Ruby の会

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茨木のり子「笑う能力」~日色ともゑさん講演より

2020-10-12 | 映画・テレビ・演劇・芸能
 高岡演劇鑑賞会例会で、劇団民藝公演「送り火」を観た。その時いただいた資料の中に、日色ともゑさんが7月に砺波市文化会館で記念講演をされた時の内容が掲載されていた。劇団民藝創設時の話から、宇野重吉さんとの関わり、劇団員の活動、コロナウイルスに打ち勝って公演を続ける熱意が詳しく紹介されている。

 最後に、「皆さんに笑ってもらいたいので…」とことわって、茨木のり子さんの「笑う能力」と言う詩を紹介しておられる。茨木のり子さんは私も好きな詩人。先日、死後に発見された「歳月」と言う詩集~亡きご主人のことだけを書き綴った詩がいっぱい詰まっている~を読んだばかりだ。

 日色さんはどんな風に朗読されたのだろうか。文字を読んだだけでもおかしいが、耳で聞くともっと可笑しさがこみ上げてきそうだ。
 👇 若き日の茨木のり子さん。「倚りかからず」を書かれた頃だろうか?


 笑う能力  茨木のり子  「倚(よ)りかからず」 筑摩書房 

 「先生 お元気ですか
 我が家の姉もそろそろ色づいてまいりました」
 他家の姉が色づいたとて知ったことか
 手紙を受け取った教授は
 柿の書き間違いと気づくまで何秒くらいかかったか
 
 「次の会にはぜひお越しください
 枯れ木も山の賑わいですから」
 おっとっと それは老人の謙譲語で
 若者が年上のひとを誘う言葉ではない
 
 着飾った夫人たちの集うレストランの一角
 ウェイターがうやうやしくデザートの説明
 「洋梨のババロワでございます」
 「なに 洋梨のババア?」
 
 若い娘がだるそうに喋っていた
 あたしねぇ ポエムをひとつ作って
 彼に贈ったの 虫っていう題
 「あたし 蚤かダニになりたいの
 そうすれば二十四時間あなたにくっついていられる」
 はちゃめちゃな幅の広さよ ポエムとは
 
 言葉の脱臼 骨折 捻挫のさま
 いとをかしくて
 深夜 ひとり声をたてて笑えば
 われながら鬼気(きき)迫るものあり
 ひやりとするのだが そんな時
 もう一人の私が耳もとで囁く
 「よろしい
 お前にはまだ笑う能力が残っている
 乏しい能力のひとつとして
 いまわのきわまで保つように」
 はィ 出来ますれば
 
 山笑う
 という日本語もいい
 春の微笑を通りすぎ
 山よ 新緑どよもして
 大いに笑え!
 
 気がつけば いつのまにか
 我が膝までが笑うようなっていた
    ※どよもす(響もす):声や音をひびかせる。鳴りひびかせる。 

 先日のお茶教室で、話の内容は何だったか忘れたが何度も大口を開けて笑った。ああ、私にもまだ「笑う能力」が残っていると安心した。

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2 コメント

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Unknown (千葉Mats u)
2020-10-12 18:01:25
本当に笑えるね。今読んでみてこんな詩人が居た事初めて知りました、楽しくなってきましたやはり貴女はいくつになっても大丈夫です。田舎は友人と一緒におしゃべりできていいね。此の辺りはcoronaの事ばかり考えて気になりヒヤヒヤしながら暮らす毎日です。私はただの風邪だと思っているのですが他人にうつす可能性があるので困るんですよ。
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Unknown (清姫)
2020-10-14 19:21:44
千葉matsuさん
笑えるでしょう?
私、安心しましたよ。この詩を読んでも、テレビを見ていておかしい事があっても、一人で笑いますから。時には声を立てて笑うこともある…。
たしかに田舎では誰とでも話しやすい。千葉でも、散歩していて知らない人と話すことはありませんか?
そう言えば、息子が勤続25年の記念旅行券を会社からもらい、今年はコロナで無理だと諦めていたそうです。もうすぐ誕生日で期限が切れる、今旅行も解禁になり「急だけど…」と私にも誘いがありましたよ。
予定は詰まっているし、体力的にも無理なので、彼は一人旅をする予定です。でも、それも楽しいかと…。
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