交通手段

自家用車  新穂高温泉登山者用駐車場利用(冬季無料)

・ コースタイム

1月1日 

行動時間:8時間50分

7:10新穂高温泉(1090m)-8:50穂高平小屋-9:30西尾根取り付き-12:40 P1946-16:10 P2343  

1月2日 

行動時間:10時間40分

6:30 P2343-7:50第1岩峰-12:30第2岩峰-14:15西穂高岳(2908m)-15:40ピラミッドピーク-17:10西穂山荘(2367m)

1月3日 

行動時間:1時間25分

9:45西穂山荘(2367m)-11:10新穂高ロープウェイ西穂高口(2156m)

・ 記録

1月1日 

天気:晴れ昼前から雪

7:10新穂高温泉を出発。

天気が良く、遠くには真っ白な稜線が見えた。

右俣林道には雪が少なく、わかんをおいていく話が出たほどだった。

穂高平小屋からは、トレースが西尾根方向へ続いており、柵で囲まれた中を進んでいく。

尾根末端の取り付きには赤布があり、ここで有刺鉄線をくぐって柵の外へ出た。

尾根の取り付きから斜面を登っていくと、赤布が所々にある。

県警のヘリコプターがしばらく飛んでいた。稜線と高山市方面へ何度も往復しているが、誰か遭難したのかもしれない。

下山後ニュースを見たら、西穂高岳頂上の遺体を搬送していたみたいだ。

いつの間にか雪が降り始め、風も吹いてきた。

トレースはP1946辺りまで残っていたが、前日の降雪でだいぶ埋まっていた。

P1946を過ぎたあたりから雪が深くなり膝上ラッセルになったので、わかんに切り替える。

小ピークをいくつか超えP2343を過ぎたコル付近にテントを設営した。

夕食の内容はペミカンシチュー。

ペミカンは今回初めて作ってみたが、上手くできたようだ。

バターを使ってみたら、思っていたよりあっさりしていて食べやすいシチューになった。

 

1月2日 

天気:曇りのち風雪

朝3:30起床。

お茶を飲み、朝食を食べて目を覚ます。

アイゼンをつけて出発する。コルから先は急登になるが、前日にトレースを作ったおかげで楽に登れた。 

第1岩峰

基部を左へ回り込むが、雪深く体力を消耗するので、登れそうな所から木登りで登った。 

尾根上に出ると樹林帯から雪稜の登りになる。 

樹林帯を抜ければ、雪が締まって歩きやすくなることを期待したが、相変わらずラッセルが続く。 

表層の軽い雪をかき分け、膝で足場を固めながら登った。 

奥穂高方面の眺めが素晴らしい。

ジャンクションピークは、急斜面のトラバースで通過。コルの先には第2岩峰が見える。

第2岩峰右側にフィックスロープがあるので、ロープの必要性はあまり感じなかった。

その先は急な雪壁で、下から雪が吹きあがってくる。

風が強いためか、表面が固くなり歩きやすいところもあったが、長くは続かなかった。

頂上直下の岩峰は右へ回り込み急な雪壁を登った。ここにもフィックスロープがある。

最後の登りは山頂の標識を眺めつつ登っていく。

西穂高岳山頂の標柱には大きなエビのしっぽが付いていた。

スマホで数枚写真を撮ると寒さで電源が落ちてしまう。

西穂山荘まで常に強い風と雪にさらされて、指先や鼻が痛い。

独標からの下りは急であり、慎重に後ろ向きで下った。

西穂山荘に到着すると、暗くなるのに追われながらテントを設営。

この日のテン場はテントが10張くらい。

1日目、2日目も西穂山荘に着くまで他のパーティに会うことはなく、ロープも使用することはなかった。

夕食はペミカンカレー。

 

1月3日 

天気: 雪

朝食はペミカン豚汁。

バターベースのペミカンを使うと豚汁が豚汁ではない別の料理のようだ。

夜中降り続いた雪で埋もれたテント達。

西穂山荘を出発した時、丸山・独標方面へ向かう人の列が見えた。

ロープウェイ方面はトレースがしっかりしていて、楽だが案外長く感じる。

ロープウェイ駅に着くと観光客で賑わっていた。

今年も正月に北アルプスにいて、ルートを登り切ることができて満足だ。

 

補足:ペミカンレシピ

材料(例)

ラード(またはバター)100~200g、豚バラ肉 200g、じゃがいも 2個、玉ねぎ 1個

ニンジン 1/2本、ごぼう 10センチ、油揚げ 1/2枚、塩・こしょう 適量

作り方

各食材を炒めたり、茹でたり、レンジでチンする。

すべての食材をフライパンに入れてラード(またはバター)を投入する。

少し煮詰めてできあがり。

冷めたらジップロックに詰める。

包装は二重にする。

保存は冷蔵庫。

備考

玉ねぎ、じゃがいもは火を通し過ぎると溶けるので、大きめにする。

豚バラ肉の脂多めが寒い冬に合う。

主に夕食で使用し、他にアルファ化米等が必要になる。

ペミカン以外に白菜や長ネギを持っていくのもあり。

(S田)


中央アルプス・木曽駒ヶ岳

2019年03月26日 19時19分03秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2019/3/22 中央アルプス・木曽駒ヶ岳


すでに2612m。
千畳敷カ-ルと宝剣岳の素晴らしい景観が目前に広がります。

加えてこの好天。
気分が上がらないわけがないよね。

「イヤッホ-!!!!」と言いたいとこだけど、
「はぁぁ。」と、ただただこの景色に見惚れてしまいます。

そんな素晴らしい、ごほうび山旅。
たまにはいかがですか?

YUKAさんはお初の雪山アルプス。
11月に入会してからというもの、今年シ-ズンは単独含めて9度目の雪山。
モチベ-ションが違います。

千畳敷きからしっかりしたトレ-スを追っていく。
アイゼンはいらないかと思ったけど、この先雪崩の可能性もある不安定な場所での休憩はリスクでもあるので、最初からつけていく。

だんだん傾斜も立ってくるけど、トレ-スはバケツの如し。
ノ-トレ-スなら緊張する場所だけど、本日のうららかな日和もあってストックでも十分だった。

浄土乗越に出ると、風が強まる。
ここで、アウタ-を着る。
宝剣岳や空木岳への稜線が美しい。

ここからYUKAさん先行。

あれ、ちょっと。。。
YUKAさん、歩くの早い、、、ですっ。
sakは、、、ついていけそうもないです。(汗)

最後のひと登りで山頂。
木曽駒ヶ岳、100名山ゲットです。

ついでに、タヌキもゲットです。
ん?タヌキ?

山頂には、アルパインタヌキが彷徨してました。
うん、きっとこれは山神だ。そうにちがいない。

風も強いので、早々に山頂を後にする。
少し下ったあたりで、もぐもぐタイム。

真正面には南アルプスとうっすらと富士山。
YUKAさんは富士山に登った時がない、という。

「富士山は登った方がいいですよ。」

一般的に、山登りをする人は「富士山登ったときあるの?」と聞かれることが多くって、
「まだ登ってないんですよね」などと言おうものなら、「あぁ、そうなんだぁ」と少しガッカリしたような微妙な空気が後に残るので、

「富士山は登った方がいいですよ。」

素晴らしい景観の中、そんな下世話な話題に花が咲く。(いや、咲いてないか。。。)

浄土乗越からは、少し先に見える和合山がなかなか尖がっているので、立ち寄ってみる。
転んだら止まらないであろうトラバ-スを歩くのも良きスパイスだ。

千畳敷までの下りは急傾斜。
雪はグズグズで足元が不安定なので一歩一歩慎重に。


「あっ!!!」

不意に後方でYUKAさんの叫び声。
振り向くと、足を滑らせ滑落してきたのは、、、、
私達の後ろを歩いていた、おじさん。

sakもなんとか止めようと試みたけど、つかみ損ねてしまう。
「大丈夫、大丈夫」といいながら、頭が下で仰向けに滑り落ちていくおじさん。

「いや、大丈夫じゃないでしょ。」

というツッコミを入れる間もなく、10m位下で止まった。
頭が下なので起き上がれないため、足を谷側に引っ張ってどうにか起き上がる。
どうやら怪我はないみたい。
雪がゆるかったから良かったね。

そんな一幕もありつつ一投足で、ロ-プウェイ駅に到着。
心配していた雪崩もなく、まさに癒しの王道のような山行なのでした。

この感動をもっとたくさんの人と共有できたらいいね。
山好きな人とつながりたい!

ACC-J茨城は山が好きな人達を待っています。


sak