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『十二国記 風の万里 黎明の空 上・下巻』感想

2004-09-17 18:01:50 | 小説 感想
そろそろ景王陽子の国興しを読みたいと思っていたところにタイムリーに、しかも上・下巻構成で読み応え十分でした。
ここで私ごときが今更言うまでもないのですが傑作ですね。

■本作は景王陽子を含めて
3人のヒロインが登場するのですが、3人とも揃って中盤まで本当にネガティブなんですよ。
この3人が各々、様々な人の手を借りて、今まで見えていなかった世界を知る、変化する、成長するプロセスが本当に秀逸でした。
特に終盤、それまで別々だった3人のラインが交錯するポイントは本当に熱い。

■3人のヒロインには
それぞれテーマがあるのですが、
鈴 :「他者を理解するとは?」
祥瓊:「果たすべき責任とは?」
陽子:「国とは?本当に大事なことは?」
それぞれ違うテーマを掲げながら1つの答えに帰結していく手法はもう「凄い」の一言に尽きます。

■「言葉が通じるからと言って、互いの考えていることが分かるというものではないのです」
言葉が通じないことを理由に自分の心しか見ていない鈴に采王黄故が投げかけるこの言葉、まさに名言です。
鈴が景王への憧れだけの気持ちから、清秀を介して自分を見つめ直すプロセスだけでも十分熱いのに、ある事故をきっかけに憧れが憎しみに変わり、そして最後の最後に采王黄故の言葉の意味に辿り着くプロセスは感涙ものですよ。

■「責任を果たさず放棄した者を許すことは、きちんと責任を果たしている人に対する侮辱なの」
こちらは王の娘であった祥瓊に供王珠晶が投げかける(投げつける)言葉ですが、これに対して楽俊を介して殺意から理解へ転じ、こちらも最後の最後に珠晶の言葉に辿り着くプロセスが熱い。

■「誰もが平伏して叩頭するけれど、それは実は嘲笑を隠すためかもしれない」
陽子がこの想いに辿り着き、心から力が欲しいと切望するあたりは本当にぐっときますね。
この想いが王として陽子には一番必要だったと思うのですよ。

この想いと、鈴、祥瓊から陽子に託される

「あなたはこんなにも人々の希望の全てなのだから」

という想いが合わさって、民衆を解放していく様は本当に爽快の一言に尽きると思います。
あー、この文章書いてるだけで思い出して涙腺が・・・。

■名言の嵐ですが、個人的には
鈴が陽子に対して言うこの台詞が心に響きました。
「(どんな人だか知らないで)みんな勝手に期待して、陽子自身のことなんか考えてもみないで失望していくの。」

この一文を読んだ時、地に足がついたような感じになりました。
ネット社会って特にこの傾向が強いんではないかな。
ネット社会に限らず現実社会でもそんなもんだと思うんですよ。

だから、そういうもの・そのくらいでいいもの、だと思った時、他人がどうとか自分がどんな風に思われているとか、そんなに心騒がせることでもないんだなと。
ゆっくり構えておけばいいんだ。
理解しようとし合う気持ちがあって、初めてコミュニケーションは成り立つわけで、勝手な思い込みや勝手な期待をしても空回りするし、逆もしかりなんですよね。

この一言が今回の一番の名言かな、なんて個人的には思ってるんです。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ただいま (ルーン)
2004-09-29 22:49:14
下巻を読書中。

心にジ~ンとくるセリフが多いですね。

一言一言かみしめながら読んでいます。

トラックバックありがとうございました。
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おかえりなさい (燕(管理人))
2004-09-30 11:26:56
ルーンさん、おかえりなさい。

戻ってこられて嬉しいです(毎日戻ってきたかどうかチェックしてましたよ)。



下巻は上巻でネガティブにタメた伏線をどんどん消化していきますし、最後は壮快ですよ。

お楽しみに。
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