Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

新春能狂言~「三笑」

2012-01-07 | 能楽

 お正月は、毎日「新春特別番組」をやっていたが、箱根駅伝以外はほとんど見なかった。日本の伝統芸能では、歌舞伎や落語はいわゆるゴールデンタイムに(Eテレだったかも)組まれていた。ウイーンフィルのニューイヤーコンサートも、然りだ。
 だが、能狂言は、なんと朝6時半からの番組だ。ひどい差別だと思うのは私だけ?やはり視聴率の問題かしら。ま、録画すればいいか、と3日分セットした。番組は、↓のとおりです。

 元日は、観世流能「天鼓」
 2日は、和泉流狂言「見物左衛門」、大蔵流狂言「素襖落」
 3日は、宝生流能「三笑」、仕舞「岩船」、「羽衣」
 

 この中からいくつか紹介します。ようこ姫さんの「紅白」の紹介を見て、録画なら静止画を撮りやすい、と思い、粘ってみました。テレビは字幕が出て分かりやすい。昨年正月、国立能楽堂へ行ったら前の座席の背もたれに画面があり、字幕が出た。以前、熱海のMOA美術館で偶然に能「頼政」を観たが、そこでは謡本の縮小版のようなパンフをもらった。
 多くの人に見てもらうには、やはり言葉がわかるような工夫をしなければならないのではないかと、つくづく思った。

 まず、和泉流狂言。野村萬師の「見物左衛門」。これは、一人で演ずる珍しい狂言。萬師が得意とされる出し物。表情や腰をかがめ歩く足さばきが何とも言えない。後見は息子さんの万蔵さん。演じられる時と全く違う表情である。
     

          袴の前垂れに「萬」の文字が。
     

 次に、宝生流能「三笑」。「虎渓三笑」と言う中国の伝説にちなんだものとか。画題として多くの画家が取り上げているそうだ。(トップ写真もテレビ画面から

 晋の慧遠(えおん)法師が盧山の東林寺で行を積んでいて、虎渓(渓谷の名)を渡るまいと誓ったが、訪ねてきた陸修静・陶淵明を送り、話に夢中になって虎渓をを渡ってしまったのに気づき、三人ともに大いに笑ったという話。

        作り物の「臺塚」が舞台の真中に置かれている。
     

      アイ(官人)の野村扇丞師の前口上(と言うのかどうか?)
     

      左手から、ツレと子方が登場し、後見が作り物の幕を外す。
     

       臺塚から、シテ(慧遠法師)近藤乾之助師が登場する。
     

 修行中の慧遠法師の所へ、陶淵明と陸修静が訪ねて来る。

          橋掛りの、ツレ(陶淵明)朝倉俊樹師。
     

           同じくツレ(陸修静)金井雄資師。
     

 3人は、酒を酌み交わし、語り合い、楽しいひとときを過ごす。子方の舞人が3人の前で舞を舞う。可愛らしい顔で女の子に見えたが、名前を見ると男の子だ。

         子方の「中の舞」はほんとに可愛らしい。
     

     

 ここで太鼓方(金春国数師)に注目を。左手の構えの型が少し違う。
     

            慧遠法師の「樂」の舞。
     

 酔いに興じて、慧遠法師は虎渓の橋を渡ってしまう。♪ 苔むす橋をよろめき給へば淵陸左右に。 ♪

           よろめく慧遠法師を支える二人 
     

 ♪ 介錯し給ひて虎渓を遥かに出で給へば ♪
     

 ♪ 一度にどっと手を打ち笑って。三笑の昔と。なりにけり ♪ 
 
↓は、♪手を打ち笑って♪の場面だが、誰も顔は笑っていないのが、能なのだと納得(?)しました。最後に、3人で大笑いするのかと思ったのに。
     

 「あることに熱中しすぎて、外のことすべてを忘れること」の意味でよく使われる言葉だそうだ。シテもツレも面はつけず、ワキはいない。いろいろな能の形があるようだ。

 次に、若き宗家、宝生和英師の仕舞「岩船」。きびきびした切れのいい舞はいつ見てもほれぼれします。地謡には、佐野由於師の顔も見えます。
     

        

 今回は、映像もたっぷりで楽しんでいただけましたでしょうか。