台風一過、涼風が吹き通ればよかったのだが、逆に南方の熱風が吹き寄せられてしまった。
愛知県の現代美術展〈あいちトリエンナーレ〉の〈表現の不自由展〉に慰安婦問題を象徴する少女の像が展示されていると一部世間が騒ぎだして、開始3日にして展示中止になって以来2週間。行政が介入する面倒さや、市長と知事との不仲なこと、爆破予告の男が逮捕されたりと、いろいろあった。
今日はお盆明けでというのでもないのだろうが、事件の経緯や公金を使った芸術展示の有り方などを検証する特別委員会が初会議を開いたという。今後、いつまでに答申をするのかはニュースには触れられていないが、6人の有識者たちの結論がどういうものになるのか興味をもって待ってみたい。
落としどころを探し回る日本的な会合よりも、昨日の夕刊に出た「少女像購入展示へ」というスペイン実業家の極めて迅速な判断の方がすっきりしていて面白いと思う。
記事によると、噂の「少女像」の購入者は、ジャーナリスト出身で、映像関連企業を経営するタチョ・ベネット氏。彼は世界各地で政治や倫理などさまざまな理由から展示ができなくなった作品を収集して、来年、バルセロナで自らが開館させる計画の〈自由美術館〉で公開する予定だが、この少女像もそのひとつになるのだという。
反体制芸術だと北京に咎められて逃げたトイツも中国と同じだといって駄々をこねる大物アーティストのアイ・ウェイウェイの作品や、カタルーニャ独立派指導者がテーマになった展示禁止作品など六十点が目下のベネット・コレクションだが、〈あいちトリエンナーレ〉のニュースを聞いて、即、韓国人の彫刻家に連絡、像の購入を決めたというから、恨多い少女像も、魅力的なコレクションに加わると踏んだのだろう。
「芸術作品が非難されただけでなく、非難を受けて展示を中止したことは二重にナンセンスだ」とそっけないが至極真っ当な意見を述べている。みんな悪いと言われたトリエンナーレ事務局や特別委員会は、そんな彼を招いて、寸鉄意見を大いに拝聴すべきだろう。
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