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おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

「エリック~オペラ座の怪人~」1/27千秋楽

2013年02月02日 01時54分20秒 | 観劇(ストレートプレイ/人形劇)

2013/01/27 @シアター・ジョウ
人形劇俳優たいらじょうの世界 初演ウィーク千秋楽
「エリック~オペラ座の怪人~」

【原作】ガストン・ルルー
【脚本・演出・美術・人形操演】たいらじょう
【主な登場人物】 エリック・ガルニエ(オペラ座の怪人)/クリスティーヌ・ダーエ/ラウル・ド・シャニー子爵/ダロガ(ペルシャ人)
ドビエンヌ(オペラ座の旧支配人)/ポリニー(オペラ座の旧支配人)/アルマン・モンシャルマン(オペラ座の新支配人)/カルロッタ(オペラ座のスター歌手)/マダム・ジリー(オペラ座の客席案内人)/ソレリ(プリマバレリーナ)/ジャンム(バレリーナ)/メグ・ジリー(バレリーナ)
ヴァレリウス(クリスティーヌの義母)
見世物小屋の人々…客引き係、占い師のディルダ、奇術師のアンドレ、ゴム男のダフル、音楽家のジェームス、腹話術師のリリアン
ペルシャの王様、召使い、街の女たち、仮面舞踏会に来た女性客  ほか


「私は幼いときから、仮面をつけて生きてきた・・・。」

この台詞には、何がしかドキッとさせられるものがあります。

これは生まれながらに容姿に強い・・・と言うにはあまりにも強烈なコンプレックスを抱き、それゆえに深い悲しみや葛藤、孤独、そして狂気にまで至る人間の、「人生の告白」ともいえる物語でした。

この前にも書きましたが、オペラ座の怪人は子供の頃からオペラ座に住み着いていたわけではなかったんですね。
エリックは生まれながらに骸骨のような醜い顔で生まれ、素顔を他人に見せられぬ、どこにも居場所のない子供でした。
この子は歌が上手で、歌を歌っている時だけが唯一心が慰められ、寂しさや悲しみを忘れられる時間でした。

ああ、仮面をつけているのはなんて息苦しい。
自分も素顔でいられたら、どれほどに楽なことか。
それに、自分にも居場所があれば・・・。

そして、エリックは見世物小屋に行き、自分も仲間に入れてほしいと頼みます。



エリックの寂しい姿には、思わず胸が痛みます。
抱きしめたい。

でも、エリック君、歌が上手なだけではなくて、実はとても賢くて器用な子供です。
もし彼の容姿が人並みであったなら、彼の人生は人並み以上に輝かしいものであったに違いありません。
けれども、その賢さが仇(あだ)となってしまいます。
見世物小屋の先輩達、奇術師や腹話術師たちから教わった芸をすぐに覚え、彼ら以上に上達してしまうことから、そのうちに疎まれてしまいます。
見世物小屋でも居場所がなくなったエリックは、建築学を極めます。
ペルシャの王様からお城の建築を頼まれたエリックは、隠し通路や秘密の小部屋を備えた立派なお城を設計したものの、そこでも王の内情を知りすぎたばかりに疎まれ、命までもを奪われそうになり、居場所を追われてしまいます。
そして、パリに辿り着いたのでした。

このエリックの幼少時代の話は原作(小説)の終盤のごくわずか、数ページにのみ語られている、とても短いエピソードなのですが、そこを平(たいら)さんは舞台の前半で丁寧に見せてくれました。
それはやはり、たいらさん自身が小学生の頃、はじめて「オペラ座の怪人」を観た時に、「キャラクターの生い立ちに多くの疑問と興味を抱いた」からで、その生い立ちを描かずにはいられなかったからなんでしょうね。
私も、前々からエリックがどのように大人になったのか興味があったので、この劇を観て改めて彼の孤独、寂しさが深く伝わったような気がしました。

そして、パリに辿り着いてからが、有名なパリの「オペラ座の怪人」の話となり、エリックは運命の女性、クリスティーヌと出会うわけです。
そのお話はミュージカルの「オペラ座の怪人」や「ファントム」とだいたい同じですが、父親であるキャリエールは登場しません。
「ファントム」ではエリックとキャリエールの関係が物語の謎でもあり、重要な鍵となっていて、それがまたラストの救いでもありましたが、どうやら原作にはないみたいなんですよね。
今、原作を買って少しずつページをめくっているんですが、どうもエリックの父親は原作に登場する様子がありません。
それと、あと、もちろんですが、宝塚版のように、キラキラの従者が十数人もいてエリックのそばにはべっていたりもしません(笑)
なので、エリックの人生はもっとずっと孤独で、たったひとりで密やかに幕を閉じることになります。

その顛末は、5月に再演するそうなので、ご興味のある方には是非とも実際に観てもらいたい!
あまり感想を書きすぎてネタバレしたくないのですが、ほぼ原作に近いのだそうです。

で、原作に近いといっても、た
いらさんはこの物語で二つの場面を彼独自の脚色として付け加えていました。
私はその場面がとても好きなので、ネタバレしたくないと言いつつ、やっぱり我慢できずにその一つを書いてしまいますので(笑)、ネタバレが嫌な方は、以下にご注意を。


その一つとは、クリスティーヌの義母・ウ゜ァレリウスの台詞。
エリックを「音楽の天使」と信じていたクリスティーヌは、彼にラウルのことを話してしまい、ラウルに激しく嫉妬したエリックは言葉を失ってしまいます。
その時、どうして天使が黙ってしまったのかと、不安に思うクリスティーヌに、ヴァレリウスが言うのですね、
「天使さんだって、きっと焼きもちを焼くのよ。天使さんの心を惑わしては可哀想だわ」と。
天使にも心はあるのだと。

これは、裏を返せば、骸骨のような醜い怪物にも心はある。心あるものを惑わしては可哀想、とも私には聞こえます。
なんだか、そのやさしさには、不思議とこの私自身も慰められているような気がするのはどういうことか・・・。

どうもね、天使はともかくとして、どういうわけだか、私は酷く醜い者、化け物、異形の者、人外のものなどには、つい心を寄せてしまい、同化したがる癖があるんですよね。
なので、このヴァレリウスのシーンにはウルウルとしました。
そして、その義母の言葉を素直に受け止めたクリスティーヌは、最後まで、彼にも心があることを忘れない、やさしい女性でした。
それは、彼の辛い人生の、唯一の
救いだったと思います。

って、ああ、なんか書き足りない(笑)
でも、私って、今年は「気楽に、さらっと書く」とか言ってませんでしたっけ?(笑)
あ、ちょっと違うか、「気軽に、短めに書く」って言ったんだった。

う~ん、こんな舞台を観ておいて、そんなのって難しい

だけど、これから先、この「エリック」が全国各地を周ることを思うと、なるべくなら沢山の人にこの舞台から受ける「初めての感動」を体験してもらいたいとも思うので、これ以上はネタバレせずに、続きは再演までに残しておくことにいたします。
なにせ、この初演ウィークは、たいらさんの持つ小さな劇場「シアタージョー」で、たったの五日間でしたから、初演に立ち会った観客は延べにしても200人は至らなかったと思うんですよね。
キャパが小さくて、一公演で35人位しから観られませんから。
だから、これからなんだと思います。

人形劇俳優 たいらじょうの「エリック」は、この先、もっと練り上げられて、もっと感動的に、もっと沢山の人々に愛されるはずです。

と、勝手に断言しちゃう(笑)

なので、感想を書く機会もまた何度かあるでしょうから、書くことを残しておかなくちゃね(笑)

まあだけど、そのシアタージョーは狭いだけに、その空間で観ると凄い迫力! そして濃密でした!
なんといっても、人形の表情が胸に迫ります。

もちろん、人形ですから表情は動きません。
この人形劇は、観客がそれぞれの心により表情をつけて完成されます。
エリックの顔を見るということは、エリックの心を見て、たいらじょうさんの心を見、、そして、自分自身の心を見つめることなのだと思います。

そんなわけで・・・

終演後のお人形撮影会で撮った、↓この一枚の写真、大人のエリック君なんですが。



この、どアップ。会場はもっと明るかったのですが、わざと明るさを絞って写したら、かなり素敵で、たいらさんにお見せしたら、たいらさんは「ああ、イケメン!!」と喜んでくださいました。
骸骨のような醜い顔・・・ではなくて、イケメン・・・ええ、ほんとうにねっ!!
私は、このエリック君が、なんだか嬉しそうに微笑んで見えるのですが、いかがでしょう?
舞台中は苦しそうだったり、悲しそうだったエリック君ですが、この時ばかりは表情が明るく見えました。
きっと、この時、エリック君も、たいらじょうさんも、そして私も、みんなが嬉しかったからなんでしょうね。


そうそう、話が長くなったついでの余談ですが。
私、この日は初めて、初対面の方から「おおるりさんですか?」と聞かれました!
実はいつもは別のニックネームで呼ばれてますので、なんかすごく照れたりして(笑)
でもって、「たしか、あっきーさんがお好きなんですよね?」なんて、改めてそう言われてみると、さらに気恥ずかしい~!
シアター・ジョーに来て、「次はモーツァルトで会いましょう!」なんて言葉を言う事になるとは思いもしませんでしたが、これもまた、とても嬉しかったです!


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2 コメント

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Unknown (じゅんぺい)
2013-02-03 00:38:22
おおるりさんが写された「エリック」・・・なんて穏やかでハンサムなイケメンくんなのでしょう。

ミュージカルでしか「オペラ座の怪人」は見たことがありませんので
幼少時代からのお話を知ることが出来て
さらに たいらさんの「オペラ座の怪人」に興味がわきました。

>観客がそれぞれの心により表情をつけて完成されます。
エリックの顔を見るということは、エリックの心を見て、たいらじょうさんの心を見、、そして、自分自身の心を見つめることなのだと思います。

私もエリックを自分の目で見、感じたいと思います。
全国各地での公演お知らせを楽しみにしています。
返信する
Unknown (おおるり)
2013-02-03 22:23:53
ミュージカルとはテイストが異なりますが、この「オペラ座の怪人」には他に無い感動がありますよ~!

この人形劇は大人のための舞台です。
大人だからこそ作れる客席の静寂と緊張感、大人だからこそ見える表情があるんです。

じゅんぺいさんにもぜひ見ていただきたいです。
全国公演の予定が決まったらお知らせしますね!
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