5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

パッケージ型から配信型へ

2011-06-29 22:56:44 | PC・インターネット
IPOD「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」(11年6月21日)で、ドゥワンゴ(ニコニコ動画)の川上量生が語る「クラウド化とコンテンツ・ビジネス」の現状と近未来図をとても面白く聴いた。「クラウド」という言葉が語られるようになってまだ数年といったところだろうが、ITの環境は此処へ来てまたおおきく変化を始めているようだ。以下、備忘用に川上の話を書き起こしておきたい。

川上曰く、

『ネットは次の時代と云われていながら、皆(コンテンツ業界)がネットをやらない理由は「儲からない」から。なぜ儲からないかといえば、それは、違法コピーが存在するからなのだ。

一昔前のパッケージ商品なら、各種のサービスやおまけ付き、他人がさわっていない新品を購入することで充分に所有欲を満たすことが出来た。金を払った人の方がトクだった時代だ。

しかし、デジタルコンテンツの場合、金を払ってダウンロードすると、コピープロテクトがかかっていて他の器機へのコピーは不可。場合によっては、再度買い直さないといけない。しかも品揃えが少ない。ストリーミングサービスは見終わったらおしまい。二度見はできない、スキップも駄目。回線が悪ければ落ちることもあったりと、金を払うと悪いものが手に入る状態なのだ。

コンテンツ所有者は、昔も今も、画質や使い勝手の良いモノを欲しがるもの。違法コピーの場合は、品揃えが豊富でプロテクトがかかっていない良品というわけだ。となれば、違法コピーをしてはばからない人が真のコンテンツファンということも云えるわけだ。

利用者のコンテンツ所有欲を「デジタル」で満たす方法を探るのがこれからの「配信ビジネス」の課題だ。これからは「データ=コンテンツ」というフォーマットを変えるべき時なのだ。データはコピーできても、サービスとして商品としてコピーできないものを考える必要があり、「サーバー型のコンテンツフォーマットの有り様」はそこにあるというのが川上の考え方。

コンテンツ業者として販売するのは、サーバー上のコンテンツのデータコピーではなく、その「利用権」である。そう考え直さない限り、デジタル時代のコンテンツビジネスは成り立たないと承知すべきだ。

これまでのITビジネスで、サーバー型コンテンツビジネス以外の成功例はない。たとえば、サーバー上の世界で遊ぶMMO-RPGは、サービスに金を払わぬ中華圏で唯一成功しているビジネスだし、ヤフーのアバターなどもあわせて、大きく成長したネットビジネスはすべてがサーバー型である。

データがコンテンツ型だというビジネスは成功していないし、たとえデータがコンテンツ型だったとしてもサーバー型にシフトが始まっている。 キンドルブックストアなら、自分が持っているどのキンドルにもコンテンツデータを読み込めるから、買った本なら何処でも読めるわけだし、Ituneストアでも、DLはPCへの1回限りだが、これをサーバーとして複数器が利用可能になっているなど、いずれも、サーバー型に移行しないとコンテンツビジネスは成功しないことを理解した対応になっているのだ。

このままで手をこまねいているだけなら、コンテンツ・プラットフォームは アマゾンとアップルが構築して、彼らが牛耳って終わるだろう。すれば、価格決定権が失われ、プロモーションすら許可がないと出来ないし、マーケティングも出来ないといった未来が待っている。

日本のコンテンツビジネスが、アップルやアマゾンの奴隷になる愚を避けるためには、消費者との直接の接点をどうもてるかが勝負のポイントになるだろう。』 というのである。

ここで、映画好きの知り合いを思い出した。50代前半の地方公務員の課長氏だが、レンタルDVDは直接店に出向くのではなくPCでオンライン注文するのだと言っていた。DVDのモノそれ自体が宅急便で届くサービスだから川上の云っているサーバー型ではないのだが、彼の意識の中には、「高価なDVDを購入して所有するよりも、見残した多くの名画を出来るだけ沢山見れば満足だ」という現実的な考え方があるところ。

映画プロデューサーとしての鈴木敏夫は、自分の商品に思い入れが大きいのは当然のことだ。川上の意見を聞きながらも、依然としてモノ(DVDパッケージ)に信を置きたいのだと語っている。しかし、「所有よりもシェアやレンタル」という意識が、中年公務員氏のようなオヤジ仲間にも広がりつつあるとすれば、全体の流れは川上の語る「パッケージメディアから配信型へ」に変容したと言って間違いなかろう。

「ジブリ動画」にもイメージチェンジの時が来た。ドゥワンゴとジョイントで進めるクラウドサービス、「ラピュタ」と名づけるのはどうだろうか。






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