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企画展「成田亨 美術/特撮/怪獣- ウルトラマン創造の原点」(再掲)

2022年12月17日 17時51分22秒 | 出会いと経験



「ウルトラマン」シリーズなどで個性的なヒーローや怪獣、メカなどをデザインした成田亨(なりたとおる) の初期から晩年までの創作を網羅した企画展「成田亨 美術/特撮/怪獣- ウルトラマン創造の原点」を先月、観に行った。成田亨はウルトラマンのデザイナー。本業は彫刻家。

ちらしの紹介文を転載し概要の説明としたい。
「成田亨(なりたとおる 1929~2002 青森県出身)という芸術家をご存じですか。ウルトラ怪獣のデザイン画を描いた人、といった方が分かりやすいかもしれません。彼は武蔵野美術大学で絵画、彫刻を学んだ気鋭の彫刻家でした。同校在学中にアルバイトで映画「ゴジラ」(1954年)の制作現場を手伝ったことをきっかけに、彫刻制作の傍ら特撮映画の世界にも身を置くようになり、1966 年から68年にかけて制作・放映された特撮テレビ番組「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」では、主人公の超人、宇宙人、怪獣、そしてメカニックやセット等のデザインを一手に引き受けます。「ガラモン」、「ウルトラマン」、「バルタン星人」などのキャラクターが誕生して半世紀が経過しようとしていますが、それらは世代を超えて今も親しまれています。それは、彼が芸術家として吸収した同時代美術や西洋モダンアートにより培った造形センスを惜しみなく怪獣デザインにつぎ込んだからに他なりません。

しかし、そうした特撮関連の仕事に注力する一方で、成田の絵画や彫刻への情熱はむしろ高まります。多数の油彩画、水彩画を描きながら、彼は古今東西のモンスターへの関心を深め、モンスター関係の作品も数多く制作しました。それは1990年制作の巨大彫刻「鬼モニュメント」(京都府福知山市)に成就しました。
成田亨と言えば、これまで「ウルトラ」の仕事ばかりに注目が行きがちでしたが、本展では、成田亨という1人の芸術家が歩んだ軌跡を多彩な内容でお届けします。青森県立美術館所蔵のウルトラ関係デザイン原画187点をはじめ、「ヒューマン」、「バンキッド」など特撮関連のデザイン原画や未公開の怪獣デザイン原画、手元に遺した絵画、彫刻、そして本展のために再現された特撮セットも加えた総点数700点により、非凡なる才能を秘めていた奇跡の芸術家の知られざる全貌に迫ります。

展示作品数が多いのでどうか時間に余裕を持ってお越しください!」



回顧展で紹介されていた本や紹介文の一部を3テーマ掲載します。

デザイナーについて
デザイナーというのは忙しくなれば、モノを考える事もモノを探すヒマもありません。ただ目先の処理で一杯になってしまうのです。だからヒマな時に自分の引き出しを一杯にしておくのです。ヒマな時というのは必ずお金がありません。無くても無い中で何とか苦面(ママ)して引き出しをふくらませるのです。ヒマな時に引き出しに何をしまったかが、それ以後のデザイナーの価値を決定します。(続く)



(続き)
私は群れを作っての飲み歩きとか、麻雀とか、殆どしません。ヒマなときは引き出しを開けて、何時役に立つか判らないこういう資料を開けて、一人でニタニタしているのです。暗いのです。(以上)

これはデザイナーというより、仕事師として大切なことだと思う。アイデアの引き出しは多い方がよい。その引き出しをつくるのは普段の努力しかない。
芸術家であり、そして哲学の人でもある成田了氏。学ぶべき点が多い。



成田亨の人間観
私は、人類は進歩しないものだと思っています。進歩しないで変化してゆくものだと思っています。職を求める為に働き、恋に喜び、失恋に泣き、友と語り、嫌な奴と働き乍ら、一人一人は成長してゆきますが、人間そのものはメソポタミアの文明開化以来同じことをくり返しています。(続く)



(続き)
 しかし科学は進歩します。日進月歩、昨日のものは無価値です。科学技術の進歩は生活を変えます。革新的な技術の発達の中で、人間は人間全体の発展進歩だと錯覚して、ボケてゆくのです。営々として生きる本来の人間の姿を忘れてゆくのです。



(会場入り口付近の様子。受付隣のモニュメントが印象的)

怪獣のデザインについて)私は人間は進歩するものだと思っていません。人間は進歩はしないで、変容してゆくのだと思っています。
変容してゆく人間の本質って何だろうか? 私には判りませんが、人間の本質とか人間と自然が滅ぼした動物のことなどを考えながら、私は怪獣デザインをします。

ウルトラ怪獣のデザインをするに当たって、3つの規範を定めました。

1 怪獣は怪獣であって妖怪(お化け)ではない。だから首が2つとか、手足が何本にもなるお化けは作らない。
2 地球上のある動物が、ただ巨大化したという発想はやめる。
3 身体がこわれたようなデザインをしない。脳がはみ出たり、内臓むき出しだったり、ダラダラ血を流すことをしない。

「どんな困難に遭っても健全な子供番組を作るためには、この3原則だけは守ろうと思いました」と記載されている。

ウルトラマンの看板に見せられて入った美術館。得るものが多かった回顧展である。次回は今秋、青森県立美術館で公開予定とのこと。



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